20話
「さてと、任務を説明するかの…。」
任務は盗賊の討伐。どうやら、この周辺に盗賊が出るようになったと。どうもこの国で内乱が起きてから出現したらしい。なぜか盗賊は徐々に勢力を大きくしているらしく、今では百人規模ではないかと言われているそうで。どうしてそのようになるのか、理解できないのだが、事実らしいのでしょうがない。しかし、どうして今まで放置されていたのか。
「山賊と呼ばれておるが、精鋭兵と同じくらいの強さだと思っておくのじゃ。」
だから、そこまで放置されていたのか。それもおかしな話か。もっと何かできるような気がするのだがな。今回、コーリン将軍が陣頭指揮を執るということだが、大丈夫なのか。敵国の脅威がある以上は軍として動かすことができないので少数精鋭でということか。しかし、この状況でコーリン将軍が抜けても大丈夫ということにはならないだろう。内乱も続いているのでそう多くの兵士を出すことができないというのが本音だろう。それでも、コーリン将軍を出そうというのは勇気がいる。
「今回はこちらで選抜するのでな。さすがに全軍で山賊討伐に向かうわけにもいかんからの。」
コーリン将軍の話を直立不動で聞く俺たち。コーリン将軍が選んだ兵士の数は全部で100名。盗賊と同数というのはかなり厳しいものがある。精鋭兵が50名でもっとちゃんとした討伐隊を作るべきだと思っている。この人数だと全滅もありうる。でも、上はこれ以上の兵数は割けないということらしい。しかし、少なすぎやしないだろうか。どうやっても倍以上の人数が必要かと思うのだが。コーリン将軍が深刻な顔をしていないので大丈夫なのだろう。不安が払しょくできないのは仕方ない。
コーリン将軍がいるといないのでは兵士の士気が随分違う。それは周りの兵士を見ればよくわかる。安心感というものがあるのだろう。わかる気がする。コーリン将軍は常勝将軍なのだろうから、安心感は段違いだろう。
しかし、肝心な盗賊の情報が思ったよりも少ない。出会った人間のほとんどが死んでいるからだ。その情報を残さないというのが徹底されている。そう考えると彼らは頭が良いと思われる。むしろ、棟梁はそれなりの学を持っているか、どこかで経験を積んでいる可能性がある。他の兵士たちも粛々と準備しているが、俺もこの討伐部隊に参加することも意味が分からない。
山賊討伐の任務では盗賊が根城へしているところへ向かう。向かうのは石が多くむき出している山である。名前はマーク山。マークという人間がこの鉱山資源を見つけて、そのまま名前をつけたらしい。その山には石炭があったらしく、しっかりと開発が進められたが、埋蔵量は思ったよりも少なかったらしい。盗賊たちは各地を転々とした後、マーク山に住処にしている。開発の段階で生活ができるように様々なものがあるらしく、住処にするには問題ないらしい。
「あとのこの行軍の間に訓練を行うからの。せっかくだからのかなり厳しい訓練をやるつもりだからの。覚悟しておくのじゃ。」
コーリン将軍の中では訓練の内容を決まっているだろうな。すでに討伐任務自体が訓練のように思うが、コーリン将軍からすればこれはただの任務であるらしい。訓練が厳しいと言っていたが、こういったところも厳しいな。盗賊の討伐がただの任務とは…。盗賊と同じ100名ということであればかなりの人数が死ぬことも考えられる。それも折込済みということか。
「おい、馬の準備なんてするな。意味がないぞ。」
そう言った精鋭兵は馬を別の兵士に引き渡した。この任務に制限をつけたのはコーリン将軍である。コーリン将軍はこの行軍で馬をつけないらしい。本軍からは緊急事態の時のために馬を付けるように命令があったのだが、コーリン将軍は命令を断った。何か裏があるのだろうと思ったが、俺たちが行軍する時間が非常に長くなる。その上、今回徴集されているのは前回の戦いで褒章された者ばかり。ある意味精鋭とも見ることができるだろうが、ほとんどの兵士が若手。少し不安でもある。




