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ずっと好きだった人気者の幼馴染に告白する話

ちょっとギスギスして見えますが幼馴染ハッピーエンド物です


9月4日 日間現実世界〔恋愛〕66位

9月5日 日間現実世界〔恋愛〕35位

誤字脱字報告

本当にありがとうございます

何気ない平日の朝、俺は学校の身支度を整え

自宅の前で待機していた。

ただの見慣れた人との待ち合わせのはずなのに

緊張してるのか何度も足踏みをしてしまう。

目的の者がパタパタと片手を振りながら

駆け足で近づいてくる

「お、おはよーー!!」


幼馴染の早川七海だ

彼女とは小学校の頃から家が隣同士の付き合いで

昔から学校は共に登校している。


笑顔で派手な寝癖もつけたままで

制服は学生用の上着とカッターシャツの

ボタンがいくつか開きっぱなしと

よほど慌てて準備をしてきたのだろうか。


「お前また寝坊したのか……」

「ししし!してないもん!

早起きが苦手なだけだし!」

「いやそれが寝坊って言うんだぞ」


おもいっきり言葉を詰めらせ動揺してたりと

バレバレの反応である。

見ての通り彼女はちょっとおバカ……天然さんなのだ。

小さい頃から七海は活発で俺含めた男友達と混ざって

遊ぶあまり女性らしくない性格をしていた。


「あ!ケン君、このままじゃ遅刻だよ!」

「おう、誰かさんのおかげでな」

「ごめんなさいー!」

高校生にもなって幼馴染とは言えケン君とか

あだ名呼びは恥ずかしくなるが悪い気はしなかった。


俺と七海が走ってる途中異変に気づく

ボタンをしっかり留めてないせいか

彼女のカッターシャツの襟元から下

成長途中の胸と子供っぽい彼女からは想像できない

大人の雰囲気をした黒い下着が見えてしまっていた。

「ちょっと待て!!」

「ひゃっ!!」


俺は慌てて彼女の腕を引っ張り

はだけた衣服のボタン一つ一つをしっかり留めていく

「ど、どうしたのケン君?いきなりボタン留めだして……?」

突然身だしなみを気にしだした俺の

行動に疑問な幼馴染。


「何って……こんなぐちゃぐちゃした情けない格好で

学校に着いたら先生に怒られるだろ」

俺は適当に思いついた嘘の心配で

彼女の質問を受け流した。


こんな姿誰かに見られたらどうするんだと

憤怒していたが七海本人には直接注意する

勇気はなかった。

はだけた服からいろいろ見えてる等と答えたら

私はあなたの下着をチラ見して気になりますと自白してるのに近い……

覗きの変態さん扱いされる可能性が高いのだ。

いや、七海の自業自得な格好のせいだが。


「よしっ!」

全てのボタンを留め終わると二人の距離が近いことに

気づいて互いの顔が赤くなってしまう。

「えへへ……いつもありがとう」


距離感のせいか普段の彼女らしくない

しおらしい表情で礼を言われてしまい

余計に気恥ずかしい空気になってしまった。

「じゃあ……いつも通りに先に教室行くから……」


気まずい空間から抜け出したい俺は一言告げた後

彼女を置いて走り出した。





教室に入ると急いで自分の椅子に腰掛ける

ゆっくり深呼吸する。

さっき見た彼女の顔や下着が

目に焼き付いて離れない。


俺達は小学校かはずっと一緒に登校していたが

高校からは学校近くの道まで着いた後は

時間差で学校に入ることにしていた。

なぜこんな回りくどい登校をしているのかというと

彼女の存在はとても目立つ……モテていたからだ。


「おはよー」

「早川さんだ!」

「七海ちゃんおはー!!」

遅れて七海が教室に入ってくると

友達の女子や陽気そうな男子が近寄り声を掛け

彼女と関わりの薄い男子からも視線が集まり

ホームルーム前の静かな空気は一変し

喧騒な雰囲気に変わる。


元から親しみやすい性格で愛嬌のある彼女は

中学から少しずつ人気を増し高校では

美人というよりは可愛い系のアイドルの様な

持ち上げをされるほど注目されていた。

「ほんと朝からうるせーな……」


誰かに聞こえるわけでもない小声で呟き

ため息を吐き出す。教室の騒音がうるさいから

不快だからとかじゃないただの嫉妬。


そう、俺もクラスのアイドルになってる

七海が大好きだからだ。


最初はただの腐れ縁で好意はなかった

中学になってから成長していく七海とその笑顔に

異性と意識する様になっていたが

その頃には彼女との距離ができた気がした。

親しみやすい性格の彼女は

俺以外の友達、仲間がたくさん増えだしたからだ。


明るい彼女と違って俺はネガティブ寄りな性格や

思春期の時期なのもあり中学にもなって異性と遊ぶのは気まずいと勝手に思い込む様になってきたからだ。

俺は同性と遊ぶ時間が増えて自ら七海と距離を離してしまった。



幸い家が近いので学校の登校は毎日続いていたが

中学の卒業前にいい年した男女が

朝からくっついて動いてたら変な噂も広がるだろう

俺は一緒の登校はやめようと提案したが……


「こんな地味男と一緒にいると迷惑だろ…」

たが俺の提案は彼女にあっさり拒否されてしまった。

「こら!そんなこと言わない!」

「いてーっ!」

思いっきり勢いをつけたチョップを頭にぶつけられ

間を取って登校途中で分かれることに決まった。


「だから、これからもよろしくね」

「おう………サンキュー」

その時の記憶はしっかり覚えていた。

彼女は俺と関わることを嫌がらなかった。

それが嬉しくて彼女との関係は

まだ切れかかってないんだと安堵し

彼女のことがもっと好きになった。


だが高校に入学すると新たな問題が起こる。

異性からの告白だった。

中学までのただの元気な人気者が

男が付き合いたいアイドルの様な存在に変わったのだ。

対抗心を燃やして好意を伝える男子達が急増した。



だが七海は彼らの思いに応えることはなかった

告白する男を一人一人丁寧に断っていった。

今日も休憩時間に廊下で知らない

男子と会話してる七海を見る。

話が終わると分かりやすく男は落ち込んでるのか

頭を下げたままその場を去っていった。

玉砕現場という奴か。


彼女は近くに俺がいたことに気づく。

「あはは……ケン君に見られてたかな?」

「まあ……偶然通りかかってな」


もちろん嘘である

気になって後を追っただけだ、とは言えない。

「その、大変じゃないか?好きでもない

相手なんて……嫌ですって即答したらいいだろ?」


七海が今まで告られた回数は

両手じゃ数え足りないほどされていて多忙だ。

だが彼女は告白してきた人には1日時間を置いてから返事をするという変な拘りがあり

毎日大変そうに見えて疑問だった。


「えっと……それは、ちゃんと真剣に考えたいから」

「え……?」

「告白ってすごくすごく勇気のあることだから

嫌だってあっさり答えるのはその子に失礼と思うし

私も付き合っていいかダメかって……心を整理して答えたいな……って思うんだ。」


いつも気が抜けてる幼馴染と思っていたが

彼女は恋に対して誠実に考えていたのがわかった。

こんな舐めた質問をした自分が恥ずかしくなるのと

同時に新たな疑問が思い浮かぶ。


恋に真剣な七海に好きな人はいるのだろうか

片想いの相手なのか既にフラれたりしてるのか

後者はないだろうと自問自答する。

あれだけ有名な子の失恋なんて起きれば

すぐ学校中に噂が広がるだろう。


好きな人いるのか等と直接聞く勇気俺にはなかった。

聞いた瞬間に今までの関係は

終わってしまうかもしれない。


自分以外の男を愛する七海なんて見たくない知りたくない安いプライドや独占欲が邪魔をする。

何も聞かないのが一番だ。

心の弱い俺は無理矢理納得させて

今の関係をいつまでも続けようと決める。


だが俺の心を乱す問題が消えることはなかった。

「俺と付き合ってくれ!早川!」


昼休みの喧しい教室にも響き渡る高い声に

クラス中の生徒が視線を向ける。

告白の相手は七海とよく遊ぶ男女グループの

リーダー的存在の男の谷口だった。


女子からモテモテで運動できる陽キャの

人生勝ち組のイケメンをそのまま具現化した様な存在。

普段は七海達とゲラゲラ笑ってお気楽そうなのに

今は強ばった表情をして七海を見つめている。


見知った仲間からの告白に七海も動揺していた。

「もっと早川と仲を深めたいんだ異性として」

「谷口くん………えっ、えっと………」

「返事はいつも通り明日でいいから」

「あっ、あああの」

「じゃあ……断っても別に怒ったりしないから」

呂律が回さない七海にお構い無しに

話を続けてまとめる谷口。


教室内で堂々とした男の告白に

教室内は更に盛り上がり喧騒が響き渡る。

今までの告白してきた地味な男子とは違う。

学校中で人気のイケメンの谷口と

アイドル的な存在の七海の二人は

誰が見てもお似合いの美男美女のカップルだった。


「お前も早川好きだったのかよ」

「あーそうだよ!悪いか!」

「いやいや大胆な告白だったからねー」

ヒューヒューと

谷口に対してたくさんの男が野次を飛ばし

七海が返事をしたわけでもないのに

教室内ではカップル成立の様な空気すらあった。


七海と谷口の話で教室は放課後まで大盛上がりだ。

俺にとっては最低最悪の日だった。


全ての授業が終わり一人で帰路を力なく歩いていく。

余命宣言、明日地球が滅ぶニュースを聞かされた最悪の気分だった。


七海は谷口をどう思っているのかわからない

だが明日から彼女の友達グループの人間関係は大きく

変わりだすだろう、最初は無関心でもその内

異性として好意を持ってもおかしくない。

俺より何倍何十倍も優れている男なんだから。


帰宅して何か目的があるわけでもなくスマホを弄り

ながらベッドで寝転ぶ。

明日明日明日………明日で終わる

七海のことしか頭に入らない。


明日には谷口の彼女になってるのかもしれない

自分と縁は途切れるかもしれない

俺もその前に何かを伝えたかった。

後から後悔はしたくなかった

スマホの電話帳を開き電話をかける。

通話相手はもちろん七海だ

ちょっとだけ外で話したいとだけ伝える。





彼女の家の前に着いた。

落ち着かないのか足踏みを続けている。

玄関の扉が開き七海がでてくる。

あまり元気がなさそうに見えた

「どうしたの……?ケン君?」

「七海は……谷口のこと好きなの?」


迷いなく聞いた。

俺が臆しても彼女の気持ち

結果は変わらないのだから。


「それは……わからないよ、今付き合いたい人なのか

ずっと考えてるから」

無難な答えで流される。

だが俺は続けて新たな質問を投げる。


「七海は………ずっと前から……好きな人はいるの?」

ずっと知りたかった知りたくなかった問い

俺の質問に対して彼女はすぐ口を開かなかった。



まるで時が止まったかの様な長い静寂の中

彼女の口が動き出した。

「うん、ずっと前から好きな人が………います」

「そうか………」


震えた声で答えてくれた。

その好きな相手は誰か深追いはしなかった。

答えを聞く前に自分から伝えたいことがあったから

大きく息を吸い吐き出す行為を何回も繰り返した後

彼女と目と目が合い伝える。


「俺はずっとずっとずっと!七海のことが好きでした!!!」

「ふえっ!???」

突然の話に驚いた彼女を置いて俺は話を続けた。


「中学の頃から好きだった!けど根暗な俺と一緒じゃ迷惑って勝手に決めつけて距離を取ってた」

「本当は毎日遊びたかった!一緒に学校まで登校したかった!俺とだけ話しててほしかった!」

「谷口なんかより俺を選んでほしいと思ってる!」

「えええ……えっと……えっと」


俺も七海も顔中真っ赤だ。

言いたいことは言い切った。

だが……

「ごごご、ごめんなさい!!!」


七海は慌てて玄関の扉を閉めて逃げ出してしまった。

「………あれ?」

これはどう受けとればいいのだろう。

何がごめんなさいなのか

俺と付き合えないのか

気持ちを整理させてほしいという意味か

彼女の答えは全くわからないまま

月が沈んで日が昇るまで考え続けていた。




「眠い……」

一睡もできなかった。

学校に行きたくない

彼女と顔を合わせるのが怖かった。

だが両親は俺の我儘を受け入れず

身支度を整えられ強制的に家から追い出されてしまう。

「はあ、どこかで時間潰そうかな……」


ぶつぶつ独り言を呟きながら頭を上げると

家の前に人がいることに気づく。

「お、おはよう」

「………おはよう」

珍しく早起きしていた七海が待っていた。

いや目のクマから彼女も寝れなかったのだろう。


朝の挨拶を終えるとお互い無言になる。

昨日の話が気まずい。


「あっ!あの!」

「うん!!?」

「昨日の話だけど……」

「うん………」


昨日の答え合わせなのか。

心臓がバクバクして呼吸が乱れて

今日が俺の命日なのかってくらい緊張してる。


「好きな人がいるって話……」

無言で彼女の話を聞き入る。


「ずっと前から好きだったし毎日遊んでいたけど………中学くらいからあまり遊んでくれなくなって……

俺と関わらない方がいいまで言われてさ」

「………」

どこかで聞いた様な話だ。


「嫌われてるのかなって思うと怖くて

告白する勇気がでなくてね、今も嫌々友達関係

してくれてるのか不安で声もかけにくて………」


なんだか聞いてて恥ずかしくなってきた。

昔の自分を殴りたくなる。


「えっと……それで……」

「いや、もういいよ」


涙目で告白する幼馴染を抱き締める。

「ひゃっ!!」

「本当にごめん……ずっと言い訳して逃げてた」


「そ、そんなことないよ!」

「誰とでも仲良くなるお前についていけなくて

無神経なこと言って拒絶して傷つけてた」

「ケン君………」

「中学でも高校でも人気になっていく

お前を受け入れていればずっとずっと

楽しい時間を過ごせたのに……」


「それは大丈夫だよ」

七海は優しく抱きしめ返してくる。

「お互いの気持ちはちゃんとわかったし

これから毎日楽しくなるよ」

「うん………」


彼女は強い人間だ。

いつまでも落ち込んでないで

もう置いていかれない様に頑張らないと。


「あっ、学校そろそろ行かないと」

「ああ、そうだな」

俺が歩き始めると彼女は

袖を引っ張ってきて止められた。


「あの………手を繋いでほしいなって……私達両想いだからね………子供の頃みたいに」

茹で蛸の様に赤くなった彼女の手を俺は力強く掴む。


「小学生ぶりかな……」

「うん、すごく懐かしい」


心臓の鼓動を早めながら歩いていく俺達。

俺は深呼吸をして息を整えて口を開く。


「その…頼りないダメ人間だけど、これから

頼れる彼氏として頑張ろうと思う」

「うん、大好きだよ!ケン君」

「ああ、俺も大好きだ」



恥ずかしい告白を終えて

熱い空気で登校の途中大切な問題に気づく。

「あ!?」

「どうしたの?」


「どうすんだよ谷口の告白の件」

「え?そりゃあ断るけど……」

「昨日大胆な告白してフッて同じ日に俺と

付き合いましたーは当て付けみたいで

怒り狂うだろ!」


「大丈夫大丈夫!谷口君そんなことで怒ったりする

ほど器小さくないから」

「うっ!」

七海のフォローのはずの会話で俺の心が傷つく。

俺がフラれる男の立場だったら怒りまくって

嫉妬で狂ってそうだ……とは彼女に言えない。

これが陽キャの余裕という奴なのか。


「仮に谷口が許してもお前は人気者だから学校中に

反感買いそうだよな……地味な俺と付き合うとかって」

「それは大丈夫だよ!」

「なんだよその自信?」

「さっきケン君が言ってたから!

頼れる彼氏として頑張る!って!」


俺の彼女は今日一番の笑顔を向ける。


ああそうだ、約束は守らないとな

それに俺のことを強く信じる彼女がいることに

勇気が湧いてくる。

「うん、頑張る!」


こんな最高な彼女と付き合えるなんて毎日が幸せだ

と思いながら手を繋ぎ歩いていく。


この後大遅刻のイチャイチャ登校で

先生にはひどく怒られ一瞬で

校内一位の有名カップルになる未来は

俺達が知るよしもない。

お読み頂きありがとうございます!

高評価やブクマされると励みになります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 手遅れになる前に勇気を出してよかったね。 でも、見た目の釣り合いを気にするのはいただけないけどね。(だらしないとか、清潔感がないとかは論外だけど、インキャだからとかを気にするのは僕はあまり…
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