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出発


 翌朝、まだ日も昇らない薄暗い時間にイザベル一行は出発しようとしていた。


「イザベル、おはよう」

「ーーーっっ!!

 ルイス様!?おはようございます」


 まだいるはずがないルイスの登場にイザベルは気まずそうに、ユナイは舌打ちをした。


「イザベルのことになると、勘が働くのは相変わらずか……」

「当たり前だろ?俺とイザベルは前世から結ばれているからな」



 昨日、ユナイの提案でルイスは置いていくことへと決まった。一緒に行く約束を半ば強引にさせられていたものの、イザベルの行動を皇族に謝らせるわけにも、皇族からの圧力で許させるわけにもいかない。

 ただでさえ、マッカート公爵家という圧倒的な地位のご令嬢が謝りに行くというのに、そこに皇族まで加われば、来られた側も野心家でさえなければ、寿命が縮む思いだろう。



「……殿下、妄想も大概にして頂きたい」

「事実だ」


 バチバチと火花が散りそうな二人に、イザベルとミーアは目を白黒させた。そして、


「私達は後ろの馬車ですので、失礼致します」


とミーアは小声で言うとイザベルとこの場を逃亡しようとした。だが、爽やかな笑顔なのによくみると瞳が笑っていないルイスに声をかけられ止められる。


「イザベルは俺と乗る」


 そう言いながら、一瞬のうちにイザベルをエスコートして、ミーアの側から自身の方へとイザベルを引き寄せた。


「えっ!えっ!!えぇっ!?」


 (なぜじゃあ!!何故われの意思とは関係なく足が動くのじゃあ!?)


 何が何だか分からないうちにイザベルは馬車に乗せられ、何故かルイスの膝の上にいた。



 そして、ルイスは内側から扉の鍵をかける。こうしてイザベルとルイスの密室は完成した。


「イザベル、やっと二人きりになれた」


 外からユナイの叫び声と馬車の扉を激しく叩く音が聞こえる。だが、イザベルは目を開けたまま意識を手放したため、その音は届かない。


 それを良いことに、馬車の窓を上から少し下げて隙間を作ったルイスは、よく通るけれど落ち着いた声色でユナイへと話しかける。


「婚約者同士の邪魔をするな。見苦しい。

 最初の目的地まで一時間ほどだ。少しは二人の旅を楽しんでもバチは当たらないだろ」


 言いたいことだけ言って閉められた窓をユナイは強く拳を叩きつけたが、その窓が開けられることはない。


「くそっ!!やられた!!」


 ルイスが乗った馬車はマッカート家が用意したものではなく、ルイスが乗ってきたものだ。それも、内鍵のみで外からは開けられないもののため、ユナイには()(すべ)もない。


 それでも諦められずに扉の前でうろうろするユナイに、ミーアは苦笑しながらも声をかける。



「どのみち、私たちには開けられないのですから、早く目的地に向かいましょう」


 (イザベル様を泣かすようなことを殿下がするわけもないし、そんなに心配要らないと思うけどなぁ)


 そう心のなかで呟いたミーアはユナイを座らせると御者席へと向かう。そして、馬の手綱を持って、馬車を走らせ始めたのであった。







※ミーアは平民出身で父親が乗り合い馬車の御者を仕事にしており、幼い頃から触れあった馬の世話や乗馬、御者としての馬の走らせ方に長けています。

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