リリアンヌの恋②
「ローゼン様って、恋人や婚約者はいるんですか?」
共に過ごす時間は増えても、今まで一度も聞かれたことなどなかった問いに、ローゼンは探るようにリリアンヌを見た。
「いや、そういう方はいない」
「じゃあ、好きな人は?」
直球勝負のリリアンヌの言葉にローゼンは目を瞬かせ、耳を赤く染めた。
「お慕いしている方はいる」
(それって、私の可能性もゼロじゃないよね?だって、耳が赤くなったり、今だって手を繋いでるもの。
いい、リリアンヌ。女は度胸よ。前世では逆プロポーズだってあったくらいだもん。自分の幸せは自分で掴むのよ!!)
「ローゼン様!!」
「なんだ?」
「ローゼン様!!」
「どうした?」
「ローゼン様ぁ!!」
「何か言いにくいことか、真っ赤だし様子が変だぞ?やはり早く帰った方がーーー」
気合いは十分なのに、名前を呼ぶだけで息が苦しい。けれど、これを逃したら言えなくなることをリリアンヌは知っていた。
なので、手を引いたローゼンに対して、首を振る。行きたくないのだと態度で示す。
そして、自身を落ち着かせるために大きく息を吸い、意識的に長くゆっくりと吐き出した。
「ローゼン様」
少し震えてしまったが、落ち着いた声が出せたことにリリアンヌは安堵の息をもらす。
しっかりとローゼンの瞳を見て、少しでも自分の気持ちが伝わるように願いを込めて。
「私、ローゼン様のことが好きなんです」
ハッキリと伝えたはずなのに、ローゼンからは返答も反応もない。
ローゼンは、リリアンヌを見たまま固まっていた。そのまま数分が経ち、さすがにおかしいとリリアンヌは大きく息を吸った。
「ローゼン様のことを、お慕いしてます。恋人にしてくれませんか?」
(あれ……ね。好きだけだったのが悪かったんだわ。どうなりたいのか、希望も言わないと駄目よね)
リリアンヌは反省も含めて言い直したにも関わらず、ローゼンは未だに動かない。
(これは、どういう反応だと思えばいいの?)
こんな反応をされたのは前世を含めても初めてで、今世に至っては初告白である。待つべきか否か……リリアンヌの答えは『否』だ。
「ダメって言わなきゃ抱きついちゃいますからね!!もう、ぎゅうぎゅうに抱きついちゃいますよー」
と宣言すると、止める間もなく抱き付いた。
(断られるかもしれないなら、思い出だけでももらっとこう!!
はぁ、好みじゃないって思ってたけど、今はローゼンだけだよー。
何でこんなにハマっちゃったんだか。もう、自分でビックリするくらい好き!!大好き!!)
ぎゅうぎゅうと抱き付いて、すりすりして、街中なのも気にせずにリリアンヌは堪能した。最後のチャンスかもしれないから。
そんなリリアンヌの背中に、おずおずと遠慮がちにローゼンは手を回した。
「俺で、いいのか?」
「ローゼン様がいいんです。ローゼン様じゃなきゃ嫌なんです」
「俺は、貴女よりも殿下を優先しなくてはならない」
「はい」
「有事の際は、貴女の傍にいることもできない」
「はい」
「それでも、俺を選んでくれるのか?」
(そんなこと言わなければいいのに。バカ真面目で、何て誠実なんだろう)
「ローゼン様。困ったことに、あなたでなければ、あなた以外の人ではダメなんですよ」
「そうか、俺でなければ……」
ローゼンはリリアンヌの頬を優しく撫で、微笑んだ。
「俺も、貴女を愛している。どうか、俺と婚約してくれ」
「…………えっ!?」
今度はリリアンヌが固まる番だった。
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