14話.盾で世界最強を目指そうとする馬鹿が本当にまじでありえないのだが。
ケルヌトの街から旅立ち、俺達は現在サルスの街を目指し平原を移動している。
「おら!!」
先程からうじゃうじゃ湧いてくるリザードマンの群れを【神の脚】で蹴散らす。
この平原はまさにモンスターアイランドと呼ぶに相応しいくらい様々なモンスターに出会す。さっきは、オークだったが、今回はリザードマンだった。
「さっすがカトーさん!よっ!なろう主人公!!」
戦闘には全く参加せず安全な位置で、応援と、よっこいしょをしてくるリズ助。今日は例の猫耳フードを被っている。
「なー、そう言えばさ?そのウロボロスのメンバー達に復讐するっつったって、一体何するんだ?」
ずっと気になっていた質問をしてみる事にした。
「んー、あんま考えてなかったや」
「おいおい…もしかしたらもうすぐ、そのウロボロスメンバーに会うんだぞ?」
最近サルスの街でウロボロスメンバーを目撃したという情報をあの領主から得た俺達はサルスの街を目指しているのだ。
「まー、みんなが悔しがってる所見れたらスカッとするかもなー」
「だいぶ抽象的だな…」
「カトーさんがぎゃふんと懲らしめてくれたらいいよ!ボクはカトーさんの後ろからみんなを見下して、ざまぁ!!って言うからさ」
「そんな感じね…」
旅の最終目的でもある、復讐がなんとも適当な計画だった。
「あ、つーかクロードってさ?お前の元彼か何かなのか?」
サラッとついでにこの件も尋ねてみた。
「は!?何なんだよ!急に!?元彼…じゃねーし!」
なるほど、今の間は。
本当にリズ助は嘘が付かない性格のようだ。
「じゃあ、付き合ってはないけど。好きだった男とか?」
「……ちげーし」
図星だった。
少し前にリズが酔い潰れて、クロードの名を呟いていたのはそう言う事で、おそらく彼女が彼等にざまぁしようとする理由も痴情のもつれか何かなのだろう。
「なるほどなー」
「な、何が!?」
「いやいや?別に何でもねーよ」
「…何か勘違いしてるよね?」
ジト目で睨んでくるリズ。
「は? 被害妄想もいい加減にしてくれよ」
「じゃあホントのホントに変な勘違いしてない?」
「してねーよ」
「なら……別にいいけどさ」
まぁ、理由はどうあれ俺がリズの手助けをする事に変わりはない。
それに痴情のもつれぐらいなら、もしかしたら、バチバチ戦闘になる事もなく話し合いで合わせられる可能性もありそうだ。
その、クロードって男と一体何があったのか具体的な話をその内聞いておいた方がよさそうだ。
◇
暫く平原を進んでいると、リズ助が凄いものを見つけたとある一箇所を指差す。
「あれ?…カトーさん、カトーさん。あそこ!見える?あそこ!…なんかモンスターが一塊になって気持ち悪い事になってるんですけど…」
「あー、まじだな。モンスター凄い群がってんな…」
リザードマン、オーク、その他諸々のモンスター達が1.2.3.4.5.6.もう数えるのが面倒なくらい一箇所に群がっていた。
「ゴキブリほいほいでもあんのかよ?」
「ゴキブリほいほい?」
「…あ、悪い。独り言だっ!」
態勢を低くして再び、【神の脚】を発動させる。
そのまま高速で移動し、モンスターの塊目掛けてドロップキックをぶちかます。
――ガン!!と金属音のようなものが響く。
今の一撃で6匹くらいのモンスターを仕留める事ができた。しかし、意外とモンスターの塊は頑丈でその場からびくとも動かない。
『わっ!?び、びくっくりした!?』
突然声がする。
「ん?リズ助、何か言ったか?」
「へ?ボクは何も言ってないけど?」
おかしい、今確かに声が聞こえたのだが。
「まー、いいか」
あまり深くは考えず。俺は再び塊にドロップキックをぶちかます。
「おら!!」」
――ガン!!と再び金属音が鳴る。しかし今のは、かなりの手応えを感じた。
『ぎゃ!?な、な、なんなんだよ〜!?も〜!?』
二発目のドロップキックで、ほぼ壊滅状態になったモンスターの塊の中心部が遂に見えてしまった。そしてその謎の声はハッキリと塊の中心部から発せられていた。
「お、おい!リズ助!!人だ!!あの中人がいるぞ!?」
「え!?嘘でしょ!?」
◇
俺は中心部の人を傷付けないよう慎重に一匹一匹モンスターを倒し、中の人物を無事に救出する事に成功した。
「た、助かりました…」
まさに金髪美少年と呼ぶに相応しい彼は中性的な顔をしており、まるで少女漫画に出てくるキャラクターのようなイケメン君だった。
「お、おう…その、悪かったな…ドロップキックしちまって…」
「あ〜、いえいえ!元はと言えば僕が招いたタネなので仕方がないと言うか……って、ドロップキックってプロレス、ですか?」
大きな盾を両手で握り締めながら青年がボソリと呟いた。
「え?…お、お前ドロップキック分かるのか!?」
「あ、は…はいっ!それくらいならまだメジャーな技なので、なんとかわかりますけど…」
「…まさか、お前……転移者か?」
「え?そうですよ?」
俺の問いに青年は、頷いた。
まじか!まじか!まじなのか!?遂に俺は、俺以外の転移者に会ってしまった!!
「お、おい!リズ助!?」
「イエス!…間違いなく彼は転移者っぽいね!」
俺に向け、グッと親指を立てる彼女。
「どこから転移してきた?」
「え?日本、ですけど?」
「おぉぉぉぉぉ!!」
テンション爆上がりで思わず叫び声をあげてしまった。
「うわ〜…カトーさん…キャラ崩壊してる…」
◇
「僕は、速水エイルと言います。宜しくお願いします」
大きな盾を持ったまま、ペコリとお辞儀をする青年。
「俺は、加藤…」
「彼はカトーリョーヘイ!世界最強の転移者で!俺TUEEEE!な無双伝説を作る男なのですっ!!えっへん!」
勝手に人の自己紹介を適当に喋るリズ助にイラっとしたので軽くしばく事にした。
「お前は勝手な事を言うなっ」
「ひぃ〜ん!いはい!いはいほ〜!」
リズ助の両頬を摘み軽く伸ばして遊んでいると、エイルがクスクスと笑う。
「ふふ、本当にお二人仲良しですね?」
その言葉にリズの頬から手を離し、再びエイルに向き直る。
「あー、まー普通だぜ?普通。因みにこのアホみたいなガキはリズな?」
俺は親指でクイクイとリズ助を指す。
「そうなんですね!」
笑顔で頷くエイル。
「アホじゃねーし!天才魔法使いだしー!」
「あ、そうなんですね!」
愛想笑いを浮かべ頷くエイル。
「は?お前戦闘じゃ何にも役に立たねーだろーが!?恥ずかしいから天才魔法使いは名乗るな!! あー、ごめんな?こいつアホだから、よくアホみたいな事言うからまじで間に受けないでくれ」
「…あ、そうなんですね」
苦笑いを浮かべ頷くエイル。
「なんだい!なんだい!さっきからグチグチうるさいんだよカトーさんは!!自己紹介くらい格好付けさせてよね!?」
「お前は身の程をわきまえろ!! 悪い、まじでコイツの言う事は気にしないでくれ」
「あ、あはは…そう、なんですね…」
ぎゃーぎゃー騒ぐ俺達のやり取りを見て、彼は少し困ったように笑っている。
うん、この子良い子だな。
◇
「エイル君さ?転移者ならチートスキル持ってんだろ?因みに俺は…」
自分のスキルをエイルに教えようとした瞬間、険しい表情のリズ助が俺の口を塞ぐ。
「ちょ!もー!カトーさんの馬鹿バカ!!素性も分からない転移者相手に自分のスキルを教えるとか馬鹿なの!?もし、何かあったら、スキルがバレてる方が不利なんだからっ!?」
「あ、僕のスキルは絶対防御です。使用回数はあるんですが、物理攻撃、魔法属性攻撃、全て防ぎます」
彼はにこやかに自分の手の内を明かす。
「えー」
邪気のない彼の笑顔に、リズ助もすっかりヒートダウンしてしまった。
彼女の手をどかしてから、俺も自分のスキルの手の内を明かす。
「俺のスキルは、神の腕と、神の脚と、まだ使ってねーからよく分からねーけど、神の眼ってスキルがある」
淡々とした口調で、彼に【神の腕】【神の脚】の効果を詳しく説明する。
すると、彼は興奮気味に声を弾ませた。
「す、凄い!!そんなスキル聞いた事ないですよ!!カトーさん、本当に伝説作れるくらいのスキルですよそれ!!凄いです!!」
「あー、やっぱ他の転移者から見ても凄いんだな?このスキル」
「ふふ〜ん!だから言ったじゃん!カトーさんはその内最強の無双伝説を作る男なんだって!!」
「お前は少し黙っててくれ…ほら、今日の分のお小遣いやるから」
「いや〜ん!待ってました〜!!」
リズ助にお小遣い『5G』を渡す。
「え〜っと、今2G余ってたから、それと今日の分を足して〜」
自分のお小遣い入れの袋から全額を手の平に取り出し、嬉しそうにお金を計算し出すリズ助。
「え、えーと。お小遣い制なんですね…」
エイルは再び俺達のやり取りを見て愛想笑いを浮かべている。
「そう言えば、エイル君さ?なんでゴキブリほいほいみたいになってたんだ?」
彼が転移者だと知ったので、気兼ねなく現代用語を使い話しかける。
「あ、あれはですね。…え〜っと、あ!実際に見てもらった方が早いですね? ちょっと待ってて下さい!」
彼は笑顔を浮かべながら、遠目に見えるモンスター目掛けて走って行った。
――ガンガンガンガン!と短剣で大きな盾を叩き、モンスターの意識を自分に集中させている。
すると、ビックリする程のモンスターが何処からともなく集まって来だして、彼をモンスターの群れが飲み込むような形で一瞬で先程の塊が出来てしまった。
俺はポカーンと口を開けたまま彼の場所まで歩み寄る。するとあの塊の中からくぐもった声で『こういう事なんです!』と焦った様子もなく、むしろ張り切っているような弾んだ声が聞こえてきた。
「……で?」
『あ、それでですね?…中から一匹ずつこの短剣で攻撃していくんです!』とくぐもった声が聞こえる。
「…ほう」
『これが僕の戦い方です!』と嬉しそうに声を弾ませる彼を、モンスターの群れが寄ってたかって一斉攻撃している。
「…エイル君。めっちゃ攻撃されてるけど、大丈夫なのか?」
『スキル、絶対防御を使ってるんで大丈夫ですよ!』とくぐもった嬉しそうな声が聞こえる。
「………エイル君。君はモンスターに攻撃もしているんだよな?」
『はい!そうですけど?』
彼がどのモンスターを攻撃しているのか分からないが、一向にモンスターが減る気配が無かった。
「…モンスター減ってなくね?」
『あ、はい。…僕、攻撃力だけは低くて倒すまでに少し時間が掛かるんです』
なるほど。
「…因みにこの塊、全部倒すまでにどのくらい掛かるんだ?」
『あ、このくらいの数でしたら、6日程で…』
「はい、ドロップキィィック!!」
アホみたいな事をぬかすエイルに俺は迷わずドロップキックをかました。
『うわっ!?ちょっと、カトーさん!?』
今の一撃で、数匹のモンスターを一掃できた。
「はい、更にドロップキィィック!!」
『はぎゃ!?ちょ、ちょっと危ない!危ないですよカトーさん!?』
結局、エイルに群がるモンスターは全て俺のドロップキックで全滅させた。
あれだけのモンスターから総攻撃されてたクセに本当に彼は傷一つない。
「…で、さっきのアレは何なんだ?」
「へ?さっきのアレって?…いや、僕のいつものファイトスタイルですけど…」
「…お前まじで、あれでモンスターとやりやってんのか?…さっきの6日ってのは…」
「あ、はい!もちろん、経験値稼ぎですよ? 最高は10日間掛けてめっちゃ強いボスも倒した事あります!」
彼の言う事が事実ならドン引きレベルだ。
「…まじで言ってんの?」
「まじです!…平均睡眠時間は2時間で、その間はもちろんスキル絶対防御を発動させます! それから、水と、日持ちする食料さえあれば何も問題ありません!」
引くわ。ほんっと、まじでドン引くわ。
10日間地道に通常攻撃を繰り返しモンスターを倒すとか、どんだけ変態的にストイックなんだよ。
「え、何々どうしたの〜?」
話に参加してきたリズ助に、今見た事、聞いた事を全て説明する。
「うげっ!?10日間も戦い続けるって、キモ!しかも絶対臭い奴じゃん!!うえっ!キモッ!!ホームレス転移者じゃん!!」
リズは渋い顔をして、汚い物を見るように彼を見つめる。
「も、もちろん!戦闘が終わった後、街に戻る前に川で水浴びはしますよ!?もちろん!!」
リズ助に『キモ』と言われて明らかに傷付いた様子のエイル君は言い訳がましく捕捉を入れる。
「ん?悪い、一つ確認なんだけど。エイル君ってさ、何か攻撃型のスキルとかあるの?」
「え?今覚えてるのは絶対防御だけですよ?」
「だったらさ?スキルポイントたまってんじゃねーの? それをパラメータの攻撃力に振ればっ」
「あ、はい! スキルポイントですよね?もちろん防御力にガン振りしてますよ!」
胸を張ってドヤ顔で答えるエイル君。
アホだ。この子良い子だけど、アホだ。
「…え、キモい。 絶対防御のスキル持ってる上に更にスキルポイントを防御力にガン振りしてるとか…え、凄くキモい…」
まさかのリズ助からも批難されるアホの子エイル君。
「…あまりこう言うのもなんだけどさ?絶対防御あるのに、これ以上防御力上げるのもあんま意味なくね?」
「絶対防御は使用回数がありますし、それに防御力強化はロマンじゃないですか!!」
「「は?」」
俺とリズは同時に呆れた声を出してしまった。
「え?分からないですか? 僕盾の勇者に憧れてたんです!! 異世界転移して所持してるスキルが絶対防御だった時はもう運命かと思いました!! それで、その時誓ったんです!僕も盾で最強を目指すぞって!!」
流石に盾の勇者の物語はメジャーな小説でアニメ化もしていたので俺でも知っている。皆んなにはぶられた盾の勇者が成り上がっていき、最終的には盾で最強になる作品だ。
彼はその作品の主人公に憧れており、真似をしているのだろうけど。
「…いやいや、盾の勇者が最強になれたのはアニメだからだろ!常識的に考えてそのパラメーター配分はおかしいし!盾で最強とか現実じゃ普通に無理だって!! 悪い事は言わないから今からでも、攻撃力を強化していけって!」
「…すみません。親切で言ってくれているのは分かっているのですが。 やっぱりポリシーなので、そこは変えられません!」
決意の揺るがないような瞳でハッキリと答えるエイル。
「カ、カトーさん!カトーさん!この子、レベル70ある……つまりレベル70分のスキルポイントを全て…防御力に…」
ステータス表示アイテムを持つリズの手が震えている。
「…なんてこった」
むしろ、レベル70のくせにこんなに攻撃力が低いって…かなり致命的だ。元々の攻撃力が低いのか?
「防御力はいいですよ?なんたって色んな事が痛くなくなるんです!!」
無邪気な笑顔で防御力の高い事の素晴らしさをプレゼンし始めるエイル君。
「は、はぁ…そーですか」
「それにですよ?やっぱり大切な人を守る為にも防御力って大事だと思うんですよね? 皆さん逆に攻撃力に気を取られ過ぎだと思うんです、だってそもそも防御力がなきゃ…」
そんなこんなで、こうして俺達はアホの子エイル君と出会った。
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