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天戯さんは何処へ!?  作者: 雨時雨、時雨時。
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第13世界 骨と足と筋肉

第13世界 モンスターパニックの世界

06.骨と足と筋肉



高橋君の活躍により図書室の非常階段前に止められた一体どこから持ってきたんだというような大型バスに生徒たちが次々に乗りこむ。

高橋君曰く「生存者が多くいたら困ると思って」ということで大型の車両を探してきたらしい。

ファインプレーである。



生存者数は教師は女性の養護教員を含めて3名、ひょろっとしたメガネの男性教師と体格の良いジャージ姿のおそらく体育教師であろう男性教員。

生徒は俺を含め28名、全員で31名である。



生存者の中に気になる生徒も数人いた。

まず教師よりも毅然と振る舞い生徒たちをバスへと導いている女子生徒。

双牙鬼龍院そうがきりゅういん つかさという3年の先輩で、生徒会長を務めているらしいが……どんな名前だよ!! すごいな!!

鬼龍院先輩きりゅういんせんぱいならまだ分かるが、双牙鬼龍院先輩そうがきりゅういんは気軽に呼びずらいよ。

どうやらこの世界の日本における4大財閥の一角らしいが、「うん、そうだろうね!」という感じだ。

肩に少しかかるくらいの長さで定規で測ったのかというほど見事な一直線に切りそろえられた髪は黒く艶やかで、春風にさらさらとなびく。

少しきつめの涼やかな目元とすっと筋の通った鼻、スラっと伸びた四肢は白く細く、身長も165㎝はありそうだ。

毅然とした態度で生徒に指示を飛ばすその姿は、まさしく生徒会長と呼ぶにふさわしいものであった。

威風堂々、眉目秀麗、品行方正、質実剛健、勧善懲悪、そんな言葉をぎゅっと集めて詰め込んだらこんな人になりましたというような人物である。

そしてそれにお金と財閥を加えてこねくり回したら双牙鬼龍院という苗字になるのだろう。うん。



そんな生徒会長とは対極に位置する生徒も存在する。

百瀬篤史ももせあつし西城彩菜さいじょうあやなである。

いわゆる不良、ギャルという分類で、おそらく高橋君の亜種であろう。

百瀬という生徒は、チャラチャラとした服装で、目にも鮮やかな赤色の髪と同色で揃えたピアス。

いかにも軽そうで遊んでいそうなイケメン。

言動も軽率で、先ほどの避難の説明の際に徒歩移動に対して唯一文句を言ってった人物である。



そしてその彼女の女子生徒、西城彩菜さいじょうあなや

ホットパンツかよってくらい短いスカート丈で、着崩した制服は胸元があらわになっている。

ほとんど金髪に近い長い茶髪はゆるく巻かれており、髪型に関して詳しく知らないのだが、なんか、すごい盛られており、おしゃれに対する強い意志を感じる。

おそらくクラスでのカーストも高い位置にいたのだろう、高圧的な態度や言動が先ほどから見て取れる。

整った顔立ちで間違いなく美人ではあるものの、ヒロインにはなりえないだろうそんな印象である。



そして最後の気になる人物。

百瀬と西城の餌食となっている男子生徒、田中吉彦たなかよしひこ

ちび、デブ、メガネという定番の三拍子をすべて詰め込んだ生徒で、いじめられっ子である。

気弱で臆病な性格で友達も少ないため、百瀬と西城に目を付けられたようだ。



先ほども百瀬と西城が田中にちょっかいを出していたところを生徒会長である司先輩に咎められていた。

この非常事態にそんなしょうもないことをしている場合か。

呆れたものだ。


最後の生徒が乗り込んだのを確認してから、俺と佐々木君と生徒会長が乗り込む。

本当はいの一番に乗り込みたかったのだが佐々木君に呼び止められてしまったせいでタイミングを逃してしまった。

そのため気になった生徒について聞いていたのだが……

どうやら佐々木君は全校生徒の顔を名前、さらにどのような生徒なのかも把握しているようであった。


「ごめんね、天戯君、手伝ってもらっちゃって…」

「いや、それはいいんだが……」


図書室に残っている生徒がいないかを確認に向かっていた俺たちは誰も残っていないことを確認して非常階段を駆け下り、生徒会長のもとへ駆けていく。


「会長、図書室には誰もいませんでした、僕たちで最後です。」

「うむ。佐々木副会長ご苦労であった。天戯生徒も生徒会でもないので危険を顧みず手伝ってくれたことに感謝する。」


見た目通りお堅い口調でねぎらう会長。

というか佐々木副会長って、佐々木君、生徒会の副会長だったの!?


「では、出発するとしよう!」


結局全員が乗車するまで人面カマキリの襲撃はなかった。

遠視を飛ばすわけにもいかないのでとりあえず周囲の警戒をしていたが、こちらに向かってきている個体もいないようで、パニックにもならずに済んだ。

大型ともなれば若干席にも余裕があるようで空席を探す。

佐々木君と生徒会長は一番後ろの席に腰を下ろした。

俺はバス中央の空席に腰掛け、俺たちはようやく学校を出て駅へと出発した。





窓からのぞく街の有様はどこも酷いものであった。

あちらこちらに火の手が上がり、道には血を流し倒れている人間、遠くに聞こえるサイレンや発砲音、襲撃を受けてまだ数時間だというのに悲惨な光景がただただ広がっていた。

道路は所々に乗り捨てられた車があるものの道をふさぐほどではなく、その隙間をバスが通り抜けていく。




バスに揺られること数十分、俺たちは何事もなく無事に駅へとたどり着いていた。



……いや、たどり着くのかよ!?



てっきり人面カマキリの襲撃により、バスは横転、数名の犠牲を出しつつも散り散りに逃げて、それぞれ駅を目指すという展開になると思っていた。

わざわざ遠隔透視を使ってバス周辺を警戒していたのが、無駄骨になってしまった。

バスを襲撃する個体はおろか、近づく気配のある個体も存在しなかった。


遠くまで視界を飛ばしたが駅を中心に1㎞以内に人面カマキリは居ないようであった。

学校へ襲撃してきた人面カマキリは少なくとも50体はいたため、当然街にはそれ以上の個体が襲撃していると踏んでいたが、撃退したのか、別の方角へ移動したのか、想定よりも少ない。



バスを降りた生存者一行はシャッターで閉じられた西側入り口に集まっていた。

生徒会長が声を掛けてみたが中からの反応は無く固く閉ざされたシャッターも開く気配がない。


周囲に敵は居ないとはいえど、いつまでもここにいるわけにはいかない。

現在時刻は17時の10分前、陽も沈みかけ、薄暗くなりつつある。

こじ開けるにしても、このシャッターはかなり丈夫に作られているようで体育教師が助走をつけて筋肉隆々なその肉体をシャッターへとぶつけるが、それでもシャッターは歪むこともなく相も変わらず俺たちの立ち入りを阻止していた。



「会長、どうしますか、別の入り口も探してみますか?」

「うむ、この人数だ、下手に行動すれば敵に見つかるやもしれん。それに日没までそう時間もない。手分けするのも得策とは言えないだろう。壊してでも中に入るしかあるまい。」



硬化結晶体で破壊することは容易いが、それでは駅の防壁の一角に穴が開くことになり、ここまで逃れてきたのも無駄足となってしまう。

しかし、中に入れないのであれば本末転倒。

避難してきた意味すらなくなってしまう。


「竹内先生、ここは私が。」

「……細川先生。」


何度も身体をぶつけ、シャッターをこじ開けようとする竹内教師に、メガネの細身の教師が声を掛ける。


「この世のすべては物理法則に従って存在しており、例外は存在しません。」

「……は、はぁ。」

「故に、物理を極めることは世界の理の深淵を覗くことであり、世界の真理を味方につけたといっても過言でないのです。」

「ど、どうしたんですか、細川先生!?いつもと様子が…」

細川先生はメガネを指でくいっと押し上げ、どうにも不健康そうな青白い顔を興奮気味に歪ませる。

竹内先生はおろおろと細川先生の様子を伺う。

細川先生は物理の教員であるようだ、非力そうに見えるが、梃子てこの原理でも使って開けるのであろうか?

平凡な教師かと思ったらなかなか濃ゆい口調でユニークなキャラクターであった細川先生。

シャッターの前にしゃがみ込むと何やら下の方を覗いている。

鍵でも開けるのかと見ていると、おもむろにシャッターと床の隙間に手を入れ、力を込める。

とても力があるとは思えないナナフシのような細い四肢は瞬時に筋肉が膨れ上がり、服の上からでもわかるような筋骨隆々な肢体へと変貌する。

「ぬぅおおおお」っと気合を入れるその表情はまるで別人のそれで、竹内先生ではびくともしなかったシャッターがギギギと悲鳴を上げながら持ち上がる。


シャッターをこじ開けた細川先生は、次の瞬間にはまるで筋肉が気化するように膨れ上がっていた四肢は風船のように萎んでもとのひ弱な物理教師へと戻る。

得意げに振り返り、再びメガネをくいっと上げると「すべては物理ですよ生徒諸君」と笑って見せた。

生徒たちからは「おおぉおお」と歓声が上がる。


いや!!確かに物理ではあるけど、先生のその筋肉の変貌は物理法則を超越しているし、もはや変身と呼んでもいい所業なのでは!?



強烈なキャラを見せつけられ呆然としている俺をよそに生徒たちは中へと入っていく。

ともかく、無事駅構内には入れたし、こじ開けたシャッターは全員が中に入ってから竹内先生が再び下ろすことで元に戻った。





ひとまずは安全かな。





………と思ったのもつかの間、数分後駅構内へ入った俺たちは包丁やら金属バッドなどで武装した人間達に取り囲まれていたのである。


血走った目で俺たちを睨みつける彼らは何かにおびえたように異な事を問う。






「お前らは人間か」とそう尋ねたのである。




ご来訪ありがとうございます。






どーも皆様、雨時雨あめしぐれ時雨時しぐれどき。と申します。




今回は新キャラが豊富に登場しました。

完璧超人で教師からも生徒からも信頼が厚い日本4大財閥の一角、双牙鬼龍院財閥の令嬢3年F組「双牙鬼龍院 司」

学校の不良で赤髪が眩しいイケメンチャラ男の3年C組「百瀬 篤史」

その百瀬と行動を共にするギャル2年A組「西城 彩菜」

百瀬と西城に目を付けられたTHEいじめられっ子容姿のいじめられっ子2年A組「田中 吉彦」

筋肉隆々の体育教師で3年B組担任「竹内 達治」

ナナフシからゴリラに変態可能な物理教師「細川 太」

なかなか情報量満点ですね!!


無事駅構内にたどり着いた天戯さんたちですがなにたら物騒な武装した人物たちに囲まれてしまいます。

まだまだ緊迫した状況は続きそうですね。




さて、今回は天戯さん……ではなく佐々木君について少し触れてみます。

2年E組出席番号10番「佐々木 一」、彼は2人の生徒会副会長の一人で次の生徒会長候補として最も有力な人物です。特技は超人的なほどに察しが良いことと異常なほどの暗記能力で、生徒の顔と名前は当然に血液型、誕生日、家族構成、趣味、住所など、もうなんで知っているのか不明なレベルの情報まで全校生徒のものを把握しています。

これは彼がもともとモノを覚えることが得意であったことと、人間観察が好きであったことが原因であるのですが、その能力を買われ、1年生の時に双牙鬼龍院副会長(当時)に生徒会へとスカウトされます。



以下、人面カマキリの襲撃及び天戯さんが転移してくる前の平穏な世界の時の生徒会室での会話


司「……ということで我々生徒会は生徒の模範となるべく常に気を引き締め、己を律する必要がある。これは並大抵なことではないが、諸君らであればそれができると私は信じているぞ。」

生徒会一同「はい、双牙鬼龍院生徒会長!」

司「うむ、では諸君、各自作業に戻ってくれ。」


清「会長、今年度の新入生の部活動加入状況ですが、入部する学生は年々減少傾向にあります、部の活動も近年縮小していますし、対策が必要かと」

司「清副会長、データ整理ご苦労。うむ、確かに部員の減少に伴い部費の減少している。それに伴って部員が少ない部活動では活発に活動ができていないようであるな、しかし部活動の加入は絶対ではなく自由参加だから強制もできない。部費の上昇はさらなる部員減少の要因となりえる、かといって学校からの助成にも限度がある。ここは慎重に進める必要があるな。」

清「わかりました。」

司「ことろで佐々木副会長、先ほどからいったい何をしているのだ」

一「あぁ、会長これは今年度の新入生の情報をまとめているんです。」

司「情報?」

一「はい、クラスや部活動、学校での生活態度、中学時代の部活動……」

司「ほう、相変わらず君の情報収集能力は大した……」

一「家族構成、住所、誕生日、すきな食べ物、体の各部のサイズ、趣味、人には言えない趣味、あ、あとはそうそう好きな人や交友関係なんかもまとめて…ってあれ?どうしたんですか会長??」

司「よし、清副会長、押収だ。」

清「はい会長。」

一「え?あ、ちょっ、僕のデータ!!!?」

司「君はもう少しプライバシーというものを考える必要があるぞ。」

一「そんな会長!?僕のこれは少しでもこの学校が良くなればと学校を思う気持ちと、他人の知られたくない秘密を知りたいと思う純粋な好奇心と他人の情報を握ることで得られる若干の背徳感と掌握感を味わうためのもので、悪用なんて考えてませんよ!!」

司「後半に連れて気色が悪さが倍増しているぞ佐々木副会長!?」


そんな二人の会話を聞きながら押収したPCのデータを消す清副会長は佐々木副会長にだけは会長の座を渡せないと一人決意したのであった。





感想や評価を頂けると私が大変喜び逆立ちで町内を一周しますので、お暇な方はお一つどうぞ。



それでは次回もよろしくお願い致します。



雨時雨あめしぐれ時雨時しぐれどき


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