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試験とその後

 試験とその後


 職員に連れられて入った訓練場は、学校の体育館程の広さで、床はむき出しの地面の建物だった。

 その中央に見事な肉体をしたゴリラっぽい人間が立っていた。

 一瞬、ゴリラの獣人かと思ったが、どうやら人間のようだ。


 職員は、そのゴリラ人間の前に俺を案内した。

「君が魔法士の試験を受ける者か。試験官をさせてもらうローランドだ」

「ハヤトと申します。よろしくお願いします」

「それじゃあ、簡単に試験の内容を説明する。何も難しくはない。向こうにある的に、君の特異な魔法を放つだけで良い。だが、ただ魔法を放つだけではいけない。緻密さや速さ、それに力強さも評価対象となる。何か質問はあるか?」

「魔法学院に通っておりませんので、どのくらいの強さの魔法を放てば良いのかわかりません。何か目安をお願いしたいです」

「そうだな。上級魔法が一応の目安だが、この建物を壊すつもりで魔法を放ってくれたら良い。とは言っても、この建物には、防御結界が張られている。よほどの魔法でない限りは、壊れないから、存分にやってくれ」

「……、わかりました」


 的を見ると、三十メートル程先に、全部で五つ並んでいる。

 ローランドさんとしては、一つを破壊するように言ったつもりだろうが、全部を破壊しよう。

 それにだ、この建物を壊すつもりで良いとのことだから、結界もろとも、破壊するつもりでやってしまおう。


 知らない場所で、身を守る方法は、いくつかあるが、わかりやすい方法に、自分の力を見せつけるということがある。

 他には、強い者の下に着くやら、無害な存在であり続けるように立ち回るとか、力ある者に徹底的に近づかないなどがあるが、現状では、誰がどういう存在なのか、全くわからないのだから、己の力を見せつけるのが手っ取り早いだろう。

 この選択が、最善だとは思えないが、周りが見え始めるまでの、護身方法としては、有効だと思いたい。


 訓練場の様子を見た結果、先ほど、受付嬢から聞いた属性を元に、作った魔法を改良して強化した方が良さそうだ。

 ベースがすでに完成しているので、時間を取らずに魔法の改良は終わった。


「それでは行きます!」

「ああ、やってくれ」


 五つの属性、光、闇、炎、地、水の槍を作り出す。

 それに螺旋状の風を纏わせる。いわゆるライフリングと同じジャイロ効果だ。俺はこの魔法を、マジックランスレインとなずけた。

 今回は、各属性で二十本ずつ計百本の魔法の槍で、狙い道理の効果が得られそうなので、この数だが、魔法の槍の数は、まだまだ増やせる。


 狙い通りに準備が終わったので、片手を上げて、一気に降ろす。

 槍たちは、凄まじい速さで飛んでいき、全て的に命中した。

 斜めから的へ、降ろすように向かわせたので、そのまま地面に着弾し、轟音とともに砂煙が舞い上がった。

 俺の魔法の衝撃で、建物が大きく揺れ、なにかが音もなく割れるような感覚があり、訓練場の空気が変わった。

 砂煙が消え、的があった場所には、五つのクレーターが生まれていた。


「なっ!」

「どうでしたか?」

「ああ、どうもこうも、結界が壊れた……。どんな魔法を使ったんだ?」

「光、闇、炎、地、水の属性を持たせた槍を二十本ずつ作り、的に当てただけです。本当なら、それぞれの属性の効果が着弾後に現れるはずだったのですが、着弾の衝撃で、効果が消し飛んでしまったのかもしれませんね」

「五属性だと……、それに、あれは、ただの魔法の槍じゃない。何かしていたよな?」

「風魔法で、強化していましたね。試験の結果は?」

「六属性まで使えるのかよ。賢者の再来じゃねえか。試験なんて、合格以外あのクレーターをみて言えるわけがないだろうが!」

 賢者?

 賢者といえば、ファンタジー世界に重要人物として、よく現れる存在だよな。

 この先、面倒な展開があるのかもしれないが、賢者とやらが、そう悪い立場ではないなら、この世界での立場も確立できるのかもしれないな。

 まあ、今は、試験の結果が、合格だったという事だけで満足しておこう。



 それから、興奮気味だったローランドさんは、すぐに冷静になったようで、近くにいた職員に、いくつか指示を出してから、俺を別室に連れて行った。


 連れていかれた部屋は、書斎机と書類棚や本棚がある執務室と言った感じの部屋で、その部屋の中にある応接セットに俺を座らせた。

「まあ、ハヤト君だったな。君は、少しやりすぎたが、何も悪いことをしたわけではない。だが、君の存在は、我々にとって、見逃すことのできない存在なんだ。詳しく話を聞きたいから、君の受付をした者を呼んでいる。すこし待っていてくれ」

「それは、先程、ローランドさんが一言漏らした賢者という存在に関係しているのでしょうか?」

「ああ、その通りだ。先程は言っていなかったが、俺はこのウエルムのハンターギルドのギルドマスターをしている。責任者というやつだな」

「ギルドマスターだったのですか。訓練場の結界の件、問題ないのでしょうか?」

「問題があるか、ないかといえば、ある。修理にそれなりの時間と金がかかるからな「まあ、君が協力的でいてくれたなら、問題にするつもりはないから、安心してくれ。それに、試験直前の俺の亜の言い方じゃ、訓練場を壊してくれと言っているようなものだからな」」

 俺が、この先に世話になるギルドなのだし、大きく不利になるような状況が来ない限りは、協力的でいるべきだろうな。

「わかりました。できる限り、協力します」

 それから、すぐにドアがのっくされ、声がかけられた。

「フォルスです。入ります」

「「フォルス、まずは、席についてくれ」

「はい、失礼します」

 狐耳の受付嬢さんは、フォルスさんというのか。

 フォルスさんも、俺が座る応接セットの席に月、話が始まった。


「マスター、ハヤトさんは、ごうかくでよろしいのですよね?」

「ああ、もちろんだ」

「でしたら、先に、ハンターギルドの説明をしておいた方が、よろしいかと思うのですが?」

「それもそうだな。フォルスに任せる」

「はい、それでは、、ハンターギルドの説明を致しますね」

 確かに、賢者とやらは気になるが、何かを判断するにも、俺には情報が少なすぎる。ハンターギルドの説明を、この時点でしてくれるのはありがたい。

「お願いします」


 ハンターギルドは、国の運営するギルドで、完全独立のような組織ではないという。

 だが、他の国にもハンターギルドや類似組織はあり、それらと連絡会を組んでおり、自国が不利にならない程度の情報交換をしているという。

 主な業務は、魔物などの害獣討伐が基本だが、依頼として、食肉の確保や、毛皮の確保、薬草採取も、積極的に行っている。

 また、国からの要請で、護衛業務から傭兵業務まで請け負っている。


 活動範囲は、かなり広いんだな。

 それにしても、傭兵業務もやっているのか。

 俺が言うのも何だが、魔法を使う者がいて、武器を持った者がうろうろしている世界なのだから、もし対人戦闘をする時が来たとしても、躊躇なく相手の命を奪える覚悟をしておかないといけないな。


 ギルドでは、クラスで受けられる依頼が決められており、ウッド、ロック、ブロンズ、シルバー、ゴールド、ミスリル、アダマンタイト、オリハルコンとクラスが分けられている。

 ハンターになりたての者は、ウッドクラスで慣らして行き、ブロンズクラスまで上がれば、一人前とされる。ミスリルクラスになると、一流とされ、オリハルコンクラスは、英雄的行動をした者のみが昇ることができるクラスとされている。

 実質の最高位とされるアダマンタイトクラスのハンターが何人いるかで、その国の国力や戦力がある程度わかってしまうので、ハンターギルドの質の維持は、国益と直結していると言えるらしい。

 国営なのだからといって、アダマンタイトクラスを無理に増やすと、質が悪い上位ハンターが産まれ、国力が下がり、全くいなければ、それはそれで、ハンター全体の質が悪いとも思われてしまう。しっかりとした管理が、必要なギルドというわけだ。


 なるほど、狩りをする集団という認識は、半分は合っているが、国防を担う組織でもあるわけか。

 街の出入りが自由だということに、引っかかっていたが、これが理由なのだろう。

 様々な経験を積むことで、質の良いハンターを保有することができるのだろうから、ハンターのある程度の自由は、必要というわけだな。


 その後に、依頼ボードの説明をしてもらい、白い依頼カードは、通常依頼で、黄色の依頼カードは、常時依頼、赤い依頼カードは、クラス分けが難しい依頼ということだ。

 依頼は、自分のクラスの下全部と、一つ上まで受けられるそうだ。

「以上がハンターギルドの説明になります。質問は、常時受け付けておりますし、図書室に規約が書かれた物もありますので、よろしければそちらもお読みください」

「わかりました。ありがとうございます」


 フォルスさんは、一仕事終えたような雰囲気となり、ローランドさんの番となった。



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