17話
ケヴィン将軍という名を聞いたのは最近の話だ。彼が将軍であるということは知らなかった。どうして墓に少数精鋭で入る意味があるのかすらわからないが、彼らのような信頼に足るような人間しか入ることが許されていないというのは分かった。しかし、俺に何の用だろうか。
「まさかガーマスを討ち取るとは思わなかったよ。」
「私もそうですね。」
彼はその言葉を聞きながら別のほうを見ている。あの男性は誰だろうか。やはり、軍の中でも派閥というものがあるのだろう。対面では特に何もなくとも何か裏でやっているのだろうな。しかし、本当にこのようなことが行われているとは思わなかった。なんて無駄なことをするのだろうかと思う。何の役にも立たないことだ。本当に国のことを思っているのであれば仲良くして国のために働くべきである。
「どうかしたか?」
「いえ。」
彼は歩いていく。その後ろをついていく。彼は一体、俺のことの何を話そうというのだろうか。…、コーリン将軍がこちらを見て近づいてくる。
「ケヴィンか、どうかしたのかの?」
「将軍、ここではなんですので、中庭でよいですか?」
「構わんが、ワカトシにかかわることなのかの?」
ケヴィン将軍は頷いた。俺のこと…、なんだろうか。何かしたわけではないのだが。彼ら2人は歩いていく。何か牽制しているように距離が微妙に空いているのが気になる。どうしても仲良くできるわけがないのかもしれないが、それなりに仲良くはしてほしいと思う。連携とかいろいろあるだろう。中庭には多くの兵士が立っている。この中で話をするのか…。
「では、コーリン将軍。」
「すまぬ。どうしても年を取るとなかなかずっと立っておくのが難しくなるからの。」
コーリン将軍はすぐに椅子へと座った。コーリン将軍にとっては立っておくことは別に苦痛ではないはず。それなりに長くなるということか。ケヴィン将軍も椅子に腰かけた。コーリン将軍の隣に立つ。今はコーリン将軍の兵士であり、そして弟子でもある。他の兵士が飲み物を持ってくる。紅茶のような匂いが鼻に入ってくる。紅茶はこの世界では高価なのだろうか。
2人は口をつけながら少しの間何も話すことはない。牽制しているというよりもケヴィン将軍がコーリン将軍を待っているというのが正しい。そのケヴィン将軍も何食わぬ顔で黙って飲み物を飲んでいる。しかし、この場が他の兵士にも目についているのはよくないと思っている。どうしても何かが勘ぐるだろうから。
「ワカトシのことだがの…。」
「はい。」
「このまま儂が預かる。さすがにこのまま放つことはできん。」
「…、ごもっともですが、なかなかそうもいきません。彼の名声が徐々に膨らんでいる中でコーリン将軍の中に置いておくのは危険だ。」
「ワカトシはすでにそれ相応の強さを持ち始めておる。」
そこでコーリン将軍は話を切った。どういうことだろうか。彼らの話には俺がどこかに異動させるような話のように思うのだが。もしそうであれば、コーリン将軍が正しい。まだ、早いように思う。まずはコーリン将軍の軍で慣れるべきだと思う。それに俺はそこまで兵士として戦力があるとは思えない。
彼らの言葉に他の兵士たちも聞き耳を立てているのがわかる。何を考えているのだろうか、この2人は。
「ふん、今回は見送れ。」
「…わかりました。」
「ワカトシ、行くぞ。」
コーリン将軍はすぐに席を立つ。その姿を見て俺も慌てて後を追うがケヴィン将軍は別に気にしないように飲み物を飲んでいる。何を考えているのやら…。しかし、周りの兵士たちはこそこそ話をしているな。兵士としては気になるところのはず。コーリン将軍は他のところへ歩いていく。
「ワカトシ、強くなるのじゃ。」
「え?」
「ある程度強くなれば見える景色が変わるのじゃ。儂もこの将軍という立場になってようやくやりたいことができるようになった。お主にも分かるときがくるじゃろう。」
コーリン将軍はこう言って軍に合流する。千人ほどの兵士が待っていた。どうして待たせているのかわからないが、彼らと一緒に再度戻っていく。…、本当にあのやり取りは何だったのだろうか。




