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6話~ケヴィン~

 殿下が何を考えているのか、私には全く理解できない。彼に危険がないのは確かだと思うが、兵士に抜擢するなど…。あの体の線の細さと獣の死体に驚く雰囲気では戦場に出て役立つとは到底思えない。しかし、殿下が兵士としてと言うくらいだから何かあるのも確かである。その確かが何かわかればいいのだが。どちらにしても、殿下が言うことを覆すことはできないため、どのようにして軍に影響が出ないようにするのか。それだけは考える必要がある。ただ、預かるのが私ではなくコーリン将軍であるため、何かできることも少ないか…。


 遠くから走ってくる音が聞こえる。味方の兵士だろうな。ここにいるのは…。おいおい、この装束はアミール宰相の直下の兵士。他の兵士がその異変に気が付き、殿下のほうへ向かっていく。ここまで来ると思っていなかった。その兵士たちは俺のほうまで来て止まっている。もしかして、狙いは俺か。


「殿下のほうに行かないのか?」


 もちろん、殿下のほうへ行ったらすぐにでも背中から剣で真っ二つにしてくれるがな。2人の兵士は黙ったまま何も言わない。彼らは懐から手紙を出した。そして、その場に捨てて逃げていく。彼らはあの手紙のために来たのか…。あの通路は窓が多い。すでに逃げているだろうな。包囲したとしても意味がないのだろう。しかし、この手紙は何だというのだ。…。胸ポケットからマッチを取り出して燃やす。面倒くさい。俺が降伏するはずもないだろうが。内部分裂を狙ったものだろうが、あまりにもお粗末だ。別に狙いがあるのか…。今はわからないか。しかし、戦争はすでに始まっている。アミール宰相も直下の兵士を使うとはかなり力を入れている。


「ケヴィン将軍大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ。」


 兵士は周りを警戒している。変な気配はないようだな。あの兵士たちは何をしに来たのだろうか。まあ、いいか。殿下のほうへ行きたいが、行くよりも先に防衛の見直しをすべきだ。彼を伴って門の中を見回る。特に何もない。彼らは本当に明るいうちに侵入したのだろう。あれはハーグか…。あいつが手を抜くなんてことはあり得ないよな。


「ケヴィン将軍、どうしますか?」

「ハーグが来ているのであれば大丈夫だろう。」


 というよりもこのまま彼に会うと困るな。小言を言われるのが目に見えている。めんどくさくなる前に退散しておこう。それよりも頭が痛いな。どうしても難しいことが多い。今回の件もある程度兵士がいなければ警備も難しい。最低限の人数しか警備に回せていない。もちろん、無理をすれば大丈夫だが、それでは兵士がすぐに疲弊してしまう。コーリン将軍を呼び戻すわけにもいかないからな。1週間くらいは何とかしないとな。


 配置を変える指示を出した後、そのまま彼のところに行く。殿下はこの時期に何を考えているのだろうか。彼に兵士の才能があると思えないのだが。牢屋の鍵を取ってくる。牢獄に入るのはあまり好きではないな。ここで死んだ人はいないが、少し冷たい空気が流れている。兵士になって将軍までの地位に上がっている今としては、このような牢獄に入ることもありうる。入りたくないものだがな。


 見張っている兵士を少し見る。彼は私の手に持っている鍵を見ていた。流石に長い付き合いだけある。彼は不機嫌なことを分かったようだな。


「危険では?」

「殿下の指示だ。」

「殿下は何を考えているのでしょう?」

「分からん。分からんが、この男が先の戦いで必要になってくるということだろうな。それくらいのことだ。殿下を信じていれば優秀な人間はいくらでも集まってくる。」

「その通りですね。」


 彼は私の後ろについて来る。彼は以前座っていたポーズで目を瞑っている。彼の鎖を外す。彼は全く動かない。むしろ、動かないのが当然のように。どうして彼のような男が墓地に侵入しているのか全く分からない。本当にまぎこんでいたのだろうか…。


「お前は罪人であるが、無罪放免になったわけではない。分かっていると思うが、猶予期間と合わせて仮であるというのを忘れないようにしろ。」

「はい。」


 彼は大丈夫だ。確信を持てた。問題はこれからのことだ。先に仕掛ける必要も多々あるだろう。スイと一緒に協議をしながら進めるべき問題もある。


 一つの書類を見ながら、今後のことを考える。


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