18話.いい歳こいて恋話で盛り上がってしまうとかまじでありえないのだが。
「野宿は嫌だ」
「だ、だ〜ですね? えっと、大好きだったのになです!」
「ほら〜?次カトーさんの番だよ?」
「……もうそろそろ寝よーぜ」
「何言ってんの!!夜はこれからじゃん!じゃじゃじゃじゃん!!」
「そうですよ? 結構異世界でやる、しりとりもいいものですよ?」
この世界で王都を除く三大都市の一つとも言われている大都市アトンを目指し平原をひたすら進む俺達は現在、嫌だ嫌だと喚き散らすリズを黙らせ連日の野宿をしている。
その件ですっかりご機嫌斜めのリズの気分を変えようと、空気を読んだエイルが『しりとり』の遊びを持ち掛けたのだった。
しかし、それが駄目だった、
しりとりにドハマりしたリズは、完全に遊びスイッチが入ってしまったのだった。
「もー!カトーさんってばー!!寝ないで!寝ないでよー!!」
横向けに寝転ぶ俺の肩をユサユサと揺さぶるリズ助、今日も構って攻撃が鬱陶しい。
「…な、あー……何かお前等本音駄々漏れだけど何のアピールだよ?」
「夜は素直になっちゃうものじゃんかよ!」
リズ助の中で最近流行りの例の劇画タッチ風なドヤ顔が炸裂する。
更にあの馬鹿は、開き直ってやがる。
「よ…夜は恋しくなっちゃうものですよ!」
それに便乗するようにドヤ顔でエイルも開き直ってくる。
「お前等まじでめんどくせーな」
『〜からの?』と言わんばかりに、二人が期待を込めた眼差しで俺を見つめてくる。
「…夜はそんなにぎゃーぎゃー騒ぐものじゃありません。 ほら?ん、付いたからもう寝るぞ」
「おー、カトーさん流石!」
何故かエイルにパチパチと拍手される。
全然凄くねーから、
それに『しりとり』って言葉口調駄目じゃなかったのか?
「えー、つまんないじゃーん。 もう一回やろーよ?」
今からいいところだったのにーと、駄々をこねるリズ助。
「うっせ。もう俺は寝るんだよ、本日のカトー商店は終了だ」
「あ、カトー商店…ふふふ」
エイルはツボに入ったらしく密かにクスクスと笑う。
初めてこんな低レベルなギャグで笑ってもらえたような気がする。
「あ、ならさ?ならさ? みんなで恋話でもしない?」
何が、ならさ?なのか意味が分からない、
それに夜更かしして恋話とか、何度も言うがまじで修学旅行中の中学生だから。
いい歳して恥ずかしいから。
「あ、良いですね!」
何が良いのか分からないが、何故かエイルも食い付いてきた。
お前はお前で最近傷が出来たばっかなんだからやめときゃいいのに。
「ねーねー、エイルはさ?あの領主の前に好きな人居なかったの?」
「あ〜、この世界に来る前に一人居ましたね。 告白して付き合う所までいけたのですが、実はその人彼氏がいまして…」
「…お前はそんなんばっかだな」
そのまま無視して寝ようと思っていたのだが、あまりにもツッコミどころ満載過ぎて思わず口を挟んでしまった。
「あはは…本当ですよ。なので僕、ちゃんと誰かとお付き合いした事まだなくて…」
普通にイメージ通りなカミングアウトだった。
「あ〜、分かる。エイルはそんな感じが滲み出てるよね〜」
「あはは…先日のもダメになっちゃいましたし…本当に、僕…一生彼女出来ないかも…」
「元気出してよ!生きてりゃ良い事あるある!!」
彼の背中をバシバシと叩きながら励ましの言葉をかけるリズ。
「そうだぞ?お前ならすぐに彼女の一人や二人くらい出来るって、なんせエイルは顔が良いからな?」
「…そ、そーなんですかね。はぁ…モテたいです」
切実なため息をつくエイル。
「つーか、お前はどうなんだよ?リズ助?」
「ほえ?」
「ほえ?じゃねーよ。お前上から目線でエイル励ましてるけど、実際どうなんだ?彼氏いたのか?」
「あ〜、あはは…ボクは…え〜っと…」
「そうか!クロードが元彼だったな?悪い悪い」
最近ハマってるクロードネタでリズ助をいじる。
「…だから、元彼じゃねーって言ってんだろ!!」
しかしあまりにくど過ぎたのか、リズ助はキレてしまった。
「おいおい、そんなムキになるなよ?逆に怪しいぜ、お前?」
「………」
「え? リズさんってクロードさんと付き合ってたんですか!?」
クロードと面識があるだけにエイルの反応はデカかった。
「……だから、付き合ってないって…」
「でも、何かあったんだろ?言ってみろよ、俺達仲間じゃねーか?」
「………」
「そうですよ! 僕もリズさんの力になりたいです」
自ら振った話題に首を絞められる羽目になったリズ、まさにブーメランとはこの事だ。
「…べ、別にそんな楽しい話じゃないし」
「それを含めての恋愛話じゃねーのかよ?なぁ、エイル?」
「そうですよ!僕の話なんて殆ど地雷的な悲惨な話ばっかですし!」
確かにエイルの場合は、地雷だが、
そもそも自分でそれを言ってしまったら、単なる自虐ネタである、
そうとは思わず言ってる感じがまさに天然って感じで、エイルらしい。
「お前が話をしたら次は俺もするからよ?それで三人おあいこだろ?」
「えー!カトーさんの話も聞きたいです!」
「……そ、そこまで言うなら」
「お!やっと話す気になったな?」
「…う、うん」
今から聞く話は、おそらくこの旅の根源だ。
リズ助がクロードに復讐を遂げるのを協力する上でも、俺は二人の間に何があったのか知っていた方がいい。
「カトーさんはもう知ってるから分かると思うんだけど、ボク、ダークハーフエルフだから…結構酷い目にあって生きてきたんだよね」
「え!?リ、リ、リズさんってダークハーフエルフなんですかっ!?」
エイルはお手本のようなリアクションを取り、驚きのあまりに声が裏返っている。
「あぁ、コイツはダークハーフエルフだ。エイルにもその内話さねーとって思ってたんだが」
「そ…そうなんですね。すみません、ちょっとビックリしちゃいました」
驚いたと言いながらも、彼がリズを見つめる視線は何一つ変わっていなかった。
エイルは他の奴等のように、彼女を差別するよう人間ではないと分かってはいたが、今ので改めてそう思った。
「それで?」
話を続けるよう促す。
「…それで、色々あって本当にやばい時にクロードが助けてくれて、俺達の仲間にならないか?って言ってくれたんだ」
「それで仲間になったと?」
「うん… その事があってから、まぁ…本当にちょろい奴だってカトーさんは馬鹿にするんだろうけど……クロードの事を好きになっちゃって」
「馬鹿になんてしねーよ」
前にリズから、転移者の事を好きになる事ってそんなに悪い事なのか?と尋ねられた事を思い出した。
辛い状況の自分を救ってくれた人は、転移者だろうが誰だろうが白馬の王子に見えるんだとも言っていた。
好感度といえばそれまでなのだろうが、リズがそこでクロードを好きになった事に対して小馬鹿にする気は一切なかった。
「クロードの事が好きだったのは分かった。お前がそんな経緯でウロボロスに加入したのもわかった。でも、何でお前はパーティーを追放されたんだ?」
「え?リズさん追放されてたんですか!?」
「リズはクロード達から裏切られ、パーティーを追放されてる。その時結構酷い目にあったらしくてよ? そもそもこの旅の目的はウロボロス達に復讐する事が目的なんだよ」
「そ…そうだったんですか…」
「…パーティー追放された理由は………ハッキリとは分からない。でも…ボクが何かやらかしちゃってクロードを怒らせちゃったのは確実なんだ…」
当時の事を思い出しているのか、リズは凄く暗い表情をしている。
「…だから、ボクが一方的に片思いしてただけって言うか…別にクロードと付き合ってた訳でもないんだ…」
「リズさん……クロードさんの事、本当に好きだったんですね……」
クロードと領主の例の件があるからか、エイルは少し複雑な表情をしている、それでも彼はリズがクロードを想う純粋な気持ちを肯定しようとしている風にも見えた。
「うん……好きだったから…やっぱりクロードの事……大好きだったから……」
「リズさん……」
「…酷いよっ………突然冷たくして……裏切るなんてっ………ボクの……ボクの何が駄目だったの!?……ちゃんと言ってくれたら…直したのにっ!!クロードの……クロードのバカ野郎!!!」
声を震わせ、泣き叫ぶリズ。
やっと素直な気持ちをあらわにする彼女を見て、
凄く微笑ましく思えた。
「なんだよリズ助」
妹や娘の成長を喜ぶ兄や父親ってこんな気持ちなのかも知れないな、とも思った。
「一丁前に、ちゃんと青春してんじゃねーか」
口角をニッと上げ、リズの頭をガシガシと撫でる。
「ちょ!も、もぉ!……子供扱いすんなよっ!!もぉぉ!!」
彼女は泣きながら俺の手を振り払おうとジタバタと暴れる。
「お前の望みは何で自分を捨てたのか、それをクロードに確認する事だろ?」
確信をつく俺の言葉にリズの身体はピタッと動きを止めた。
「………」
「ざまぁしてやる!とか言ってるけど、別にそんなんじゃねーじゃねーかよ」
「違うもん……ざまぁするもん」
「側から見たら八つ当たりだぜ?ただの」
「……どーゆーこと?」
真っ赤に腫れた目で、俺を見つめるリズ。
「だってそーだろ?クロードからしたら、勝手に好きになった奴が勝手に拗らせて挙句の果てに復讐してこようとしてんだぜ?周りの連中だってきっとこう言うぞ?ただの逆恨みだってな?」
「ちょ、ちょっと!カトーさん!何もそこまで言わなくても!」
「いや、事実だろ?」
「うっ!?」
俺のマジな表情に気付き、エイルは押し黙ってしまった。
「で、どうする?それでもお前はクロード達に復讐すんのかよ?」
「………」
「自分の感情だけで相手を攻撃するんだ。この選択を選べば、愛しのクロード様とは確実に結ばれる事はなくなるぜ?アイツにとってお前はどうでもいい奴から倒すべき敵になるんだからよ?」
敢えてキツイ言葉を投げ掛ける、
リズの覚悟を改めて確認する為だ。
正直やっぱり嫌だとか、
クロードと付き合えるように協力してほしいって言うんならそっちの協力をする覚悟でもあった、
俺はコイツの仲間だからだ。
しかし、何をするにしても旅の目的の中心人物が、自分が何をしたいのか分からずブレブレなままだと周りはいい迷惑になる。
だからもう一度、自分はどうしたいのか、
ちゃんとリズ自身に考えてもらわないといけなかった。
「ボクは……ボクは……」
泣きながら俺を真っ直ぐに見つめる彼女は、遂に答えを示した。
「ボクはクロード達にざまぁする……ざまぁしてやる!」
その答えに、俺は静かに笑った。
しかしそんな俺の態度が気に障ったらしく、リズはキレて声を荒げる。
「な、何?悪いの?勝手に好きになって勝手に恨んで逆恨みの復讐だから? でもさ?言わせてもらうけど、確かに勝手に好きになったのはボクだよ?何かやらかしたのかもしれないよ?でもさ?突然、ダンジョンの奥底でさ?ある日突然、パーティー追放する方もどうなの!? おかしいじゃん!やり方が汚いよ!! 別にカトーさんが協力してくれなくても、ボクはやっぱりアイツ等にざまぁするんだからっ!!」
俺とリズのやり取りをハラハラしながら見つめるエイル。
俺はそんなエイルに向かい、尋ねる。
「…だ、そうだけど?お前はどうする?クロード達と関係を悪化させたくなければ、途中までリズに同行する形でも大丈夫だぜ?」
「僕は…」
エイルは暫く考え込んだ後、決心したように呟いた。
「僕は…正直クロードさんの事がよくわかりません、良い人だとも思いますし…でも、正直何を考えてるのかわからない…が現状です。でも、リズさんとは数日の付き合いですが、それでも悪い人じゃない事はよくわかってます…何か言葉がうまくまとまってなくてごめんなさい、僕はリズさんの方が好きです、だから僕はリズさんに協力したいです」
エイルの決意は充分伝わったのだが、どうも途中から告白っぽくなってしまっていた事に吹き出してしまう。
「ちょ、お前さらっと口説いてねーか?」
俺の言葉にエイルは顔を真っ赤にして、否定の意味で両手をブンブン振る。
「ち、ち、違いますよっ!?人として好きって事ですよ!?クロードさんと比べるとリズさんの方が人として好きだなって思っての言葉ですからね!?」
「…ありがとうエイル。でもボクは異性として見るとエイルは嫌かな」
エイルの言葉により少し表情が晴れたリズがいつもの軽口で彼をいじる。
「え〜、ちょっとリズさん酷いです! あ、でもそうです!人としてだとどうですか?」
「人として? んー、普通かな?」
リズのその言葉でガックリと項垂れるエイル。
「エイルがその気なら、決まりだな」
「…カトーさんも、ボクに協力したくなかったら…別に…」
少し強く言いすぎたせいか、ネガティブな発言をするリズ。
本当に馬鹿な奴だ、
その為に俺を仲間に加えたんだろうが。
「は?馬鹿な事言ってんじゃねーよ。それに、今更だろ?」
「…みんなから嫌われてるダークハーフエルフの、みっともない復讐だよ?」
リズは卑屈な言葉を並べながらも、上目遣いで俺を見つめてくる。
その様子が可笑しくて、俺は笑いながら答えた。
「あぁ、そのみっともない復讐に付き合うつもりで今もずっとここにいるんだけどな?」
「………そっか」
一言呟き、目を逸らすリズ。
しかし淡白な言葉とは裏腹に、すっかり嬉しそうな表情になっているのを俺は見逃さなかった。
「何だよ、リズ助?俺の覚悟を舐めてたのか?」
「…ち、違うし。 カトーさんが…カトーさんが色々悪く言うからじゃん……」
「悪く言ったが、仲間をやめるなんて一言も言ってねーよ。 それに、お前について行かないとタバコ吸えねーからな?」
最後にニッと笑顔で答える。
「…結局はタバコかよ」
少し不貞腐れたように呟くリズ、
「あぁ、わりーかよ」
しかし、それはポーズだけで、
そんな互いのやり取りに、遂に彼女は吹き出し笑い出した。
◇
「いいか?付き合えたらそれでハッピーエンドじゃねーぞ?現実ってのはずっと続いて行くもんだ、例え好きだと思ってた恋人の嫌なところをどんどん見て気持ちが冷めてしまってもな?」
「好きな人の…」
「…嫌なところ」
俺の演説を体育座りしながら聞く二人。
現在、何故か年長者の俺が恋愛の授業をする形になっている、
事のきっかけはこうだ。
あの話の後に『どうやったら恋人ができるのか』とモテない若者二人組から切実に相談され、何故か授業的な感じになってしまい現在に至る。
「ボクは…好きな人の嫌な部分が見えても、やっぱり自分から嫌いになる事はないと思う」
暫く考え込んだ後にリズが呟く。
「僕も、そうかもです。僕からは絶対嫌いになったりしない自信ありますけど、でも他の人に気移りされたら…嫌ですよね…」
「…うん。それと、ボクから気持ちが冷める事はなくても、向こうに冷められたら、嫌われたらって思うと凄く怖いし…嫌だ…」
「そうだな。お前等が一途に想ってても必ず両思いでいられるとは限らない。コッチがずっと好きでいれても、向こうはどうか分からないんだ」
「なんか、恋愛に対する夢が壊れそうです…」
「うん、何か一途な人が報われないよね…」
しみじみと語る生徒達。
「人はいつだって自分の為に生きるもんだ。恋人を裏切る奴、恋人につくす奴、実はどっちも根本的な理由は一緒で、どっちも自分の為にやってる事なんだよ」
「え、すみません……恋人につくす人は自分の為にじゃないですよね?恋人につくしているんですから、相手の為にやってるんじゃないんですか?」
率直な意見をエイルが述べる。
「いや、俺から言わせると結局は自分の為だ」
前の恋人は物凄く束縛が強い子だった、
俺は極力その全てを守るように努力していたし、
それが彼女の為だと、
彼女に対する俺の気持ちを示せる場面だとも思っていた、
でも、結局はあの恋愛の結末は散々な結果だった。
あの当時俺は、散々な束縛しまくってたくせに、
自分は好きかってやってた元カノに対して物凄く怒りを覚えた、
そして、彼女に尽くしていた自分が物凄く惨めに思えたし、あの時間を返してくれとも思った、
でも、俺はある日気が付いてしまったんだ、
結局、ああやって彼女の為だと尽くしていたのは、
自分の為でもあったんだと。
親の借金を肩代わりして、俺の人生はめちゃくちゃだった、
それでも最初の頃彼女は『私は気にしない』と言ってくれた、
その優しさに甘える事がないように、
極力彼女が喜ぶ事を、
周りに嫌な目で見られようが彼女が喜んでくれるなら、
そんな事に全力を尽くしていた俺の心境は、
自分の自信の無さからくる感情だった。
彼女に嫌われたくないと、
心の何処かで思っていて、
結局、彼女の望がまま尽くしていた行為は、
そっくりそのまま、自分の為にやっていた事でもあったのだ。
だから、今の俺から当時の自分に言わせてもらえば、
彼女と付き合う事を選んだのも、
ボロボロになってでも彼女に尽くしたのも、
全部自分で選んで、自分で行動した事だろ?
それを…欲した結果が得られなかったからって、相手の事だけを責めるのもどうなんだ?
結局、元カノも俺も、最後までお互い、
自分の事ばっかだったじゃねーか、と。
「……よく、分からないです」
必死に考えた末に、やっぱり分からないと眉をひそめるエイル。
「うん、ボクもちょっと分からない…そもそも、カトーさんの話は難しいものが多いよ」
授業の進め方について生徒達からクレームが入ってしまい、俺は苦笑いを浮かべる。
「…悪い。でも、まー…お前等は少なくとも、相手を大事にしそうな奴等だとは思うぜ。だから、是非幸せを掴んでくれたまえ」
「…何か最後投げやりな感じで締めなかった?」
「いや、カトー先生なりの励ましの言葉ですよ!きっと!」
「いや、だってどうやったらボク達も恋人できるかって肝心な答えはもらってないよ…」
最もな意見を述べるリズを華麗にスルーして、俺は言葉を続ける。
「ははは、お前等に新しく好きな人ができたら是非俺が見定めてやろう。とくにエイルは、またニーナみたいな奴に引っかからないようにな」
「あ、ありがとうございます!!」
「それと、リズ助はアレだ。意外と純粋で乙女なのは分かったけど、アレはもうやめた方がいいぞ?」
「……アレって何だよ?」
「いや、お前隙が多すぎだから。まじでビッチにしか見えねーから」
「は!?だからビッチじゃねーし!!それに別に隙が多くなんてないよ!!」
「いやいや、多いだろ。あー、あとベタベタし過ぎだわ。アホな男は勘違いするからな?まじでアレはやめとけ」
「はぁ!?別にベタベタなんか……あ、あれはフレンドリーな感じで絡んでただけでそういう意味じゃないしっ!!」
あの、数々のビッチ臭半端ない絡みを『欧米では当たり前にハグしますよ?』的なフレンドリーと言う言葉で片付けられてしまった。
「それとも何?ま、まさか…カトーさん、アレで勘違いしちゃってたの!?」
変質者を見るような目で俺を見てくるリズ。
「んな訳ねーだろ!ボケが!!」
「ちょ!ボケって何だよ!ボケって!!」
「取り敢えずお前は良い男に出会いたいんなら、まずその軽そうな女に見られる事から直せ。悪いけど今のままだとマジでチャラい男しか寄ってこなくなるぞ?」
「……何だよ、偉そーに」
「あ?なら、クソみたいな男に引かかってボロ雑巾みたいになっても文句言うなよ?」
反抗的な態度のリズを一喝する、
「……す、すみませんでしたカトー先生」
その言葉でリズは一瞬で大人しくなった。
「んで、エイル。お前は、人を見る目がなさ過ぎる、以上だ」
「ぐはっ!?……凄く、刺さりました…カトー先生…」
オーバーに胸を痛がるフリをして膝をつくエイル。
「まずはそれからだ。恋人が欲しいと嘆くのは結構だが、まずはお前等自分を大事にする方法を学べ。自分を大事に出来ない人間は誰かを大事になんてできねーからな」
「「せ、先生…」」
なんか、途中から『ごくせん』や『GTO』の主人公になった気分になってしまっていた。
そのせいか変に熱血スイッチが入ってしまい、よけいな事まで言ってしまった気がする。
「はい!」
「はい、エイル君」
スッと挙手するエイルを俺は指差した。
「約束通り、最後に先生の恋話聞かせて下さい」
「あ、そうだよ!そうだよ!約束してたもんね?」
「俺か…俺はな…」
目をキラキラさせ俺の言葉を楽しみに待っている生徒達。
「3年くらい付き合ってた彼女が居た」
生徒達から歓声が上がる。
「けど、浮気されて別れた。以上だ」
「ずこーーーーっ!!!」
リズは自分でずっこけて、身体を張ったリアクション芸を披露する。
「カトーせんせー!!あれだけ偉そうに色々言っておきながら自分の恋愛全然上手くいってないんですねー!!授業料返して下さーい!!」
ずっこけた体勢のまま、食い気味でクレームを言ってくる生徒1号。
「は?そう言う事は授業料を払ってから言え! それに、これは反面教師じゃねーけど失敗したからこそお前等にアドバイスできんだよ。 ほらっ?」
ずっこけた体勢のリズに手を差し出す。
「……せ、先生」
「カトーさん……いえ、カトー先生!僕一生付いて行きたいです!!」
失敗したからこそ何がいけなかったのか分かる、
反省すべき事だって分かる、
それは相手に対してもそうだし、自分に対してもそうだ。
それに、どんな物事にもきっと完全な加害者や完全な被害者はいないと俺は思っている。
さっきも言ったが、
俺が元カノに浮気された件だって俺にも原因があった筈で、
そしてそんな彼女を選んだのも自分なのだ。
彼女と別れた直後は色々感情がごちゃごちゃしてて気が付かなかったが、
時間が経つにつれて改めて色々気が付く事があった。
だから俺なりに、
こんなアホみたいな奴等だけど幸せを掴んで欲しいと思ったのは事実で、
流れではあるが変にお節介を焼いてしまった訳で。
「未来ある若者に説教とか…とうとう俺もオヤジ化してるな…」
俺の手を掴むリズを起き上がらせながら、ボソリと自傷気味に呟く。
しかし、それが聞こえてたのか、彼女はじーっと俺の顔を覗き込んできた。
「そんな事ない。いつもありがとうね、カトーさん」
そんな彼女が聞こえるか聞こえないかくらいの声量でボゾボソと何かを呟く。
「あ?今何か言ったか?」
「流石、ボクのお父さんって言ったの〜」
明らかにさっきの言葉とは違うが、
俺はそれ以上追及する事はしなかった。
「あのなー、だから俺は…」
「29歳なんでしょー?もー、分かってるって〜」
クロードの話をして少し気が晴れたのか、
彼女の笑顔はいつもよりスッキリしたような凄く良い表情だった。
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