スケッチ
「……ふぅ」
小さく息を吐く。
目の前にあるのは、私が描いた絵。
いつもなら、完成したらすぐに片づけてしまう。だけど今日は、ちょっとだけ眺めてみたくなった。
「うん。いい感じ」
我ながら、かなり良く描けたと思う。
少しぼかしを入れた背景に、夕暮れの空と、制服姿の男の子が描かれている。
「この子、誰なんだろう」
自分で描いておきながら、そう思う。
「うーん」
私は頭を悩ませていた。
自分の知らない誰かが、私の中のどこかにいる気がする。
「えっと」その人は、私にとってどんな存在なのか?
「友達?」
でも、それは違うような気もする。
一緒に遊んだ記憶はない。
じゃあ、どういう関係かと言えば――。
「……分からない」
考えれば考えるほど、分からなくなる。
「よし」
とりあえず、考えるのはやめた。絵筆を片付け、机の上に置いてあるスケッチブックを閉じる。
「また今度ね」
いつか分かる日が来るかもしれない。
そう思いつつ、私は部屋を出た。