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働かなくてよい世界  作者: 水無月 黒


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運輸、交通

 食糧や衣服の生産ができたら、次はそれを各家庭に届ける必要があります。

 小売業はネットショップ的なシステムを導入すれば無人でもなんとかなると思うので、後は品物を各人へと送り届ける方法が必要になります。

 単純な方法としては、各都市毎に食糧、衣料、その他日用品の生産設備を設置する方法があります。各都市に配置することで災害等のリスクが分散され、近場にあることで歩いて取りに行くこともできます。

 しかし、いくら都市を過密にしてコンパクトとにまとめても、生産設備から遠い場所から歩いて取りに行くのは大変です。特にお年寄りや病人等には辛いものがあるでしょう。

 また、生産設備に何かあった場合、他の都市から物資を融通してもらう必要も出て来るでしょう。

 そのためには運輸システムも必要です。災害時にはボランティアが頑張る手もありますが、日常的な日用品の受け取りや、急激な需要の変動に柔軟に対応するために都市間での物資のやり取りなどもあるので、自動で運用できた方が良いでしょう。

 運輸システムは二種類に分けて考えるべきでしょう。一つは、都市内で各家庭に物を届けるためのもの。もう一つは、都市間で多量の物資をやり取りするためのものです。

 まず、都市内での物流は、各家庭に荷物を届ける宅配システムになります。

 今でも宅配サービスを行う業者は何社も存在し、それぞれ工夫して自動化も進んでいますが、これを一気に無人化までもっていきます。

 物流センターなどでの仕分け作業などは既にかなり自動で行っているはずですが、最後に各家庭に届ける部分だけは人手に頼っているのが現状です。

 ドローンを使用して各家庭に届ける研究も行われていますが、ドローンで空から運ぶ場合何らかの事故や故障で墜落する危険を排除しきれないでしょう。完全に無人の場合、そうした事故への対応が難しくなります。

 そこで考えているのが、各家庭への宅配システムを都市のインフラとして最初から組み込んでしまうことです。

 各家まで電気や水道を引くのと同様に、荷物が配送される経路を最初から作っておきます。貨物専用の地下道等を作っておけばトラブルも少ないでしょうし、何かあった時の対処もやりやすいはずです。

 これに伴い、個人宛に一度に送ることのできる荷物の大きさと重さの上限を限定してしまいます。

 荷物は共通規格のコンテナに入れて送り、使用したコンテナは回収して再利用します。これで部屋の中が使用済み段ボール箱で一杯になることはありません。コンテナ自体に工夫をしておけば、梱包材なども不要にできるかもしれません。

 私の想定する「働かなくてよい世界」では、部屋の中を物で溢れ返らせることのない生活を目指したいと思っています。

 今の世の中は大量生産大量消費の経済から脱却することができず、無駄な消費を強いる圧力が強いです。断捨離という言葉も広まりましたが、最初から必要な物だけを購入するようにした方が良いのです。

 そこで、大型の家具家電の類は住居の側に組み込んでおき、その他の日用品はすべてコンテナで運べる範囲内でどうにかするという生活を考えています。それでどうにかならないものを持ち込みたい場合は、自力で頑張って運び込むか、高くてもお金を払って請け負ってくれる業者を探して頼むことになります。

 備え付けの家具家電が壊れた場合の対策は必要ですが、多少の趣味などがあっても普通に生活していれば、それほど大きなものや大量のものを買い込む必要は無い暮らしを標準にしたいのです。

 流行に踊らされて毎年着ることもない衣服を買い込んでクローゼットに納まりきらないとか、安売りしているとついついいらないものまで買い込んでしまうみたいなことが無くなれば、物の少ない生活も実現しやすいと思うのですが、いかがでしょうか。

 古くなった建物からは強制的に追い出して新しい住居に引っ越しさせるという「住」の提供の考え方も、あまりものを持たない生活を前提に考えています。

 身一つで生きていける世の中と、そのような生活に合わせて最低限の物流というのが理想です。


 さて、各家庭への配送の次は、都市間での物資の運送になります。

 その都市で消費するものは全てその地で生産する地産地消ができればそれはそれで効率がよいのですが、輸送手段が全くないのも何かあった時に困るでしょう。

 家庭への宅配と異なる点は、多量の物資を長距離輸送する点になります。

 輸送する荷物はやはりコンテナに詰めて送ることになります。宅配用のコンテナが複数個きっちり詰め込めるコンテナの規格を作ると良いでしょう。効率よく詰め込むには中身だけを大きなコンテナに詰め込んだ方が有利なのですが、処理を自動化するには、コンテナの中身もコンテナにしておいた方がやりやすいはずです。

 現在の技術で利用可能な運送手段は、陸路、海路(水路)、空路の三種類になります。都市を作る場所に応じてこれらを使い分けます。

 まず、陸路としては、自動車と鉄道がありますが、本命は鉄道でしょう。自動運転車の技術も研究開発されていますが、自動運転ならば鉄道の方が楽です。

 線路は近隣の都市との間を繋ぐだけで良いでしょう。何かあった時に物資を融通し合うのならばそれで十分ですし、より遠くまで運ぶ場合は都市から都市へと中継して行けばよいのです。

 二つの都市間を往復するだけの鉄道なら制御も簡単になります。過酷な競争社会でなくなれば日本全国その日のうちに送り届けなければならないと言った必要性は減り、これで十分ではないか思っています。

 一方、自動車つまりトラック等による搬送は、鉄道に比べて経路が自由に選べ、搬出場所や輸送先を細かく指定できるところにメリットがあります。

 しかし、自動車による搬送は、働かない人にも提供する完全無人のサービスに組み込む必要はあまりないと見ています。

 同じ陸路ならば鉄道の方が自動化も楽だしエネルギー効率も良いです。営利目的ならば、需要が少なければ鉄道敷設のコストよりも自動車の運用コストを選ぶ場合もありますが、都市を維持するインフラとして長く使うつもりならば鉄道にしておいた方が有利でしょう。

 都市内の宅配システムを使用せずに、建物から建物へ直接輸送したり、鉄道が直通していない都市間を素早く輸送するといった便利な利用法は業者が仕事として行えばよいと思います。

 災害などで鉄道が使えない場合や緊急時に急ぎで搬送する必要がある場合などは、ボランティアや業者による人手での作業になると思います。

 トラックが通れる道路を通せる場所に鉄道のレールを敷設できないことはないと思うので、自動車輸送は人手で行うものと考えています。

 次に、海路・水路ですが、海上都市、離島、沿岸部の都市などで主力となり、河川に近い都市でも利用可能な運送手段になります。

 ある程度航路を定め、GPSや港近くでは電波による誘導など行えば自動車よりも楽に自動航行ができるのではないかと思います。

 ただ、気象状況や浅瀬での座礁、海流や漂流物など陸路よりも事故の起こる可能性は高いです。海難事故もある程度織り込んで運用すべきでしょう。

 また、航路や港に船が集中すると衝突事故の危険が高まります。自動操縦だけで回避するには限界があると思うので、なるべく近い場所に船が集まらないように運用するべきでしょう。

 働かなくてよい世界のためのシステムとしては、なるべく都市間や国間での物資のやり取りは減らし、都市内で地産地消すべきだと考えています。なので船便の運行も最低限にしたいと思います。巨大なタンカーで石油を輸入しなければ成り立たない社会からは脱却したいのです。

 最後に、空路になりますが、飛行機は対象外と考えています。離着陸を無人で行うことは不安があるということが一つ。それから石油由来の燃料を使用するのは完全に無人のシステムには向きません。

 電動で離着陸が比較的簡単なものとなると、eVTOLあたりが候補になりますが、ドローンを大きくしたようなものなので、航続距離か積載能力に不安があります。宅配業務ならばともかく、都市間での運送には向かないでしょう。

 飛行機に関しては、使うとしても緊急に必要な医薬品などの搬送などに限り、日常的な運送には使われないと考えています。

 空路に関しては、飛行船の方が有望だと思っています。座礁しやすくて船が近付きにくい離島などでは有効でしょう。


 貨物の搬送の次は、人の輸送について考えます。

 もっとも、働かなくてよい世界では大量の人の移動の必要性はないと考えています。

 働かない人は毎日出勤する必要がありません。働く人でもデスクワークだけならテレワークにすれば自宅で働けます。毎朝の通勤ラッシュは積極的に無くすべきでしょう。

 物で溢れ返さない生活を目指していることと、宅配システムを完備することで、車で量販店等に買い出しに行って大量の荷物を持ち帰る必要もなくなるはずです。

 過密都市を考えている理由の一つに、生活に必要なものを一箇所にまとめてしまおうという意図があります。

 都市内ならば、元気で健康な人は徒歩か自転車で移動、お年寄や体の弱い人など向けには補助的に自動運転の電動車椅子的な乗り物があればよいと思います。

 自動車は都市内では救急車などの緊急車両や公共の自動車に制限し、都市の大きさによっては電車やバスなどの公共交通機関を用意する、といった感じで良いかと考えています。

 都市間の交通については、貨物と同じような扱いで良いかと思います。近隣の都市までの移動手段だけ用意しておき、都市から都市へと移動して目的地まで行くことができるようにする。また、日帰りできない場合は、各都市でゲストルーム的な部屋を借りられるようにしておけばよいでしょう。

 働いていない人でも、たまには観光で旅行に出かけたり、他の都市に親類や友人がいて会いに行くこともあるでしょう。しかし、一日で日本全国どこにでも日帰り旅行ができるとか、毎日何十万人もの人を運ぶような運送能力は必要なくなると思うのです。

 今の電車の利用は通勤が大きな割合を占めているだろうし、仕事関係以外での交通機関の混雑は連休時に集中しているでしょう。

 無駄な消費と余計な仕事を削ぎ落す方針なので、わざわざ毎日遠くまで通勤する人が大勢存在するという前提がなければそこまでの輸送量を確保する必要がありません。観光や行楽目的の旅行にしても、長時間労働が前提の社会でなくなれば、全国共通の連休に集中することもないでしょう。

 短時間に広い範囲を行き来するような仕事をしたいのならば、自前で移動手段を確保するか、そういう需要に対応した高速移動のサービスを行うような事業者を探して頼ることになります。

 仕事としてバスやタクシー、鉄道会社等を運営するというのはありだと思います。交通安全の観点から何らかの規制は入ると思いますが。

 ただし、今のような大型の飛行機を飛ばす航空会社は存続が難しいかもしれません。

 飛行機を安全に飛ばすにはかなり手間がかかります。パイロットが頑張るだけでは駄目で、一回飛ぶ毎に点検して整備しなくてはなりません。離着陸時には管制がしっかりと周囲の安全確認して指示を出す必要があります。

 飛行場の業務を行うスタッフが各空港できっちり仕事をしなければ飛行機は飛ばせません。

 働かなくてよい世界では給料を出すだけで人が集まるとは限りません。航空業界を支えたいという人が十分な数存在し続けるか、自動化できないと存続は難しいでしょう。


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