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21話

 実は武官の中でもエリートとそうではない平民とそれぞれ別れている。いわゆるエリートというのは家系である。父親がどの役職にとかもともと家族がコーリン将軍の隊にいるなどのことが優先されるということ。そんなことは以前の世界でも起こっていたこと。そういったことがあったとしても驚くことはない。しかし、コーリン将軍の兵士たちは全く持ってその上から目線の兵士が少ない、もちろん、上司として命令することはある。それ以外は普通に接してくれるのだ。そのことが意外過ぎる。


「どうかしたのか?」

「いえ…。」

「…雰囲気か?」

「はい。」

「お前は他の隊にいたことないはずだが、まあ、軍隊のことを知っていればそうか。」


 コーリン将軍の考え方として全員が家族であるという軍隊を作りたいらしい。それによって大きな連帯感が生まれて助け合うような兵士が生まれると。確かに万以上の軍が家族として動けばかなりの強さへと変貌するだろう。家族の絆によって多くの障害があると思うが、その感情は良い方向へと動く。しかし、問題なのは仲間を殺されたときである。その時の憎悪はかなり強いものになる。その憎悪が行き過ぎれば凄惨な戦いへと変貌する。


 そのことをコーリン将軍がわかっていないはずがないのだが、それでも推し進める何かがあるのだろうか。コーリン将軍がいればその感情を抑えることができるというのであれば難しいだろう。漫画や小説では感情というもので失敗する多くの事象を見ている。この軍の形が失敗するという感じがしているのは負のところを見ているからだろう。


「よし、では進むぞい。夜に関しては訓練を行うからの。」


 行軍はそのまま進んでいく。話をすることなく進んでいく。本当の行軍のようだ。今回の任務は別に行軍という感じではない。もう少しゆったりと構えていても良いはず。山賊もわざわざ軍隊をいきなり強襲することはあり得ない。山賊たちは目的が違う。自分の欲を満たすために行動しているのだから。夕方になると皆が野営の準備を行う。俺もその輪に加わる。全員でやればテントなんてすぐにできる。彼らはそのあと、荷台から棒を取り出す。薪で何をやろうというのか。


「全員、構え。」


 コーリン将軍の声が聞こえた。全員が薪を手に構える。精鋭兵は構えていない。それぞれの兵士に1人ついている。彼らは下の兵士たちの構え方と振り方を見るのだろう。


「よし、各々、素振り1000回。はじめ。」


 スパルタかよ。…これでは持たないぞ。


「…少し振り方ではなく姿勢を意識して。」


 後ろから声をかけられた。そんなに体が曲がっているようには思っていないのだが。


「少し背筋を伸ばそう。実戦ではどうしてもいろんな型になるのは仕方ない。でも、何も考えなくても綺麗な型が出れば、それだけで身体的な負担が軽減するから。」


 彼の言っていることは正しい。長い戦いではできるだけ体力の消耗を防ぐために正しい振り方を求めているのだろう。


「それでも直ることがないのであればそれはそれで大丈夫。その振り方が君に合っているということでもあるから。無理に矯正する必要はないよ。でも、この1週間は意識してもらうからね。」


 彼らはいろんな経験をしている。基本の型がすべてでないことを知っている。他の兵士を見ても同じように型を直されている。前を向いて体に力を入れて振っていく。目の前に立っている彼は頷いている。その人に見られながら素振りを1000回行った。


 次の日、体を起こすと僅かに肩に張りがある。筋肉痛だろうが、やはりこの世界に来て筋肉痛がかなり軽い。体が強くなっていくの感じている。兵士としての体が徐々に出来てきている。他の兵士たちとともにテントの片づけを手伝って、出発した。2日目の行軍も同じように過ぎていく。


 3日目の夜、コーリン将軍は全員を集める。


「さてと、食料調達と行くかの。」


 精鋭兵以外は首を傾げている兵士も多い。どのような意味があるのだろうか。獣を狩るということか。今回の行軍に関係あるとはとても思えない。戦争中に獣を狩ることがあるとも考えにくい。


「まあ、そうだろうの。しかし、こういった経験は重要じゃ。敵の土地へ攻め入る時には補給線が切れることもあり得る。その時に獣を狩ることを覚えておけば対処できる。まさか、住民から分けてもらうわけもいかんからの。それは半分脅しじゃから。」


 コーリン将軍が言っていることは分かる。草原などでは難しいが林の中や山の中では食べることができる物が多く存在している。その分別をつけることで食料が枯渇した時の対応をしようとしているのだろう。しかし、軍であるならば、多くの食料が必要でとてもではないがまかなえるとは思えない。ただ、すぐに飢餓に陥ることもないということか。計画的に狩っていれば大丈夫ということだろう。軍の飢えをしのぐには難しいだろうけど、害獣となる動物を狩ることは悪いことではない。やはり、保管技術が発達していないのは食糧問題でかなりの遅れをとっているように思う。

 

 今回の行軍で助かっているのは香辛料である。この国だけかわからないが、思った以上に香辛料を使った食料が多い。香辛料は美味しいだけでなく、日持ちさせる成分が含まれているものもあるから、存分に使っているのだろう。しかし、どんなにおいしい肉でも何もつけずに食べると不味いことはこの国に来てよくわかっている。行軍の時には食料かどうかも分からなかった。はじめはゴムのような感じがしたものだ。味もないし。慣れてくれば食べることができるようになるが、改めて食が大事というのは痛感する。軍の士気を保つためにも。


「では、みんなで狩ってみろ。」


 夜中の行動は少し先も見えないため緊張する。そして、歩みも遅くなる。しかも、動いている人数が多いので思った以上に獣の動く音が聞こえない。兵士たちの距離も近くなってしまう。


「わかったかい?夜に狩りをするのは不可能ってこと。夜に動く獣もいるけど、彼らもこの人数の人間がいるところには来ないからね。じゃあ、戻ろうか。」


 そのまま来た道を引き返そうとしたが、どこから来たのかわからない。


「そういうことも想定して印をつけることもある。僕たちは経験があるから何となくわかるけど、分からないうちは印をつけておいた方がいい。それは昼間も一緒。特に森の中などはね。」


 勉強になる。これを知るのと知らないのでは全く異なる。前の戦いの山では小さい山だったので迷うことは少ないだろう。しかし、それ以上になれば俺は迷っていたはず。早く知っておくべきことでもある。コーリン将軍はこういった経験を数多くの兵士に事前に刺せることで他の兵士が狼狽した時にも対応できるようにしているのだろう。よく考えている。それでも山賊を早く討伐しなくても良いのかと思うのだが。あと、素振り1000回は免除してほしいのは俺だけだろうか。


 1週間が経ってようやく石山が見えてくる。どこも断崖絶壁に見えるが、反対側は緩やかな山になっている。…、普通に考えて殿下のいる街とかなり近いと思う。今までよく侵入を許したな。今回の盗賊は貴族を狙っているため、殿下も例外ではないと思う。しかし、コーリン将軍やケヴィンたちが知らなかったとは思えない。盗賊に危害を加えられる心配がないため、誘い込んだというところか。


 マーク山は数年前の地震で山の半分が崩れてしまったらしい。崩れた時には人もおらず、石炭も取れなくなっていたそうだ。上層部はまだ取れる可能性があるため、存続する方針だったが、この状態になった時に廃坑が決まった。ここからさらに整備するには時間がかかる上に石炭があるとも限らないため、廃坑が決まった。


 その絶壁の上にはわずかに人影が見えた。数人だが、統制が取れている。普通の盗賊ではない。コーリン将軍はもしかして、この盗賊の正体を知っているのではないだろうか。


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