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プロローグ:魚の泳ぐ日
初めてこの町に足を踏み入れたときから、奇妙だと思っていた。
「………、魚が泳いでる…………」
呆然と見上げた空は快晴とまでは言わないけれど、ほどよく心地の良い水色で、雲は少ない。暑いというほどでもなく、肌寒いと感じるほどでもない、春のうららかな陽気がひっそりと満ち溢れたような日。寝不足の頭の脇をするりと抜けて、涼やかな風が頬を撫でる。
いや、そうじゃなくて。
「…………、これは寝不足でもわかるよ」
何かが、おかしい。
だって魚は、空を泳ぐもんじゃないだろう?
主人公(仮)にはやる気がない