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イザベル、射止める




 (そこは、即答せねばいかんじゃろ……)


 だが、庇われた3人はリリアンヌをキラキラとした目で見詰めている。


 (まぁ、あの阿呆(あほう)どもは気付いておらぬか。ただ、シュナイ様は気が付かれてしまわれた。

 さて、これからどうなることやら)


 シュナイは取り巻きーズから一歩後退し悲しそうにリリアンヌを見詰めてから、ルイスへと膝をついた。



「殿下、今までの非礼をお詫びいたします」

「一月もかかってやっと気が付いたか」

「返す言葉もございません。今回のこと、止められなかった私に非があります。どうか、処罰を」


「お前は、この馬鹿共の罰も受けると?」

「甘んじてお受けいたします」


「なんだ、足りないか?」

「私の役目は私心に囚われることなく平等にみることです。この一月あまり、明らかに役目を全うできませんでした。

 殿下の側近になる資格は私にはありません」


「そうか?俺はそうは思わないが……。

 イザベルはどう思う?当事者は貴女だ」


 ルイスはいつもイザベルの意向を優先しようとする。



 (記憶が戻ってから、われの性格が変わったのは明らかじゃろうに、何故このお方は何一つとして変わられないのか……)


 自身が変われば疑問に思われたり、相手の態度が変わっても何もおかしいことなどないにも関わらず、どの記憶でもルイスは一貫としていた。

 そのことに違和感を覚えながらも、イザベルはシュナイを見た。



「シュナイ様の理想は素晴らしいですが、平等など不可能です。人に心がある限りは……。

 それでも、貴方は平等でありたいと願うのですか?」

「はい。それが私の存在理由ですので」


 その言葉にイザベルは目を見開いた後、静かに伏せられた。

 だが、それはオカメに阻まれてシュナイからは見えない。


 (シュナイ様も自身の役割に縛られるのか……。前世のわれのように)



「そうですか。シュナイ様にとって、自身よりも大切なことなのですね。

 ならば、今回は良い経験になりましたね」


 責めるでもなく、擁護(ようご)するでもない。そんなイザベルの言葉にシュナイは静かに耳を傾ける。


「これから先、また今回のように自身の感情に振り回されることもあるでしょう。その時に今回の経験を()かせばいいのです。

 シュナイ様、貴方はまだ学生です。自身のことも、人の感情についても、これからもっと学べば良いのです。今から完璧になる必要などありません。

 どうかこれから先、貴方にとっての平等を見極めてください。そして、ルイス様を支えてください。

 それは、きっとこの国のためになります」


 (とは言うたが、われは婚約解消を行うのに、ちと偉そうじゃったかな)


 イザベルの言葉を聞き、シュナイは深々と頭を下げた。目には涙が浮かんでいる。


「イザベル様、きっと期待に(こた)えてみせます」



 (リリアンヌさんは、ありのままの自身を出してもいいのだと言ってくれた。それも嬉しかったけれど……。

 イザベル様は私のことを丸ごと受け入れてくださった。理解されることはないと思っていたのに)



 こうしてイザベル信者へとシュナイはなった。


 平等であるには誰かの信者になってはならない。だが、シュナイにとってイザベルの考え方こそが自身にとっての理想だと気が付いたのだ。



 (私もイザベル様のように、丸ごと相手を受け止められるような人間になりたい)



 図らずも、側近候補のシュナイの心を射止めたイザベル。婚約解消がまた一歩遠ざかったのだが、当の本人は全く気が付かないのであった。




 


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