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11話

いつも読んでくださりありがとうございます。


昔に比べて体が無理できなくなってきましたので、

更新のペースが落ちております。


気長に待っていただければと思います。


今後もよろしくお願いします。

 3日後に敵兵が姿を現した。正確な兵数はよくわからない。上官が言っているのを聞くだけだから。それでもどうやら敵兵は10万ぐらいいるらしい。正直、多すぎて想像がつかない。それこそ、ライブなどで何万人を動員したという話を聞いている映像を見たら多くの人がいる。それよりも2倍以上の人数である。しかし、全てが正規兵ではないだろう。おそらく半分は民兵のはず。それでもこちらの2倍ほどはいるのか。厳しい戦いというのは兵数の差もあるのか。


 連れてこられたのはなんでもないようなところだ。周りの兵士の空気は暗い。しょうがないことだが、兵士と民兵との意識の差が割と大きいな。誰かが歩いてくるのが見える。そして、立ち止まった。遠くで立っているのはコーリン将軍か。彼は兵士を見ながら何かに頷いている。それもそうか。今回の戦いは厳しいものになるので民兵の士気は下がっている。民兵はまず、無事に生還することから始まる。生還することが重要な彼らが逃げるというのはもちろん考えられる。脱走が多い軍はたいてい民兵が多い傾向にあるらしい。


「うむ。沈んでおるの。」


 その言葉とは裏腹にコーリン将軍の声は透き通っており、そして声が高い。また、元気だ。背筋も伸びている。


「兵数かの…。その兵数は問題ではないの。今回の戦いは山中での戦いとなろう。そうなれば軍の機能はほぼないと考えてよいじゃろうの。しかし、兵数はあちらが多いからの。倒しても倒しても湧いてくる敵にうんざりする。で、それの何が問題じゃ?」


 全員が首を傾げた。その兵数が問題。勝つかどうかが問題。どれも問題ばかりである。


「なれば勝てばよい。それだけじゃ。…皆は分からんかもしれんが、儂が指揮した戦いで負けたことがないからの。民兵が嬉しくして帰ったのをよく覚えておるわい。」


 民兵からどよめきが聞こえた。コーリン将軍は常勝将軍なのか。民兵たちの顔が変わった。噂は充分にあるらしいな。コーリン将軍も民兵に限定するのはうまい。


「では、勝つとするかの。全軍、出陣じゃ。」


 主に民兵からの歓声が聞こえた。やはり褒美というのは大きいらしい。戦争が終わったら褒美が楽しみになるのだろうか。正規兵は表情が引き締まった。5人隊長が神妙な顔になる。


「まずは5人組を崩さないこと。そして、山の中では急な動きはしないこと。その2つを守れ。そして、俺が死んだら、各々、生きるために戦え。俺を見失ったり道に迷った場合にはとりあえず、動き回らずにその場で助けを待て。森の中では戦況がわかりにくい。不利であれば逃げて味方と合流しろ。」


 現実的な指示だと思う。彼の言葉に全員で頷いた。まずは歩兵が進入していくのが見える。…森の中が見えにくいな。味方がどのように入っていくのか見えにくい上にどのような感じで戦闘をしているのかまるっきりわからない。思った以上に木が高い。4メートルくらいはある。深い森だ。


「そろそろ森に入っていく。お前は槍を木に引っかけないようにしておけ。じゃないとすぐに死ぬことになるぞ。」

「はい。」

「さあ、行け。」


 騎馬に乗っている兵士が命令して、5百人の兵士とともに俺たちは森へ入っていく。前列の兵士が森に入っていく。しかし、その前の兵士たちはどこに行ったのだろうか。木が高いせいで森の中が暗い上に視界があまり良くなく見えにくい。武器の音がするものの誰がどこで戦っているのか全く分からない。同士討ちだけは避けなくては。そして、この森を焼いてしまえば敵や味方も死ぬことになるだろう。


 戦が始まった。いや、始まったらしい。森に入った瞬間に剣や槍の音が聞こえる。手が震えている。その手に握る槍からは僅かに反発するような圧力を感じる。以前も同様のことがあったな…。ゆっくりと前に進んでいく。隊長は周りを警戒しながら進むが、何も見えない。首筋に汗が滴るのを感じる。その水滴が背中へと流れていく。緊張感が凄い。


「周りを警戒しろ。何かが来る。」


 隊長は声を潜めて言った。周りを警戒するが音が溢れすぎて判別ができない。他の隊員を見る余裕もない。何かが音がする。


「来たぞ。」


 その時にはすでに隊長が誰かと戦っていた。俺も含め他の隊員も動くことができなかった。隊長が胸を槍で突かれて槍が貫通している。槍が貫通するということがあるだろうか…。この兵士たちは普通の兵士と違う。


「うおおおお。」


 もう1人の兵士が突っ込んでいくが1人目の兵士に防がれて別の兵士に剣で首を切りつけられて死んだ。もう1人はすでにいない。おそらく逃げたのだろう。隊長からは逃げることも必要だと言われている。この状況を見れば逃げるべきだということはよくわかっている。ただ、逃げる意味がない。いや、そうではないな。逃げることができない。そう感じている。


「…、見上げたものだ。我らとこの兵数を見て逃げ出すことがないとは。」

「…。」


 槍を握りなおした。槍から熱気が伝わってくる。その熱気に合わせて心臓の鼓動が体中に響く。目の前の兵士が俺のほうへ切りかかってくる。動きは速い。速いが俺にとっては早くない。剣の軌道が見えている。その動きに合わせて避けて槍を首に突く。彼は何もわからずにその場で倒れた。他の兵士の顔色が変わる。


「…油断するな。手練れだ。」


 全員の殺気の重さが変わった。彼らの動きが変わっていく。彼らはそのまま周りを囲むように行動していく。兵士が見え隠れしている。あの状態ではなかなか討ち取ることができない。徐々に後ろに下がっていくが、後ろからの兵士は次々に討ち取られていく。あの剣の軌道が見えていないのか。俺は目の前の兵士を切りつけた。まだ何とかなっている。1人であれば何とか。しかし、自分の体が徐々に重たくなっている。このままでは…。


「下がるな。」


 後ろには百人隊長がいた。彼が背中に手を置いている。


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