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アダムとイブのその先に  作者: まある
5/20

5.寮

全員が武器を選び終わると、銘斗(めいと)はパタンと本を閉じた。


そして幸太郎達の方を見ると、


「うーん……これまた個性的だね」


そう言って頬を引き()らせた後、次の話をしようと口を開いた時、銘斗の端末が鳴った。


「……ちょっと待っててね」


銘斗は端末を見るなり、心底面倒くさそうな顔をして廊下に出た。


(しばら)くすると、「なぁ」と劉牙(りゅうが)が口を開いた。


「主席は誰だよ」


劉牙の言葉に幸太郎は「確かに」と頷いた。


試験では特に成績が優秀だった者に主席の座が与えられた。しかし誰が主席になったのかは知らされておらず、誰もが気になっていた事だった。


「それ私も気になるー」


脳天気な声を出した少女は、金髪で見るからに不良の様な雰囲気だった。


「あ! 先に自己紹介するべきだよねー! 私は星野(ほしの)仄佳(ほのか)。よろしくー」


そう自己紹介をすると、


「で、誰なのー?」


と首を傾げた。暫く沈黙が続き、やがて観念した様に少年が片手を挙げた。


「僕だよ。ああ、天野(あまの)冬汰(ふゆた) 。別に隠してた訳じゃないんだけどね」


冬汰は齢十二にして、文武両道だった。中でも実技試験では群を抜いて強かった。さらに、幸太郎達に比べ小柄だが、体力もあり、確かな実力を持っていた。


「あ?てめぇみたいなチビかよ」


「うわぁ!可愛いのに強いんだねぇ」


反応は様々で、仄佳は目を爛々(らんらん)に輝かせた。反対に劉牙は酷く、冬汰に飛び掛かる寸前だった。


「ここでやり合うのは、良くないと思うけど」


緊迫した空気の中、丁度良く銘斗が戻ってきて、その場は何も起こらずに済んだ。


「時間がないから実力測るのはなしだってさ、ははっ、僕が一番楽しみにしてたやつなのにー」


電話に出る前と違い、明るい雰囲気は消え、心底残念そうな様子だった。


「ということで、武器はそこら辺に置いて、寮へ案内するよ」


しょぼくれた銘斗に対し、幸太郎はいろんな表情(かお)を見せる人だな、と思った。




□■□




幸太郎達が居たのは本庁と呼ばれ、寮は別の場所にあった。とは言うものの、本庁の裏手にあり、そこまで遠くなかった。


また寮も階級ごとに分かれていて、()のみ本庁で暮らしていたり、普通のマンションで暮らす事もある。実質、寮に居るのは、その他の階級のみである。


ただ、初期指導中の幸太郎達は、別の寮で初期指導が完了するまで過ごすことになっている。


「他の階級らに絡まれることはないと思うけど、用心するに越したことないしね」


少し前までは、初期指導中でも一緒の寮だったが、一部の人間の虐めが酷く、鬱病(うつびょう)や退団が相次いだため、今の様になった。


銘斗の心配が、杞憂(きゆう)で終わるかどうかは、一部の人間次第といったところだった。


幸太郎達の寮は、かなり寂れていて、手すりも(さび)だらけだった。ドアも不快な音を立てた。


廊下は歩く度にぎぃぎぃと鳴り、いつ床が抜けるか恐ろしい程だった。


そして、広い食堂に入ったところで、銘斗は既に到着していた寮長にバトンタッチした。


寮長は、きゅっと高い位置に髪を結い、細縁(ほそぶち)の眼鏡を掛けていて、見るからに堅そうな雰囲気のおばさんだった。


「この方は寮長の静馬(しずま)さん。寮では彼女に従ってね」


静馬は一礼すると、1歩前に出た。


「蘭川に代わり、寮長である私から説明します。ここは初期指導者(あなたたち)のための寮。壊さない様に最善を尽くしなさい」


「壊したらどうなるんですか?」


冬汰が訊くと、静馬の眼鏡が一瞬光った。


「もちろん、壊した分だけ弁償してもらいます。それから」


そこで一度区切ると、劉牙と取り巻き達を鋭く睨んだ。


「貴女方の今までの行動は全て見ていました。氷室、貴方は特に目に余りました。問題を起こしたら承知はしません」


有無を言わさず、視線と言葉だけで圧倒した静馬に、劉牙は舌打ちだけした。


それから、部屋割りと寮の中を案内され、今日は解散となった。

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