ハンターギルドと魔法士
ハンターギルドと魔法士
ハンターギルドのドアを開けると、カランカランとドアベルが良い音色で鳴った。
ドアベルの音色に反応するように、中にいた強面のハンターたちが、一斉にこちらを向く。。
正直なところ、かなり怖いのだが、先輩ハンターたちなんだよな。
こんなところで臆しても、しょうがないので、気を取り直して、ギルド内を観察する。
入って左側に、職員がいるカウンターがあり、右側には、テーブルエリアとその奥にバーカウンターがある。ここで打ち合わせやらをするハンターたちのために食事や飲み物を提供しているのだろう。
奥には、二階へ続く階段と、紙がいくつも貼られたボードがあった。あれに依頼が書かれているのだろうな。
丁度良い明るさの照明と空調が効いており、強面のハンターたちがいる空間だが、居心地は、悪くはない印象だ。
この照明と空調は、魔道具というやつなのかもしれない。
手が空いていそうな受付に向かう。
「ハンターギルド、ウエルム支部へようこそ。本日は、どのようなご用件でしょう?」
「ハンター登録をしに来ました」
「はい、ハンター登録ですね。この登録用紙に、必要事項を書いていってください。不明なところは、空白で問題ありません。代筆が必要なら、遠慮なくどうぞ。それと登録料に大銅貨一枚を頂くことになっております」
登録用紙と引き換えに、財布袋から、一番大きな銅貨を取り出して、渡す。
対応をしてくれた受付嬢は、獣人のようだ。
頭についている耳は、猫や犬とは違う感じがするので、狐だろうか。
それはさておき、登録用紙に記入をしなければ。
名前は、この世界で生きると決めたのだから、フルネームで、ハヤト・モウリと書く。
性別は男性で、種族は人間で問題はないだろう。
年齢は……、そういえば、あまり気にしていなかったが、若返っているんだった!
「あの……、恐縮なのですが、俺って何歳に見えますか?」
「え、年齢ですか……。そうですね。十八歳から二十歳くらいでしょうか」
「助かりました。ちなみに、この周辺での、成人年齢は、いくつになります?」
「このグランス王国の成人年齢は、十六歳とされておりますね」
「なるほど、ありがとうございます」
成人年齢が十六歳の国なら、この見た目で子ども扱いされることはないのだろう。
結局、少し悩んだが、間を取って、十九歳としておいた。
確か、コウジさんは、十歳ほど若返らすと言っていたのだから、二十九歳十一か月だった俺は、十九歳十一か月ということにしておくのが無難だろう。
それにしても、この周辺はグランス王国というのか。
まあ、やってきたばかりで、知らないことだらけだが、そのうち、いろいろわかってくるだろう。
次は……、職業だと!
ハンターじゃないのか?
「あの、職業というのは、何を書けば良いのでしょう?」
「一番使い慣れた武器に合った職業が良いと思いますよ」
使い慣れたも何も、威嚇程度のつもりで槍を持ってはいるが、何が得意かと、問われたなら、魔法と答えるしかない。
街までの道中で、ゲームに出てきそうな魔法をいくつもそうぞうしており、魔法創造で創造した魔法が、俺の生命線だと重要視している。
「魔法を使う職業は、何と書けば良いです?」
「属性の種類によりますが、魔法士か、治療士ですね」
魔法には、属性があるのか。よくわからないが気にしておいた方が良いな。。
とはいえ、今は、ハンターになるのだから、治療士ではないだろう。
なら、魔法士で……」
、魔法士を職業とする方は、魔法学院の卒業照明の提示をして頂くか、試験を受けて頂くことになっております。魔法士と言いながら、実は、生活魔法を少し派手にした魔法しか使えないという方が多く、そういう規則になっております」
「魔法学院は、通っていないので、試験をお願いします」
「わかりました。手配をしてきますので、しばらくお待ちください」
受付嬢が、席を外している間に、登録用紙に必要事項を、書き込めるだけ書いていった。
だが、残念なことに、ほとんど空白になってしまった。
出身地を、日本と書いても意味がわからないだろうし、特技に、日本で取った資格を書いても何の意味もないだろう……。
空白ばかりだが、一通り書き終えたところで、受付嬢が戻ってきた。
「試験は、今日行えますが、少し準備がいるようです。お待ちください」
「わかりました。それで、空白ばかりの登録用紙になってしまいましたが、これで大丈夫でしょうか?」
「はい、ハヤト・モーリーさんですね。完全に埋められる方のほうが珍しいので、問題はありません。それよりも、家名があるということは、どちらかの貴族の方でしょうか?」
登録用紙は、そういうものだったのか。それよりもだ。家名というか苗字を書いたのは、失敗だったか。それとモウリをモーリーと発音しているように聞こえる。
「いえ、俺が住んでいた場所の風習で、家名を付ける風習があるだけですので、貴族とは関係ありません」
「そういう地方もあるのですね」
それと、少し確認したいことがありまして、もう一度、俺のフルネームを読み上げてもらえますか?」
「え、はい、ハヤト・モーリーさんですよね?」
「ありがとうございます。文字を間違えて書いたかと思いました」
「ああ、そういうことってありますよね。自分のなまえでも、うっかりってことがあります」
子供の頃なら、自分の名前を間違えて書いたこともあるかもしれないが、大人になってからは、どうだっただろうか……。
それにしてもだ。どうやら、発音しにくいのか、文字がおかしいのか、モウリと言えないようだ。
こういうことは、気にしない方が、よいだろう。
あ、丁度良いので質問をしておこう。
「魔法士という職業について、俺の認識に誤りがあるといけないので、詳しく教えて頂けますか?」
「ええ、かまいませんとも、基本的に魔法学院出身の方が、殆どなのですが、希にどこかで修業をされてきたハヤトさんのような方もいらっしゃいますので、説明いたしますね」
魔法士とは、生活魔法と呼ばれるこの世界の人々のほとんどが、使える魔法よりも、強力な魔法を使える者たちのことだという。
魔法には、光、闇、炎、地、水、風の六属性と、希に使い手が見つかる天属性の七属性があり、さらに、下級魔法、中級魔法、上級魔法、特級魔法、戦略級魔法、天災級魔法があるそうだ。
魔法士は、光属性以外の属性を、上級魔法まで使いこなす物がなれるそうで、複数属性を使える者も少なくないという。。
治療士は、光属性を上級魔法まで、使いこなせるものが慣れるそうで、街や村の治療院に勤めていた李、ハンターとなり、前線で活躍しているらしい。
属性は、両親から受け継ぐことが多く、両親が魔法士だった場合は、両親の持つ属性のどちらかを受け継ぐことが多いそうだ。
もちろん、庶民でも、属性を持って生まれる者は、それなりの数がいるので、属性を持っていたとしても、しっかり訓練をしなければ、魔法士、治療師にはなれないそうだ。
コウジさんは、魔法の属性について、何も言及していなかったし、魔法創造では、属性に関係なく、魔法を創造できてしまうので、属性というのは、何か引っかかるな。
魔法の秘密のような何かがあるとしたなら、調べてみるのも面白そうだ。
それからも、魔法の属性と等級について、受付嬢が話してくれたので、その内容に合わせた魔法を創造していった。
属性が、わかりやすい方が、試験に合格しやすいだろうから、この場で作った魔法を試験で使おうと思う。
「……、というのが、魔法士と魔法の基本的なことになりますね」
「ありがとうございます。心置きなく、試験に臨めそうです」
タイミングよく、他の職員が、試験の準備が出来たと知らせに来てくれたので、その職員に連れられて、奥にあるという訓練場に、俺は向かった。