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4月31日

作者: ウォーカー

四月三十一日法。

4月30日の後に一日分増やして4月31日を追加する、日本の法律。

4月と5月にまたがる大型連休を長くすることで、

観光客の増加や国民生活にゆとりを持たせることが目的とされる。



 某年、秋。

日本の国会で、俗に言う、四月三十一日法が可決成立した。

四月三十一日法とは、その名の通り、4月31日を作る法律。

本来、4月には30日までしかないが、

4月30日の後に4月31日を作ることで、4月と5月にまたがる大型連休を長くする、

そうすれば、休日が増えて国民生活も豊かになるだろう、

というのが、四月三十一日法について国民へ事前に説明された内容。

観光業界、旅行業界からの強い後押しを受けて制定された法律だった。

しかし、新しく増えた4月31日を実際にどうするのかは、

国民自身の自主性に委ねられることになった。

法律の施行、

つまり四月三十一日法が有効になって4月31日が増えるのは、来年度から。

来年度からはきっと4月31日は休日になって、

大型連休がもう一日分伸びて観光客で各地は賑わうことだろう。

観光業界、旅行業界にまつわる人たちからはそう期待されていた。


 年は変わって、2月。

4月からの四月三十一日法の施行を間近に控え、

世間がにわかに騒がしくなった頃。

ある学校で、生徒会会議が開催されることになった。

議題はもちろん、四月三十一日法について。

名門校として名高いその学校では、

新しく増やされることになった4月31日をどうするか、

生徒の自主性に任せるとして、生徒会が決めることになっていた。

そうして今日、生徒会長であるその男子生徒の呼びかけで、

生徒会の生徒たちが学校に集まって、生徒会会議が開催されたのだった。


 学校の生徒会室。

生徒会の生徒たち十数人が車座になって、

今まさに生徒会会議が開催されようとしていた。

生徒会長の男子生徒が挨拶し、集まった生徒たちを見渡して発言した。

「みんな、わざわざ集まってくれてありがとう。

 今日は、四月三十一日法で増やされることになった、

 4月31日をどうするか決めようと思う。

 うちの学校の校訓、つまり学校の方針は、

 自主独立、未来を創る。

 この校訓に則った方針にしたいと思う。

 誰か意見がある人はいるか。」

すると、車座の生徒たちが発言を求めてちらほらと挙手するのだった。


 まず最初に、遊び好きそうな茶髪の女子生徒が発言した。

「はいはい!

 4月31日は、休日にして休みにするのが良いと思います!」

誰もが予想したその発言に、

真面目そうな眼鏡の女子生徒が、眼鏡を光らせて口を挟んだ。

「4月31日を休日にするのが良いと思う理由は?

 まさか、遊べる日が増えるからじゃないわよね?」

厭味ったらしい口調に、茶髪の女子生徒は口を尖らせて反論する。

「ぶー。

 わたしだって一応、難しい入学試験に合格してこの学校に入学したんだよ。

 遊びたいだけで4月31日を休日にしようなんて言うわけないよ。

 あのね、うちの学校の生徒の中には、

 勉強とか部活動とかが忙しくて、体調を崩してる人もいるの。

 うちの学校の授業は難しいから、ついていくだけでも大変だしね。

 そういう人たちにとっては、休日が一日分でも増えるのは良いと思うの。

 休日が増えれば、体調を整えるのにも、授業の予習復習にも使えるから。」

つまり、茶髪の女子生徒の意見は以下の通り。


4月31日を休日にする。

一日分増えた休みは、各々の生徒が体調を整えたり勉強するのに使う。


一聴して良い解決法に感じられる。

しかし、眼鏡の女子生徒が疑問を口にした。

「あら、あなた意外と考えていたのね。

 疑ってしまってごめんなさい。

 でも、4月31日を休日にするとして、

 体調は悪くないし、勉強にもついていけてる人はどうするの?

 休みよりも学校で勉強したい人もいるでしょう。

 例えば私とか。」

さらに、運動が得意そうなスポーツ刈りの男子生徒も発言した。

「学校の勉強や部活動で体調を崩してる人がいるって?

 勉強はともかく、部活動で忙しくて体調を崩すなんて本末転倒だぞ。

 部活動をしている生徒でも、

 学校には勉強をするために来てるはずだからな。

 俺も部活動をしてるけど、体調に問題を感じた時は、

 まず部活動の休みをもらってるよ。

 それでも体調が回復しない時に、初めて学校の休みをもらう。

 そもそも、部活動で生徒が体調を崩すなんてのは、

 その部の活動内容に問題がある証拠だ。

 そんなことを続けていたら、一日分くらい休みが増えても、

 また体調を崩すことになるんじゃないか。

 だったら、生徒が個人の休日を使うんじゃなくて、

 部活動のスケジュールを見直すか、公的に休みをもらった方が良い。」

生徒会長の男子生徒が意見を取りまとめる。

「ふーむ。

 休みが必要ない生徒が待機していれば解決のようにも思えるが、

 それでは生徒の自主独立という校訓に反するかもしれないな。

 出来ない人に合わせろと命令するのは、

 出来る人はどんなに努力をしても逃れられない負担となるからな。

 4月31日を一律に休日にするのは、問題があるかもしれない。

 この意見は一旦保留にして、次の意見を聞いてみたい。」

そうして次に発言を求めて挙手したのは、眼鏡の女子生徒だった。


 次の発言者は、眼鏡の女子生徒。

まっすぐに挙手して、それから発言をはじめた。

「私は、4月31日は平日にして、普段どおりに学校に通えば良いと思う。

 授業日数が一日分増えれば、授業内容にもゆとりができて、

 生徒の負担も減るでしょう。」

単純明快、眼鏡の女子生徒の意見は以下の通り。


4月31日を平日にする。

一日分増えたことで、学校の授業などにゆとりをもたせる。


すると今度は、茶髪の女子生徒が反論する番だった。

挙手もそこそこに食ってかかるように口を開く。

「それだと、体調が悪い生徒には負担でしかないよ。

 さっきも言ったよね。

 もうすでに体調を崩してる人もいるって。」

スポーツ刈りの男子生徒も、首を横に振ってやれやれという調子で言った。

「平日が一日分増えたら楽になるというのは、学校の授業の場合だけだな。

 部活動は、活動日が一日分くらい増えたところで、やることは変わらないぞ。

 一日分多くなったからって、毎日の練習に手を抜くなんてことはしない。

 その分、体がなまってしまうからな。

 平日が一日分増えたら、もしかしたら体調を崩す原因になるかもな。」

生徒会長の男子生徒も反論する。

「同じ内容の勉強をするにしても、

 だらだらと時間を伸ばすのは非効率的なだけじゃないか。

 平日が一日分多くなっても、一年間にやる授業内容は変わらないんだから。」

「そもそも、授業についていけてる人には、

 一日分増えても無駄だって言ったの自分じゃん。

 だらだら授業の日を増やしても意味ないよ。」

茶髪の女子生徒がさらに手厳しい言葉を投げかけた。

針のむしろにされて、眼鏡の女子生徒が頬をふくらませる。

「そんなに寄ってたかって言わなくてもいいでしょ。

 私だってそんなの分かってるわよ。

 一応言ってみただけ。」

「ふーむ。

 4月31日を平日にするというのも、保留したほうが良さそうだな。

 次の人の意見を聞いてみようか。」

生徒会長の男子生徒が次の発言を促した。


 次に発言したのは、髪を真ん中分けにした男子生徒だった。

左右に座る生徒たちを均等に見渡して、それから口を開いた。

「4月31日は自由登校日にしてはどうでしょう。

 休日でも平日でも、どちらにも支障がある生徒がいるのなら、

 いっそ、生徒個人がどうするか決めれば良い。

 夏期講習のように自由参加の授業にするのはどうでしょう。

 勉強が遅れている人は参加すれば良いし、

 そうでない人は休養にあてられる。」

真ん中分けの男子生徒の意見は以下の通り。


4月31日を自由登校日にする。

勉強したい人だけが学校に登校して講習に参加する。


これも一聴して生徒の自主独立にも合致するように思える。

しかし、その意見にも、眼鏡の女子生徒が反対した。

「私は反対ね。

 自由登校ということはつまり、参加しない生徒がいるってことよね。

 それじゃあ、どんなに頑張っても、

 講習で触れられる内容は授業の復習でしかない。

 だって、参加していない生徒がいるのに、

 授業より先に進むわけにはいかないんですもの。

 それに、このやり方もやっぱり、

 授業内容についていけている生徒には無駄でしかない。

 遅い人が追いついてくれるのを、じっと待つことになる。

 4月31日を休日にするのと同じよ。」

スポーツ刈りの男子生徒も渋い表情で続く。

「自由参加って言えば聞こえは良いけど、それってつまり、

 参加しない人は置いていかれることになるんだよな。

 そうすると、置いていかれたくない人は参加するしかなくて、

 結局は強制参加と似たりよったりになる。」

茶髪の女子生徒も口を揃える。

「授業内容についていくのが大変で体調を崩してる人にとっては、

 二重に困ることになりそう。

 だって、自分は講習に参加するのが難しいのに、

 他の人は講習で勉強できるんだもの。」

そんな不安の声を聞いて、生徒会長の男子生徒は腕組みする。

「なるほど。

 自由参加の講習と言えば聞こえは良いが、

 実際には、参加した人としなかった人と、

 その差を大きくするだけかもしれないな。

 これを結論としてしまうのもまた問題がありそうだ。

 すまないが、この意見も保留にしておこうか。」

生徒会長の男子生徒の発言に、生徒会の生徒たちが同意して頷いた。


 それからも、生徒会の生徒たちは、

4月31日をどうするか、各々の意見を出し合った。

「休日は休日でも、学校のみんなで旅行に行くのはどう?

 修学旅行みたいな感じで。」

「そりゃいいな。

 修学旅行は何回あっても良い。」

「でも、お金がかかるんじゃない?

 うちの生徒の中には、家がそれほど裕福じゃない人もいるのよ。

 学費の上にさらに修学旅行もう一回分のお金なんて、

 よほど裕福な家じゃないと頼みにくいんじゃないかしら。」

「じゃあ、学校に寝泊まりするのはどう?

 日中は授業をして、夜は課外活動にするの。

 そうすれば勉強と両立にもなるし。」

「それじゃ、家から学校に通うのと大差無いな。」

「勉強が遅れてるわけでもない生徒も、学校に寝泊まりさせられるの?

 いい迷惑よ。」

「連休中に家族旅行するつもりの生徒は困るだろうね。」

「生徒の自主性にも反するな。

 4月31日に学校の生徒が揃って寝泊まりするのは難しいだろう。」

そこでふと、生徒会長の男子生徒が誰ともなく尋ねた。

「そういえば、他の学校の人たちはどうしてるんだろうな?

 学校だけじゃなくて会社とか役所とか。

 4月31日が増えるのは、うちの学校だけじゃないはずだ。」

そんな疑問に、生徒会の生徒たちが口々に応えた。

「隣町の学校では、4月31日は休日にするらしい。

 友達が通ってるから聞いたよ。」

「うちのパパが勤めてる会社も、4月31日は休みだって。

 連休が一日分長くなったって、パパが喜んでたもの。」

「へぇ、それはいいな。

 お前の家の親父さんが勤めてる会社は、大きくて有名な会社だもんな。

 うちの親父が勤めてる会社は小さいから、4月31日は平日にするってさ。

 仕事の日が一日分増えたって親父が嘆いてたよ。」

「うちの親は役所で働いてるんだけど、4月31日は休みみたいね。」

どうやら、学外でも4月31日への対応は分かれているようだ。

生徒会会議の話題が、段々とよそに逸れていく。

「そもそも、この四月三十一日法って法律は穴だらけだと思わないか?

 平日でも休日でもない4月31日を追加するなんて。」

「カレンダー屋さんは大儲けでしょうね。

 それは冗談として、

 人によってカレンダーが違うという状況になるわね。

 混乱が起こらないと良いのだけれど。」

「平日か休日かの違いだけだったらまだ良いさ。

 問題は、4月31日を追加しない外国やなんかとカレンダーがずれることだよ。

 この四月三十一日法って、基本的には日本だけのものなんだろう?」

「ずれた日にちは、どこかで調整する予定らしいよ。閏年みたいに。

 もっとも、いつ調整するかは未定らしいけど。」

喧々諤々。

生徒会会議は紛糾して話はまとまらない。

騒がしい生徒会室の中で、

生徒会長の男子生徒は目をつぶって腕を組み、

どっかと席に座って考え込んでいた。

4月31日を平日にするか休日にするか。

この学校の校訓である、自主独立、未来を創る。

そんな校訓に則った解決法は無いだろうか。

そんなことを考えている間にも、生徒会会議は紛糾していく。

白熱した生徒たちの口調が荒くなって、そこかしこで言い争いが起こる。

血の気の多い生徒が口汚く罵り、それに対して手が出て返る。

半分喧嘩のようになった生徒たちの間で、

投げつけたノートだの消しゴムだのが飛び交っている。

すると、誰かが投げたクッションが狙いを逸れて、

目をつぶって考え事をしている生徒会長の男子生徒の顔面に直撃した。

まずいとばかりに、生徒会室の喧騒が少しだけ静かになった。

その時。

生徒会長の男子生徒が、顔を埋めるクッションを外して、

くわっと目を見開いて声をあげたのだった。

「よし、思いついた!」

怪しげな笑顔を浮かべた様子に、生徒会の生徒たちが恐る恐る尋ねた。

「思いついたって、何を?」

上目遣いで様子を伺う眼鏡の女子生徒に、

生徒会長の男子生徒が自信満々に応えた。

「決まってる。4月31日のことだよ。

 自主独立、未来を創る。

 この校訓に則った解決法が思いついたんだ。」

「えっ、本当?」

「どんな方法だ?教えてくれよ。」

ついさっきまで言い争っていた生徒会の生徒たちが、わっと周囲に集まってくる。

元より仲は悪くない。

本音で話し合える相手だからこその、言い争いだった。

今は頭を突き合わせて興味津々、生徒会長の男子生徒の開く口に耳を傾けていた。

「それはな・・・」



 それから数日が経過して、学校の職員室。

今日は、4月31日をどうするか、生徒会が学校側に回答する日になっていた。

生徒会長である男子生徒を先頭に、

生徒会の生徒たち数名が職員室を訪れていた。

「何!?どういうことだ?」

生徒たちの返事を聞いた先生の素っ頓狂な声が、職員室に響き渡った。

たしなめるようにして、生徒会長の男子生徒が繰り返した。

「ですから、僕たち生徒会は、4月31日を返納することにしました。」

目を白黒させている先生は、口をぱくぱくするだけで言葉がでない。

しかたがなく、生徒会長の男子生徒が理由を説明することにした。

「僕たち生徒会の生徒たちで話し合ったんです。

 四月三十一日法で新しく増やされることになった4月31日をどうするか。

 すると、平日にするにしても休日にするにしても、

 誰かしら得する人と損する人が出るとわかったんです。

 平日にして授業をすれば、負担が増えて困る生徒がいる。

 休日にして休みにすれば、学校で勉強したい生徒は困ってしまう。

 課外活動にしても結果は同じ。

 誰かが得をしたら、誰かは損をする。

 強制された生徒の自主性は損なわれてしまう。

 だったらいっそ、4月31日なんて無ければ良い。

 そうすれば、生徒の中で損得が出ないと思ったんです。」

それが、生徒会会議で導き出した結論だった。

新しく4月31日が増やされて、誰もが得をするわけではない。

得をする人もいるし、損をする人もいる。

ここで問題なのは、

出来が悪いとか努力を怠ったから損をするわけではない、

ということ。

制度として一日分が増やされて、それをどうするかで、

決して逃れられない損をさせられる人ができてしまう。

だったらいっそ、4月31日なぞ無ければ良い。

生徒がお互いに強要せずに併存する、自主独立に適った結論だった。

しかし、その大胆な結論に先生は、

窒息した魚のように、ぱくぱくと口を開け閉めして応えるしかなかった。

「しかし、だからと言って4月31日を返納するだなんて。

 そんなことは無理・・・」

「いいえ、出来ると思います。」

眼鏡の女子生徒が先生の言葉を遮った。

眼鏡に指を添えて眼光鋭く言った。

「先生、四月三十一日法の内容を思い出してください。

 四月三十一日法では、こう書かれています。

 新しく増えた4月31日を実際にどうするのかは、

 国民自身の自主性に委ねられる、と。

 どうするかという言葉。

 これは、4月31日をどう過ごすかというだけの意味ではなく、

 4月31日そのものを変えても良いという意味にも受け取れます。

 つまり、4月31日を平日にも休日にもできるだけではなく、

 そもそも使わずに返納することも可能だということです。

 だって、元々はカレンダーに存在しない日なんですもの。

 存在しない日を追加できるなら、削除もできるはず。」

ただの言いっ放しではない、理屈の通った話に、

先生がいくらか冷静さを取り戻して聞き返した。

「それは・・・そうかも知れないが。

 言葉の上だけの話だから、実際には役所に掛け合う必要がありそうだが。

 まあそれは先生たちの役割だとして。

 しかし、お前たちはそれで良いのか?

 せっかく、勉強できる日を一日分長くできるのに、

 それを捨ててしまうだなんて。

 学生でいられる時間は大事だぞ。」

先生のそんな心配には、真ん中分けの男子生徒が応えた。

「学生でいられる時間は大事ですが、

 同じことを勉強するのなら、その時間は短い方が良い。

 なにせ、人の寿命は限られていますから。

 勉強する時間は短いほうが有利。

 だから、飛び級なんて制度があるんですよね。

 ちゃんと勉強ができたのなら、卒業までは短い方が有利なんです。」

「選手生命には限りがあるもんな。

 きちんと準備ができたのなら、卒業は早い方が良い。」

スポーツ刈りの男子生徒が続いた。

生徒会の生徒たちが言いたいことを言い終わるのを待ってから、

生徒会長の男子生徒が話をまとめた。

「それにこれは、うちの学校の校訓にも則ってると思います。

 うちの学校の校訓は、自主独立、未来を創る。

 4月31日を返納するという結論は、

 生徒会で話し合って決めた生徒が併存する方法だから、自主独立。

 そして、4月31日を返納するということは、

 4月31日を追加する人たちよりも僕たちは一日分先にいくことになる。

 これって、立派に未来を創ってますよね?」

話を聞いて、生徒会の生徒たちが吹き出す。

人よりも一日分先を生きる。

確かにそれは、未来を創ることになりそうだった。


 そうして、その学校では、4月31日を返納し、

生徒たちは元のカレンダー通りの生活を送ることにした。

そのことについて特段の混乱も無く、つつがなく5月を迎えることができた。

むしろ、混乱が起こったのは4月31日を追加した人たちの方。

なにせ、四月三十一日法が有効なのは、基本的には日本だけなのだから、

外国などの4月31日を追加しなかった人たちとは一日分ずれることになる。

その調整をするだけでも手間暇は膨大なもので、

人々に多大な負担がかかることになった。

日本国内でも蓋を開けてみれば、

4月31日を追加して休日としたのは一部の大手企業と官公庁のみ。

大多数の中小企業などでは、

4月31日を平日として仕事をすることになり負担が増えた。

それから、その学校以外にも4月31日を返納した人たちは少なくなく、

二種類のカレンダーが存在することで、国内のやり取りであっても負担が増えた。

それを嫌ってか、

年を追うごとに4月31日を返納する人たちが増えていき、

数年も経った頃には、4月31日はカレンダーからも姿を消していった。

制度としての4月31日は存在するものの、使う人は誰もいない。

その状況は、数年前にあの学校の生徒会が決めた結論と同じ。

確かにあの学校の生徒たちは未来を創ったのだった。



終わり。


 今年ももう4月が終わってしまって、

一日分だけでも日にちが増えたら良いのにと思って、この話を作りました。


仮に4月31日が追加された場合を物語にしてみましたが

誰かが得をしても誰かが損をするという、

うまくいかない結末になってしまいました。

そう考えると、

時計やカレンダーを操作する法律は数あれど、

それがどんな結末をもたらすのか、恐ろしく感じてしまいました。


お読み頂きありがとうございました。


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