表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天戯さんは何処へ!?  作者: 雨時雨、時雨時。
26/27

第13世界 A.本性と愛情

第13世界 モンスターパニックの世界

11話ルートA  本性と愛情



照明が落ちた構内はオレンジ色の非常灯に照らされて不気味な雰囲気だった。



アタシお化け屋敷とかホラーと超苦手なんだけど……



「彩菜、大丈夫か?」



スマホのライトで先を照らしながら歩く篤史が立ち止まる。

心配そうにアタシを覗き込む篤史は優しく笑いかける。



「心配すんな、彩菜は俺が何があっても守ってやるからよ!」

「はぁ!?こんくらいチョー余裕だし、別に怖がってないし!!」

「嘘つけ!泣きそうな顔してたぞ?」

「はぁ!?違うし!ちょー違うし!!」



赤くなる顔を隠すように篤史の背中を押して先に進ませる。



「ほら早く行こ、駅出るんでしょ!」



天井を壊して侵入してきた虫は確か5匹くらいだったけど、今ではもっと入ってきているかもしれないと篤史は言っていた。

もうすでに駅は安全じゃないため、2人で脱出して別の安全な場所に行くことになったわけだ。

出口に向かって進んでいるけど、他の生徒たちには会わなかった。


どこかに身を潜めているのか既に駅の外に逃げたのかはわからないけど


急に篤史が立ち止まりT字路の曲がり角から通路の先の様子を確認する。

恐る恐るアタシも覗いてみると



虫がいた、それも2匹

それと、人もいるがどうも様子がおかしい。

白衣を着た人と少女は虫を前に何かをしている。

虫もその人たちを襲うことなくされるがまま。



「彩菜、逃げるぞ」



小声で言う篤史は顎で来た道を指す。


そーっと忍び足で引き返す。

足元に散らばったガラス片に気を付けながら音を出さないようい慎重に後ずさる。



その時、通路の後ろから話し声が聞こえた。

男女の話し声は静かな構内でははっきり聞こえた、アタシ達にもそしてあの虫にも。



背中を突き飛ばされ、横の雑貨屋の中に転がり込む。

必死な形相の篤史も店に滑り込み身を隠す。


一瞬だけ通路から首を覗かせた虫の不気味な顔がこちら側を見た気がした。

ものすごいスピードで飛び出した虫2匹は話し声が聞こえた通路の先に棚やら雑貨を吹き飛ばしながら声の方へ走りぬけていく。






吹き飛ばされ散らかった雑貨や服をよけながら立ち上がろうとするが倒れた棚に足が挟まり抜け出せない。


は!? 嘘でしょ?


どうやら棚の中で足に服が絡まっているようで引いても抜けそうになく、棚を持ち上げようとしてもよほど重いのかびくともしない。

挟まれた足に痛みはないけど、アタシは身動きが取れなくなってしまった。



「篤史助けて、足抜けなくなった!」



篤史も棚を持ち上げようとしてみるが篤史の力でも持ち上がる様子がない。



通路の奥から悲鳴が聞こえた。

さっきの話し声の人たちだろう。

通路の先を見つめ、篤史は真っ青になった顔でアタシを見る。

声の届く距離に虫がいる。



「あ、篤史?」



少しずつアタシから距離をとるように後ずさる


「え、う、嘘だよね篤史?」


「だ、大丈夫だよ彩菜、いま何か持ってくるから……」


「何処に行くの篤史!?アタシを見捨てる気!?」


「少し待ってろよ、すぐ戻るからさ……」



振り返り虫とは反対の通路を走り出す。



「ふざけんなよてめぇ!!何が何でも助けるって言ったじゃん!!見捨てないでよ!篤史!!!!!」



篤史は振り返ることもなく何かを叫びながら走り去っていく。









どうにか足を抜こうともがくが抜けそうな気配はない。

こうしている間にも虫がアタシを殺しに近づいているような気がして、気がふれそうになる


「くそっ、くそっ、抜けろ抜けろ抜けろ抜けろ、くそがよぉお!!!!!」


挟まっていない方の足で棚を蹴るがそれでも動かないし、抜けそうもない。



アタシこんなところで死ぬの?



ふとそんな思いがよぎった。



「……助けて」



不安で怖くて泣き出しそうで、虫が来るかもしれないのにアタシは大声で助けを呼ぶ


「誰か助けて!!  助けて!!!!」








「お姉ちゃん、助けてあげようか?」


いつの間にか目の前に一人の少女が立っていた。

白いワンピースを着た10歳くらいの少女はさっき白衣の男と一緒にいた少女のようだ。


「た、助けて」



こんな華奢な少女にこの棚が持ち上げられるはずないのは分かっていたが怖くて藁にも縋る思いで助けを求める。

少女は楽しそうに笑い、そして



「じゃあ、この足要らないんだよね?わタしモらっテモいイよネ?」



左腕を虫のような鎌に変形させ振り上げる。



「嘘でしょ」



だがその鎌が振り下ろされることはなかった。

篤史が逃げていった通路から足音と話し声が聞こえる。

誰かがこちらに向かってきているようだ。



「残念、またねお姉ちゃん。」









少女が去って入れ替わる様に足音の人たちが駆け付けた。


確か生徒会の佐々木と城崎さんと石田だっけ?



「大丈夫ですか!?」



佐々木が駆け寄り足を挟まれているアタシを見てすぐさま棚をどけようとするがやはり持ち上がらない。


「守君、手伝ってくれる?」

「おう」


左右から棚を持ち上げようと2人がかりで挑むがそれでも棚は少し持ち上がっただけで足が抜けるほどではなかった。


「クッソ重いなこの棚」

「西城さん足は大丈夫なの?」

「大丈夫だけど棚の中で服が絡まってみたいで……」



「ちょっとはじめくんと守くん、まじめにやんなさいよ!」

「やってるっつーの!!」

「守君、梃子の原理で上げよう」


2人は持っていた鉄パイプと金属バッドを棚の隙間に入れて転がっていたポールを噛ませる



「せーの!!」


持ち上がった棚の隙間に城崎さんが手を突っ込んで中で絡まる服を外す。








「だっはぁああああ!!この棚重すぎだろ?」


横で石田が疲れたように倒れこむ。


「でもなんとか抜けてよかったですね。」


その隣で同じように佐々木も座り込む。

どうにかほどいてアタシは棚から抜け出せた。


「あの、ありがと……」



ってそうじゃないはやく逃げないと近くに虫がいるんだった!!



「近くに虫がいたの!はやく逃げないと!!」



虫が走っていった通路を指さして3人に言う。

さっきのアタシの声を聴いて近くまで来ているかもしれない早く、早く逃げないと


急いで立ち上がり彼女たちと一緒に逃げる。

話を聞いていると彼女らは駅の中央の避難者が集まっているところに行くらしい。



商業ビルを抜けて、駅にたどり着いた先で物陰で何かを漁る人物と出くわした。



「……篤史。」



アタシの声に気づき、振り返る篤史は驚いた顔をする。



「彩菜!!よかった無事だったんだな、今助けに行こうと思っていたところなんだ!」



白々しくも駆け寄ってきて手を握る。


助けに行こうと…思ってた?


「ふざけんなよ!アタシを見捨てて一人だけ逃げ出したくせに!!」


手を振り払い、突き飛ばす。

突き飛ばされた篤史はしりもちをついて、呆然とアタシを見上げる。



「彩菜?違うんだよほんとに助けに行こうとしてたんだって!信じてくれよ!?」



「まぁまぁ百瀬先輩落ち着いてください。」

「西城さんも落ち着いて、ね?」


佐々木と城崎さんが止めに入るが篤史への怒りが収まらない。

散々安心しろだの言っておいていざとなったら自分だけさっさと逃げる。

こんなやつが今までアタシの彼氏で好きな奴だったなんて信じらんない。


コイツがこういうやつだなんて思わなかった。



「状況が状況だったんだ仕方がねぇだろ、俺にどうしろってんだよ…」



小声で悪態をつく篤史。

もう嫌、視界にも入れたくない。



「もういい、城崎さん、行こ」



こんなやつほっておいて早いとこ安全なとこに行こう。

無視して進もうとするがアタシの手を篤史が掴んで引き留める。


「おい待てよ、どこ行くんだ?」

「放してよ、アタシらは駅中央に向かうの、アンタは駅から逃げるんでしょ早く行けば?」


振りほどいて城崎さんの手を握って歩き出す。


「行こ」

「え、でも……」

「いいから。」


後ろで篤史がなんか言っていたが無視した。





階を下りて1階まで無事にたどり着いた。

今いるのは人間であることを照明しろと言われた場所だ。

つまり虫が天井を壊して入ってきた場所だ。


アタシらに紛れ込んでいた虫に殺された人たちの遺体はどこかに消えており、床を濡らす血だけが残っていた。

虫が食べたのだろうか、それとも持ち帰ったのか、ま、どーでもいい。



「おい、ここ安全なのか、天井からまたバケモンが入ってくるかもしんねぇだろ?」



しれっと後ろをついてくる篤史。


「安全だという確証はないですが、駅の中心部に向かうにはこの道が一番近いですから、他だと遠回りになってしまいます。」


無視すればいいのに佐々木が律義に答える。


「てか何ついて来てんの?駅から出るんでしょ?出口はあっちだから。じゃあね。」

「ばか、好きな女放って一人で逃げられるかよ!」


あ?

どの口が言うんだっつの。


キメ顔でウィンクを飛ばす篤史に心底うんざりする。

ついさっきまであんなに好きだったのに…こうも簡単に気持ちが覚めるなんてびっくりだわ。


城崎さんや石田が苦笑いで見守る中、佐々木が通路の先を見つめ、声を掛ける。



「静かに!」



佐々木が見つめる通路の先から誰かが走ってくる。




「た、助けて!!」



頭から血を流しながらも何かから逃げるようにこちらへ走ってくる20歳くらいの女性。

その後ろから何かが彼女を追ってこちらに向かってきているのがわかる。


佐々木と石田、それに城崎さんも彼女に向かって走り出す。



「彩菜!今のうちに逃げるぞ!アイツらが囮になってくれている間に早くいくぞ!!」



三度アタシの手首を掴んで強引に出口に連れて行こうとする。

そしてアタシも三度振り払う。


「あんたなんかと一緒にしないでよ!!」


城崎さんのあと追う様に女性のもとへ駆けだす。

佐々木と石田が女性に肩を貸していた。


「西城さん、ライト任せていい?」

「もちおk!!」


佐々木から渡されたスマホで通路の先を照らす。

スマホのライトで照らし出された先では虫がいると思ったが、ではなかった。



男性が一人、全身に緑色の血管のような模様を走らせ、右手と右足を虫のような形に変形させた異様な姿の男がうめき声をあげながらゆっくりとこちらに歩いて来ていた。

その男の顔は見覚えのあるものだった。



名前は知らないけど…たしか






「……野村さん」






隣で石田が呟く。

確か彼はここで血を見せろと言ってきた一団のリーダーだ。

虫の女子生徒のように半身が異形になっている野村という男はどう見ても正気のようにも無事なようにも見えなかった。








ご来訪ありがとうございます。


どーも皆様、雨時雨あめしぐれ時雨時しぐれどき。と申します。






野村さぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああん!




ということで今回は西城彩菜視点での物語でした。

駅中央まであと少しというところで化け物と化した野村と出会います。


野村さんは生徒会長と田中と一緒に駅中央を目指していたはずですが、いったい何があったのでしょう。

それは不要かと思われたルート「B」の11話で明らかになります。

お楽しみに!!




それでは次回のルートでお逢い致しましょう。



P.S

ブックマークが10件に増えました(R2.5.31現在)

ありがとうございます!

感無量でございます。

これからもよろしくお願い致します!!


雨時雨、時雨時。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ