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クソ異世界にラリアット  作者: 狂兵
大商人 編
46/60

44話.夢から覚めたら

「本当は僕のはずだったのに」


 耳元で弟の声が聞こえた、


 そして、その声と同時に突然俺は首を絞められる。


 ――苦しい。


 息ができない、


 弟は羨ましそうに、


 妬ましそうな瞳を俺に向け、


 俺の首を締める両手にグイグイと力を入れてくる。


「変わってよ兄さん」


 変わってよって何がだよ。


 最初弟が言ってる意味が分からなかった。


「ねぇ、変わってよ兄さん」


 次第にその声が大きくなり、


「ねぇ、ずるいよ兄さんばっかりさ!!!」


 弟が何を言いたいのか、


 何を変わって欲しいって言っているのか分かった。


 ――異世界だ。


 俺がこの世界に転移者として来た事を言っているんだ。


「本当は僕だったんだよぉおおおおお」


 完全に殺意を込めて俺の首を絞めて来る弟はヒステリックを起こし、今にも泣きそうな顔をしていた。


 ――あぁ、そうだったな。


 お前はずっとこっちの世界に来たがってたもんな、


 お前にとっての異世界は、


 唯一のお前の居心地の良かった場所なんだったよな。


 俺も変われるなら、


 今すぐにでも、お前と変わってやりたいよ。


「兄さんばっかりずるいよ…」


 ごめんな、


「ずるいよ兄さん…」


 ごめんな、天史(たかし)



 ◇



 何とも後味の悪い夢を見た。

 

「ぜぇ……はぁはぁ……げほっ…げほっ…」


 突然、息苦しさで目が覚める、


 どうやら俺は眠りながら無呼吸を起こしていたようだ。


 周りを見渡すと知らない部屋。


 ここは何処なのだろう?


 俺はベッドから起き上がりミシッと軋む床を歩く、


 部屋の外へと繋がっているであろう扉を開けると、そこはまた違う部屋に繋がっており、


 棚の上に置いてあったCDコンポから、突然リンキンパークのBleed It Outが大ボリュームで流れ始めた。


 懐かしい、


 リンキンパークも本当に大好きでこの曲だって擦り切れる程聴き込んだものだ。

 

「……んっ……んっ………あっ……」


 しかし、その音楽に紛れるように、


 男女の声にならない息づかいが聞こえ、


 気が付けば目の前にポツンとベッドが一つあり、


「……んっ……はぁ…はぁ……」


 そして、そのベッドの上では男と女が激しく愛し合っている最中だった。


 途中その女の方と目が合ってしまい、


 俺は絶句してしまう。


 何故なら、


 ――その女は元カノだったからだ。


 彼女は男と絡み合いながらも俺を直視し続ける、


「良平」


 そして、ボソリと俺の名を呟き、


「楽しそうじゃない…あんなに異世界の事馬鹿にしてたくせに」


 冷やかな笑みを浮かべた。


 男が、彼女の唇にキスをしていき、


 元カノはそれだけ呟くと再び男との行為に熱中していった。

 

 俺が、異世界を楽しんでる?


 何をふざけた事言ってんだ?


 そんな訳ないだろーが、


 俺だって元の世界に帰れるんならさっさと帰りたいわ。


「うわっ!?」


 突然目の前が真っ暗になり、


 何も見えなくなってしまった。

 

「カトーさん」


 背後からエイルの声が聞こえた、


 しかし、後ろを振り返っても誰もいない、


 何も見えない。


「……ボクにはっ……カトーさんしか…いないんだからぁ……」 


 背後から泣きじゃくってるリズの声が聞こえた、


 しかし、やっぱり後ろを振り返っても誰もいない、


 何も見えなかった。


「……早く起きてよぉ……カトーさん……」


 それでもまだ、リズの声が聞こえてくる。


 うるせーな、


 それに起きてよって、俺は起きてるって。


「……ねぇってばぁ…」


 再度背後から聞こえたリズの声に振り向く、


 そして、そこには暗闇の中ポツンとしゃがみ込んでいるリズの姿があった。


 やっと見つけた。


「…そんな所に居たのかよ」


 苦笑いを浮かべながら、


 俺は彼女の元まで歩く。


「………ほら、立てるか?」


 必死に涙を拭う彼女に手を差し伸べる、


「……あ……カトーさん…」


 彼女は潤んだ瞳で俺を見上げ、


「……もぉ、探したんだからね?」


 そして、すぐにいじけたように頬を膨らませた。


「…俺だって探してたんだよ」


「……そうなの…?」


 そんな俺の言葉に彼女はキョトンとした顔をする。


「……ほら、いいから立てって」


 再度彼女に手を差し出し、


「……うん」


 そこでようやく彼女は俺の手を握った。


「……えへへ、良かったぁ」


 彼女は俺に持ち上げられるように起き上がり、


「何がだよ?」


「…カトーさんの右手の体温…やっと普通に戻ったみたいだ」


 散々泣き腫らした瞼のままで、


 凄く嬉しそうにニッコリと微笑んだ。



 ◇



 突然、目が覚める、


 周りを見渡すと知らない部屋、


 それと、所々に脱ぎ捨てられた女性ものの服がある。


 ここは何処なのだろう?


 それに、凄く長い夢を見ていたような気がする。


 俺はベッドから起き上がりミシッと軋む床を歩く、


 そしてそのままドアを開け廊下に出る。


 どうやらここは二階のようで、


 一階から何か話し声がする。


「カトーさんもきっともう起きてくるはずよ。リズちゃん、先にエイルちゃんを呼んで来てもらってもいいかしら?」


 マルコの声だ、それに彼の口振りからするにエイルも無事だったようだ。


「……カンナ、一緒に行こう…?」


 その声がした階段をチラッと覗く、


 そこには、お互い泣きながらも何故か手を繋ぎあってるリズとあのカンナと呼ばれていた彼女の姿があった。


 良かった、取り敢えずみんな無事だったようだ。


「よぉ、何かもう元気そうじゃねーか」


 ニヤリと笑い、


 リズに向かい語り掛ける。


「……カトーさん…」


 まるで死人でも見たかのように、


 リズは俺の姿を見て驚いている。


「……おいおい、何だよその顔は?」


 苦笑いしながら俺は階段を降りていく、


 そしてリズ達の元まで近付き、


「てか、仲直りしたのか?」 


 二人で繋ぎあっている手を見ながら呟く。


 そもそも、俺はカンナって子の事は知らないが、


 あのコンテスト中のやり取りと、


 この子が俺の元までやって来て、


 リズを助けてくれと言ってきたあの感じで、


 二人の関係について何となく察しはついていた。


「………うん」


 俺の言葉にリズはコクリと頷き、


「…仲直りできた」


 そして少し照れ臭そうな顔で答えた。


「良かったな」


 正直リズに同性の友達ができるとは思ってもみなかった、


 そう考えるとこのカンナって子はもの凄く貴重な存在に違いなかった。


「お前は友達いねーんだから、大事にしろよ」


 いつもの感じでリズの頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でる、


「わ」


 しかし、何故かカンナが俺とリズのやり取りを見て頬を赤く染めていた。


「…分かってるよ」


 リズもいつもなら乱暴に頭を撫でられるのを嫌がるくせに、今回は抵抗せずにジッと上目遣いで見つめてくるだけだった。


「……カトーさんこそ、もう大丈夫なの?」


「あー、全然元気だ」


 しかし、正直途中から記憶が全くない、


 俺はいつの間にこの場所まで来たんだ?


「……昨日、途中でカトーさん倒れちゃって…それをカンナ達が助けてくれたんだよ?」


 まじか、やっぱそんな感じだったのか。


 俺はチラッと階段の途中から顔を出し、


 一階に居るマルコを見つめる、


「おはよ、カトーさん」


 彼は俺に気が付くと、ウインクと投げキッスを送ってきた。


 そんなマルコの行動に若干引きながらも、


「…助かったよ、ありがとうな」


 俺はカンナに向かい礼を言う。


「い、いえ……私はみんなを呼んできただけですから…」


 彼女は謙遜気味に両手をブンブン振りながら答える。


「カトーさんずっと起きないし……このまま起きないかもって…心配してたんだから」


 突然リズが横から抱き付いてくる、


「ちょ……おい」


 リズの奴、甘えん坊スキルが強化されてないか?


「今度は階段から落ちそうとか言うなよ?」


 軽く冗談でかわしながら、


 リズの身体を離す。


 すると、彼女はいじけたような顔で、


「………言わないもん」


 ボソリと一言呟いた。


「あっそ、ならいいけどよ」


 リズはそれでもまだ何か言いたそうに、ジッと俺を見つめている。


「何だよ?」

 

「……別に」


 何かありそうな顔してるくせに、


 さっきので機嫌を損ねてしまったのか、


 リズは完全にいじけたようだった。

 

「別にって、お前エリカ様かよ」

 

「意味分かんないし」


 現代人あるあるのノリも、


 やっぱりお気に召さないようだった。


「てか、さっきからすげー美味そうな匂いが…」


 一階から凄く良い匂いがしてくる。


 そんな俺に、カンナが笑いながら説明してくれた。


「せっかくだから、みんなでごちそう食べようってマルコが気合入れてご飯作ってくれたんです」


 俺はその匂いにつられるように一階に降りる、


「すげーな……まじで」


 テーブルの上にはいつの間にか、


 凄く美味しそうな料理の数々が並んでいた。


「うふん、愛情たっぷりよん」


 マルコは俺に向けて、


 両手で人差し指と親指を使いハートマークを作る。


「あ、悪いそれは求めてない」


 マルコの方すら見ずに、俺は彼のハートを軽く拒む。


「でも……まじで美味そうなだな」


 しかし、料理はどれも本当に美味しそうで、


 やはり改めてマルコがスペックの高いオネェだと思い知る。


 それに、彼には本当に助けられた。


「マルコ、その……色々ありがとな。まじで感謝してる」


 今度はちゃんと彼の方を向き、感謝の気持ちを言葉にする。


「う、嘘!?……カ、カトーさんが…デレた……デレたわ!?」


 そんな俺の態度に、何故かマルコは驚愕し、


「カンナ!!リズちゃん!!カトーさんがデレたわよ!!?」


 階段に居る二人を大声で呼ぶ、


「いや……デレてねーよ!!」


 そのマルコの呼び掛けにリズとカンナも一階まで降りて来て、


「あの、ツンツンしてるカトーさんが…初めてデレたところ見ちゃったから…ビックリしちゃったわよ…」


「……たまにデレるよ、カトーさん」


 オーバーリアクションで驚いているマルコに、


 リズがボソリと呟いた。


「いや……デレねーよ!!」


 そんなリズの発言にすかさずツッコミを入れるが、


「そうなのっ!?……カトーさん、やっぱたまにデレるのね!!?」


「うん」


「いや…うん、じゃねーよ!!盛るな!話を盛るな!!」


 コイツ等は全く人の話を聞いてなどいなかった。

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