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アダムとイブのその先に  作者: まある
8/20

8.お試し

炎天(えんてん)のトレーニングは1週間続いた。


「良く頑張ったな!」


最後のトレーニングが終わった時、炎天は豪快に笑った。大半が疲れ果て、倒れていてもお構い無しだった。


しかし、幸太郎達は確実に、入団直後より筋力や体幹が鍛えられていた。


「これで俺の授業は終わりだ!しかし怠けられては困る」


炎天はファイルから紙を取り出し、一人一人に手渡しした。


(うわっ!何だこれ)


紙に書かれていたのは、簡単なトレーニングメニューだった。


「付け焼き刃にやっても意味がない。これからも精進することだな!」


「頑張ります」


冬汰(ふゆた)は立ち上がると、炎天の前に立った。


「これからも励んできます」


炎天は目を細め、右手を差し出した。


「今度は同じ場所で会えるといいな!」


「はい」


冬汰は左手で握った。




□■□




炎天の授業が終わった次の日の朝、銘斗(めいと)がやって来た。


「いやー、久し振りだね!誰一人脱落せずに頑張ったねー!」


後から語られたのは、あの厳しいトレーニングも見極めの一つだという事だった。


「今日はプレゼントがあるんだ。初期指導も終わるし、丁度良いしね」


「何でも良いから、さっさと見せろよ」


ズボンのポケットに手を突っ込んだまま、劉牙(りゅうが)はテーブルに寄りかかった。


銘斗は注意するでもなく、満面の笑みで言った。


「それは着いてからの、お・た・の・し・み!」


「……キモ」


いつも以上に気持ち悪い、銘斗の口調と笑顔に、劉牙はドン引きした。さらに、劉牙だけではなく、その場に居た全員が引いており、静馬(しずま)に至っては、顔が歪になっていた。


「……だいぶ傷付くよ」




□■□




(これがプレゼント……)


見た瞬間、そう思わずにいれなかった。


何故なら、目の前にあるのは、ラッピングされた箱等ではなく、銃だった。


(あの時選んだやつ……?)


他を見れば、同じ様に選んだ武器が置かれていた。


「前に武器を選んだでしょ?あれは簡易的だったけど、今度はしっかりしたものさ」


「結構頑張ったんだからなー。戦う時の癖とか考えて作ってあるの。だから大切にしろよー」


銘斗の横に居た城崎(しろざき)麗奈(れいな)が、煙草を片手に気だるげに言った。


麗奈は鍛冶場の責任者であり、発明家でもある。本庁のシステム系統の7割は、麗奈が作ったものであった。


そして、幸太郎達が今居る場所は、無論鍛冶場である。


「八人分とか頭イカれてるだろー」


「うんうん。それは分かったけど、煙草は駄目じゃないの?」


「あたしは良いんだよ」


そのまま白い煙を吐き出した。


「ここで試してけよー」


麗奈は、手でついて来いと仕草すると、奥の角部屋に案内した。


そこは、白い空間がガラスで区切られ、それぞれヘルメットがぶら下がっていた。


「八人なら入るなー。適当に入って、適当に試せ」


それだけ言うと、その場から立ち去ろうとした。銘斗は慌てて止めた。


「待って、どこ行くの?」


「寝る」


それだけ返事すると、そのままサンダルを引き摺りながら、どこかへ消えていった。


「あれは徹夜だね。まあ、折角だし試してこう。あ、ヘルメット付けてねー」


銘斗は慣れた様に、壁に設置された端末を操作した。


すると、ヘルメット映像が映された。映像は、人型のイレギュラーが立っているものだった。


(まるで本物みたいだ)


映像は緻密(ちみつ)で、そこに本当のイレギュラーが居るかの様だった。


銘斗がまた操作すると、立っていたイレギュラーは戦闘態勢になった。


驚いた幸太郎は、反射的に銃を撃った。すると、目の前のイレギュラーに攻撃の一打が入った。


(使い易い。銃自体が軽い……?)


幸太郎はそう思うと、銃を持ち上げた。


そして、もう一発撃った。


「もう外して良いよ」


プシューと音がすると、映像は消え、ヘルメットは簡単に外れた。


「これ本当に凄い……とっても使い易い」


八千代は感嘆の溜息を吐いた。


「皆、好印象っぽいねー。後で城崎に言うか」


「城崎さんに、是非お礼を申し上げたいですね」


興奮した様に茉莉奈(まりな)が、剣を持ったまま両手をブンブンと振った。


「姉さん危ないから」


龍太(りゅうた)は呆れながら、茉莉奈を(いさ)めた。


「また会えるさ。その時にでも大丈夫だろう。とにかく、ここを出ようか」


銘斗はそう言って、足を促した。




□■□




最初に使った会議室に入ると、机に荷物が置かれ座る場所が決まっていた。


「皆、良く頑張ったね。これで初期指導は終わり。これから君達はバラバラになる」


銘斗はそこで区切ると、端末を見た。メールか何かが届いたんだな、と幸太郎は思った。


「でも同僚同士だ。そして班は違えど、同じ場所になる事もあるだろう。その時は頑張ってね」


銘斗はパンっと手を叩いた。


「これにて、解散!」

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