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クソ異世界にラリアット  作者: 狂兵
大商人 編
35/60

33話.カウントダウン

 この世の憎悪をそのまま具現化したような巨大なキメラは、もはや人だった頃の原形すらとどめていなかった。

 

「………おっ…………おっ……おっおっおっおっ」


 さっきまで俺達が必死こいて戦っていたキメラを丸飲みしているソイツは、何とも気持ちの悪い音色で喉を鳴らしている。


「………クソが」


 さっきの奴でさえ倒せそうになるまでに時間が掛かっていたのに、


 更にこんな化け物が現れてしまってはとうとうコッチも奥の手を使わざるを得ない。


「…カトーさん…どうしましょう!?」


 青ざめた顔でエイルが尋ねてくる、


「…どうするって、倒すしかねーだろ」


「それは分かってますけど!?」


 エイルなりに神の腕を温存していた俺に気をつかっているのだろう。


「……カトーさん、何か手はあるの?」


「…あるっちゃあるんだが」


 ここで神の腕を使ったとして、


 アルフォードぐらいなら神の脚で倒せると思う、


 しかし、奴がまだ何かカードを隠している可能性だってある、


 そうなってくると、ここで神の腕を使うのはやはりまずい気もする。


「「「あうあうあうあうあうあうあう」」」


 今まで散々戦ってきたキメラ達が何千匹も合体したようなソイツには、


 頭部から背中にかけて大量の顔がついており、


 その顔達が一斉に口をパクパクさせ合唱のように不気味な鳴き声を奏でている。


「…ひっ!?」


 あまりの気持ちの悪さにエイルが顔を引きつらせたその時、


 突如鈴のような音色が聞こえ何者かが部屋に入って来た、


「皆様、ご機嫌如何?」


 フードにお面をかぶり全身黒尽くめな格好をしたそいつは、声からして明らかに女性なのだろうという事しか分からなかった。


「まだ駄目、まだ食べちゃ駄目だよ」


 お面をかぶるその女性は巨大キメラの身体を愛おしそうに撫で、優しく声をかけている、


「「「あうあうあうあぅ…」」」


 大量の顔達は彼女の一声で徐々に落ち着きを取り戻し大人しくなっていった。


 この光景で、キメラを簡単に手懐けている彼女が只者ではないという事は誰が見ても一目瞭然だった。


「お前、何者だよ?」


 彼女は俺の質問には答えず、


「アルフォード様が皆様に御挨拶したいそうです」


 少し大ぶりな水晶玉を取り出し俺達の前に差し出す。


「あ?」


 彼女の言ってる意味が分からず、


 尋ね返そうとしたタイミングで水晶玉にバッと映像が映り出す。


 水晶には、先程のオークション会場だろう場所が映されておりその中心にはハッキリとアルフォードも映っていた。


『いやいや、皆さんお揃いで』


 向こうからもコチラが見えているのだろうか?


 ニタニタ笑いながらコチラの様子を伺うアルフォード。


「……アルフォード!!」


 水晶に映る奴の姿を見た瞬間に全身から怒りが込み上げてくる。


『あはは、カトーさん恐いこわい〜!そんなに睨んじゃ恐いですって〜!』


 アルフォードはふざけた調子で両手を叩きながら笑っている、


「本性出したわね…外道が」


 マルコはそんなアルフォードを睨み、吐き捨てるように呟く。


『おやっ? やはりマルコさんも居るじゃないですか〜?』


 アルフォードはマルコをチラッと見た後、


『もー、カトーさん?そのオネェには気を付けろって私から言ったじゃないですか〜!忘れちゃったんですかぁ?』


 再び俺にふざけた口調で語り掛けてくる。


 アルフォードは本性を晒した上でも、


 まだあの頃の友人風な口調で絡んでくる、


 それに手振り、身振り、表情から奴が余裕なのも見て取れる、


 それがまた、俺の神経を逆撫でした。


『カトーさ〜ん?聞いてます〜?』


 それでも極力平然を保とうと怒りを堪えながら、


 俺はアルフォードの問い掛けを無視しコチラの要件を伝える。


「……リズを返してくれ。そしたら、もうお前をどうこうする気はない」


 一瞬自分の声じゃないかと思うくらい乾いた低い声が出た、


 俺はそのままアルフォードを見つめ続け、彼からの返答を待った。


『…私を、どうこうする気はない?』


 アルフォードは俺に対して一瞬何言ってんだ?的な顔をした後、


『っぷ、ふふ…ふふふ、あははははははははは!!』


 突然吹き出し大声で笑う、


 そして映像の向こうから俺を指差し、


「カトーさん?貴方今の自分の立場分かってますかぁ〜?そう言う台詞は、せめてそこを抜け出してから言って下さいよぉ?」


 アルフォードは完全に勝ち誇った表情でべらべら語る。


「それに、どれだけ雑魚キメラ相手に時間掛けてんですか〜?ず〜〜〜〜〜〜〜っとそちらの様子を観客の皆さんと一緒に観てましたけどほんっと退屈過ぎて、もうオークション始めちゃってますからねぇ?ねぇ、皆さん?」


 アルフォードは会場に居る観客に同意を求める、


 すると会場からは俺達を嘲笑するような笑い声が巻き起こった。


『あー、それから。 よいしょっと、ほらほらぁ?ちゃんと映ってますかねぇ?』


 アルフォードは水晶の位置をずらし、別の場所を映す、


 そこには、すやすやと眠るリズの姿があった、


 彼女は鎖で繋がれ、身動きも封じられているようだった。


『まだ薬で寝かせてますけど、もう少ししたら叩き起こしますからね〜?彼女はオークション最後の目玉商品なんですから』


 アルフォードは眠るリズの髪を撫でる、


『まだオークションの途中なんですけど、もう我慢出来ずにステージ上には連れてきたんです。すると会場の盛り上がり具合がも〜〜半端なくてですね?』


 そして、髪を掴みくんくんと匂いを嗅ぎ始めた。


『ん〜〜〜、コンテスト一位のダークハーフエルフちゃんは髪の毛も凄くいい匂いですぅぅぅ!!』


『『『おおおおおおおおおおお』』』


 観客側から興奮気味な歓声が上がる、


『そ、れ、に、皆さんは一番ここが楽しみなんじゃないですか?』


 アルフォードはリズのスカートをゆっくりと捲し上げていく、


 映像の向こうでは、どんどんリズの褐色の太腿があらわになり、


『『『おおおおおおおおおおおお!!!!』』』


 さっきよりも更に大きい歓喜の声が巻き起こっていた。


 アルフォードは慣れた口調でリズをプレゼンし出す、


『褐色肌のぶりっ子美少女、しかもダークハーフエルフを是非今宵貴方だけの奴隷に!!もちろん太腿の肉付きも丁度良くて触り心地も最高ですよ!?』


 そしてリズのスカートをどんどん捲し上げていき、


 ステージ上で彼女の下着があらわになる、


『『『おおおおおおおおおおおおおお!!!!』』』


 観客達の興奮具合は最高潮となっていた。


「……な、なんて事を…」


 本性を曝け出したアルフォードの行動に、


 顔面蒼白でドン引くエイル。


『カトーさん?早く来て下さいよ〜?じゃないとリズさんの番まですぐ回って来ちゃいますからね〜?』


 ケラケラと笑うアルファード、


 そこでもう俺は怒りを抑える事が出来なくなった。


「アルフォードォォォ!!!!」


 怒鳴る俺を見ながらもケラケラ笑う彼は、


『それでは、カウントダウンスタートです!!無事にカトーさん達はリズさんの番が回ってくるまでに会場まで辿り着けるでしょーーーーかっ!?』


 司会進行するような口調で観客に語り出す。


『…あー、でも皆様ご安心下さい?もしカトーさん達が会場に来たとしても大丈』


 ぷつんと、途中で水晶の映像が切れる。


「……クソがっ」


 俺の脳裏にはさっきのリズの姿が焼き付いていた、


 隙が多くて人懐っこくて、ビッチ臭半端ないくせして、


 実は全然そういうのに慣れていないガキなあいつが、


 もし目覚めてしまったら、あの状況を心底怖がり怯えてしまうのは目に見えていた。


 アルフォードにとってはこれも全て余興の一つに過ぎないのだろう、


 完全に胸クソ悪さで息が詰まりそうになる。


 リズの番が回ってくる前じゃない、


 あいつが目を覚ます前に会場まで辿り着きリズを助ける、


 そしてアルフォードをぶっ潰す。


 もう俺の思考はその事だけで埋め尽くされていた。


「お前等…」


 最後の奴の口振りからして、


 向こうはまだカードを残しているのだろう、


 しかし、もうなり振り構ってられない。


 右腕が段々と熱を発し、


 白い光の模様が浮かび上がる、


「…秒でここを突破するぞ」


 俺はスキル、神の腕を発動させた。

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