30話
「イーリン隊長、それでどうするというのですか?」
「いや、お前はまだ怪我しているだろうに。」
「しかし、簡単にはいかんでしょう。隊長。」
「お前らな、隊長はこのワカトシだからな。俺じゃないぞ。」
「…。」
「こう言っては何ですが、彼は声が小さいし、話さないじゃないですか?」
「…。」
「本人がいる前になんてことを。それにワカトシは別にわからないようなやつではないからな。今は余裕がなくて見ることができていないだけで、少し成長すればちゃんと見ることができるはず。」
「それはそうですね。」
「ん?あなたは10人隊の時の副官ですか?」
「はい。」
「どうしてそう言えるのです?彼がそのように成長するのか誰もわからないと思いますが?」
「見ていればわかりますよ。彼は自然と目が周りに行っていますからね。ただ、部下のことまで目に入るには少し時間がかかりそうですが。」
「まあ、今日はその話ではない。この隊の方針や作戦を決めることだ。それ以外はまたでいい。」
「…。」
「まず、現状で言えば、連携はとれていないし、次の戦で連携を取ることができることはないだろうと思う。俺もそこは求めていないし、求めることも時間的に難しい。それで今回は即席の5人組で戦ってもらった。まあ、うまくいかなかっただろうが。」
「流石にその場で作った5人組では無理がありますし、相手の連携が良すぎるので、こちらが圧倒された印象です。」
「連携も素晴らしいですが、そもそも練度も高いと思います。」
「確かにそうだな。彼が言った通り、イーリン隊長が言っている以上の練度だった。その上に連携が合わさっては我々が勝つことは至難の業である。」
「俺は別にコーリン将軍の兵士が特殊であると言っているわけではないぞ。我々の練度と軍の練度では鍛えるところが違うのだから、今回で言えば負けてしまっても仕方ないと言えるということ。それは分かってもらえて何よりだ。知識として陣形や作戦は頭に入っているが、長く軍からは離れているからすぐに順応するのは難しい。」
「我々は守勢でことが主ですからね。なかなか攻勢に出るというのは慣れていません。」
「…。」
「我々も慣れているわけではありませんよ。そもそも下の兵士は命令を受けて動くだけなので攻めているとか守っているというのは感覚でしかありません。それに自分が危険になれば守っているという感覚にもなるので。」
「それもそうか…。」
「難しいものだな。5人組というのは親衛隊でも使っている最小単位だから、この単位を変えないとして、他に何かできることはあるか…?」
「親衛隊を組み込みますか?」
「半々にするということか?」
「それならまだ何とかなるかもしれません。半分なので連携も。」
「しかしな…。」
「それではやはり連携の問題が出てくるように思う。」
「確かに。今のままではあまり変わらないことになるだろうし、戦いになっても不安なことが多いだろう。やはり、現状のまま相性で分けるのが最適か…。」
「それでは別の方法はどうだろうか?」
「どうした、ワカトシ。」
「そもそも5人組というのは必要なのか?」
「何を言っている?」
「親衛隊というのは人を守るのが得意なのだよな?」
「ああ、そうだ。」
「ならば、俺を守りながら戦えばいいのではないか?そのやり方はコーリン将軍の兵士も多少は知っている。」
「そんなに簡単に。」
「…。」
「イーリン隊長?」
「…隊長ではない。しかし、ワカトシが言っていることは良いかもしれない。単位が大きいかもしれないが、親衛隊が動きやすい部分もあるかもしれない。動くのは本体というか、俺とワカトシ。悪くない。」




