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クソ異世界にラリアット  作者: 狂兵
労働とプロレス
57/60

54話.労働とプロレス Part3

 先程のカウンターで決まったドロップキックも相当なダメージだった筈だが、それでもバーナードは再び起き上がって来た。


「…もうやめとけって」

「嫌っす!!!」


 まじ、何なんだよコイツは。


「……先輩はっ……何でっ……どうしてっ…」


 バーナードはプルプルと巨漢を震わせながら、


「…何で…リズさんにもっと優しくしねーんすか!!?」


 感情的に言葉を言い放ってきた。


 また、その話かよ。


「いや…だから、優しく言った結果があーなったんだろーが」

「そーじゃねーっすよ!!!」


 俺が言い終わる前に、バーナードが叫ぶ。


「…先輩は間違ってねーけど、でも…自分の事ばっかっすよ!!リズさんの気持ち…考えた事あるんすか!!?」


 は?俺が自分の事ばっかり?


 それにリズの気持ち?


 何だよそれ、


 何で今その話が出て来るんだよ。


 俺が何かアイツにしたって言うのか?


「リズさんずっっっっと、寂しい思いしてるんすよぉおおおお!!!」


 バーナードの言葉で一瞬思考を巡らせていた事により生まれた隙をつかれ、俺はバーナードに掴まれる。


「そのリズさんの気持ち、ちょっとは考えてやって下さいよぉおおおおお!!!」


 そしてそのまま右脇で頭を挟まれ固定され、


「しまっ!?」


 俺の右腕を肩に担ぐように、腰と同時に持ち上げられ、俺の身体は逆さまな状態で空高く持ち上げられる。


「おおっとぉ!!コレはまさかのぉおおお!!バーナードの大逆転技!!バーナードブレーンバスターだぁあああ!!」


 だから、自分の名前を付ける痛いヤツな!!それ!!


 心の中でツッコミを入れてる間に、


 バーナードはそのまま背後に倒れ込むように、


 しかも俺の首から地面に落ちるようなエグイ角度でブレーンバスターを放ってきた。


「垂直落下式かよっ!!?」


 ――ゴンッ!!!


 鈍い音がマット上に響き、


 完全にバーナードからの強烈な反撃を貰ってしまった。

 

 現代でコレを食らっていたら確実にやばかっただろう。

 

 しかし、ここは流石の異世界。


 レベルに比例した身体能力により、先程の攻撃を食らっても身体は全然大丈夫だった。


 しかし、さっきのバーナードの言葉が頭に引っ掛かり、俺はそのままで動けないでいた。


 リズがずっと寂しがっている?


 アイツの気持ちを考えろ?


 だいたい、今のアイツはカンナという友達が出来て、この地域の奴等にもアイドル扱いされてて、寂しい訳ないだろーが。


「先輩は本当に馬鹿っすよ!!」


 バーナードは馬乗りの状態になり、


 大振りで肘を俺の顔面に打ち付けて、エルボーを放ってくる。


 ――ガン!!


「先輩は何にも分かってないっすよぉお!!」

「くっ!?」


 感情を爆発させたバーナードは、


「それに自分がリズさんの事好きって何すかぁ!?馬鹿にしてるんすかぁぁあ!!?」


 意味不明にブチギレながら連続で俺の顔面に馬乗りでエルボーを放ってくる。


 ――ガン!!ガン!!ガン!!ガン!!


「くっそが……ぐっ!?」


 勝手にヒスって勝手にブチギレて、


 まじで意味分かんねーんだよ。


「何で俺がっ……ここまで、意味分かんねー八つ当たりを受けないといけないんだよっ!!」


 上に乗っかるバーナードの顎に、


 ――ゴッ!!


 俺は下からスマッシュ気味に拳を打ち付ける。


「ふぎゃっ!?」


 どんなに、鍛えてる奴でも関係ない、


 顎は全人間の急所の一つだ。


 更に俺とのレベルの差があり、


 かなりの大ダメージの手応えを感じた。


「逆に俺がアイツに!!」


 さっきの一撃で完全に怯んだバーナード、


 俺はその隙を逃さず上に乗っかってた巨漢から抜け出し、


「何したって言うんだよっ!!」


 リング上で膝を着いているバーナードの顔面に瞬時にドロップキックをぶちかました。


「ぐふぅ!?」


 真正面から直でドロップキックを食らったバーナードは、ドンッと重量感半端ない音を立てリングに倒れた。


「はぁ……はぁ……」


 流石にもうこれで奴も起き上がれないだろう。


「おい……もう、これで終わりでいいだろ?」


 リング上で大の字で倒れるバーナードに語り掛ける、


「………ま、まだっす……まだっすよ……」


 しかし、彼は巨漢をプルプルと震わせながらも必死に起き上がろうとしてくる。


「…だから……もうやめとけって」

「…嫌っすよぉおおおお!!!」


 完全に立ち上がったバーナードだったが、


 もう立っている事もやっとで膝がガクガクと震えており、両手でその膝の震えを止めようと抑えている。


 どちらにせよ、もう戦える状態ではなかった。


「……自分に任せて下さいって……言ったんすよ……」

「は?」


 何の話だ?


「……まだ、諦めたくねぇっす…」


 ガクガクと震える両膝を必死に抑えながらも、一歩、また一歩と距離を縮めてくるバーナード。


「…先輩っ!!」


 ――パシッ!!


 フラフラの状態にも関わらず、バーナードは俺の胸元に逆水平チョップを放つ。


 しかし、ボロボロの状態での攻撃だからか、もう本当に痛くも痒くもない攻撃だった。


「…何で分かってあげてやんないんすかぁ!?」

「だから…分かってやるって何をだよ!?」


 ――バシッ!!


 逆にバーナードに向かいチョップを放つ。


「うがっ!?」


 バーナードは俺の攻撃で悲痛な呻き声を漏らしながらも、


「…リ、リズさんのっ!!」


 必死に痛みに耐え、


「リズさんの気持ちっすよ!!!」


 ――パシッ!!


 再び、負けずに逆水平チョップを放ってくる。


 だからさっきからまじで意味分かんねーんだよ、


 分かってやれだの、優しくしてやれだの、アイツの気持ちだの。


「…リズさんはですねぇ!?先輩に優しくして欲しいんすよ!?」


 ――パシッ!!


 連続でチョップを放ってくるバーナードの瞳からは大粒の涙が溢れてきていた。


「…先輩は特別なんすよぉ!!あの客達も、カンナさんでもダメなんです!!先輩じゃないとダメなんですって!!最近の先輩はずっと冷たいんだって、寂しいってリズさん凄く辛そうにしてんのに、何で分かってやんないんすかぁ!!?」


 ――パシッ!!


 何度目からチョップを放ったバーナードはもう身体が限界なのか、両膝に手を付き息を荒げた。


「ぜぇぜぇ……先輩がっ…仕事に真面目なのは理解してますっ…そんな先輩の事尊敬してますっ……でも……でも、いくら正しい事言ってても…リズさんにあんな言い方で冷たくあしらう先輩は…好きじゃないっす…腹立ちます……リズさんの事…もっと大事にして欲しいっす…」


 何とも一方的な言葉で、


 それにまるで、アイツが俺の事好きみたいな言い方だった。


 そもそもアイツはクロードの事が好きで、


 もう吹っ切れそうにはなってるのかもしれねーけど、


 少なくとも俺の事が好きな訳ではない。


「ぜぇぜぇ……まだ、分からないんすかぁ?………リズさんは……先輩の事が好きなんすよ」


 いや、だからそれは違うだろ。


「…悪いが、それはお前の勝手な勘違いだ」

「勘違いじゃねーっすよ!!!」


 大声で怒鳴るバーナード、


 完全に目がマジだった。


「だいたいアイツは…」


 そこまで言い掛けて、俺はある事に気が付いてしまった。


『カトーさん、なんかお父さんみたい』


 そして俺に甘えてくるリズの姿が頭に過った。


「…アイツは………」


 もしかしたらだが、


 もしかしたらアイツは、


 俺に父性を求めているのかも知れない――。


 今までアイツの俺に対するお父さんに似てる発言をスルーしてきていたが、


 そもそもアイツの発言を色々と考えてみると、


 リズは完全にファザコンなのだろうと言う事が分かる。


 確かに今まで子供が父親に求めるような愛情をリズから感じる事が多かった、


 先日の一件でそれが更に強まった気もする。


「……先輩が突然倒れて……暫く目を覚さなかった時も……凄く取り乱して心配してたって聞きました……それにリズさん…色々と怖い目にあったばっかじゃないっすか…まだ…」


 言われてみれば、確かに…あの日から仕事ばっかでリズとゆっくり絡む機会も無かった気もする。


「…まだ、心の傷が塞がってないんすよ……先輩に優しくして欲しいんすよ……」


 肩で呼吸しながらも、ポロポロと大粒の涙を流すバーナードの言葉が今度は自然に胸に響いてくる。


「………そう、なのかもな……」


 リズは21年間生きてきているようだが、


 実際の肉体年齢はもっと若く幼い、


 それだけじゃなく、精神面だって俺が思っている以上にアイツはガキなんだ。


 そう思うと、確かに子供相手に正論振りがさしてキレるのもどうかしていたのかも知れない。


 それに今のアイツにはもっと大人の対応をするべきだったのかも知れない。


『良平はいつもそう。あなたが言ってる事が正しいのは分かってる、でも人は正しさだけじゃやっていけないのよ!少なくとも私はそうなの!!』


 今頃、クソどうでもいい元カノにヒスられながら言われた言葉を思い出してしまい、


 俺は自傷気味に笑う。


 当時好きだった彼女の為に、正しくあろうとした結果俺はそんな事をヒスられて言われた、


 正しく、誠実であって欲しいと俺に言っていた彼女本人にだ。


 結局人はいつだって身勝手で、


 その時の気分で言う事だって心理状態で変わる。


 それに、今だからこそ分かるが、


 あの時元カノに言われた言葉は、


 『大人になりきれない私を分かってよ』と言う訴えでもあったんだ。


 俺はあの時、俺にだけ大人になるように押し付けてきて、自分は子供のままでいようとする彼女に対して大人の対応ができなかった。


 ただ、それだけの事だったんだ。


 場外で観戦しているリズに視線を向ける。


 アイツは大好きな父親に先立たれてから、


 ずっと一人だったと、寂しかったと語っていた。


 地下オークションの時、


 あの気持ち悪い貴族達に売り飛ばされそうになった時も、


 アイツは父親に必死に助けを求めていた、


 今は亡き父親に、だ。


 俺と目が合うと相変わらずな様子でリズは目を逸らす。


 本当にいじけた子供そのもので、


 でも、何かその様子が凄くおかしく思えて、


「まじで…どんだけガキなんだよアイツは…」


 俺は自然と笑みを浮かべてしまっていた。


 今ならバーナードに自分の事ばっかだと言われたのも少しは納得が出来る、


 金が無くて、借金を背負った事で、


 最近の俺は心に余裕を無くしてしまっていたんだ。


「……確かに、少しアイツと接する時間が少なかったかも知れないな…」


 リズが俺に求めているのは、


 父親のような無性の愛なのだろう。


 これが同情なのか、仲間としての絆からくるものなのか分からない、


 しかし、リズがそのような感情を俺に求めてきているのなら、俺に出来る範囲内で応えてやりたいとも思えた。


「……俺も、そろそろ大人にならねーとな」


 バーナードは色々と勘違いはしていたものの、


 リズが俺に求めている気持ちには気付いていたんだ。


 その上で、彼女の気持ちを察して、


 必死になって俺に訴え掛けてきていたんだ。


「…悪かった。お前の言う事にも一理あったよ」


 礼を言おうと、再びバーナードに視線を戻すと、


 彼はいつの間にか力尽きており、リング上で完全にぶっ倒れていた。


「バーナード完全にダウン!!!勝者!!!挑戦者カトー!!!」

「うおー!!!兄ちゃんすげーぜぇ!!!」

「きゃー!!カトー様ぁ!!!素敵よぉ!!!」


 大歓声の声援の中、こうしてバーナードとのプロレスの幕が下りたのだった。

プロレス用語技解説。(興味ない人はスルーして下さい)


【ブレーンバスター】

頭が真下になるよう垂直に相手を持ち上げ、

そのまま後ろに倒れ込むように相手の背中を地面に叩き付ける技。


因みに、今回バーナードが使った技は垂直落下式ブレーンバスターと言って、背中から地面に落とすのではなく、頭から地面に落とすといった危険な技になっている。


【スマッシュ】

プロレスではなく、ボクシングの技の一つ。

フックとアッパーの中間の角度で打つパンチの事をスマッシュと呼ぶ。


プロレスでは基本グーパンチは反則になるのだが、それでもバリバリ使うレスラーも多い。

他種目格闘技の技をミクスチャーに使用するのもプロレスの面白みの一つでもある。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

【55話.酒盛り】 明日深夜00:00更新。

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