表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/19

エクストレージと地図の活用

 エクストレージと地図の活用


 翌朝、ハンターギルドに行くと、パンジーさんは、すでに到着していた。

「ハンターの朝は、早いんだな」

「ええ、依頼は、早い者勝ちですから、どうしても朝は、早めになってしまいますね。ですが、少し遅くに来て、残り物をじっくり選ぶハンターもいますよ」

「残り物を?」

「基本は、危険度や難易度と報酬金額が合っている物を選ぶのですが、一見それが釣り合っていなくても、内容をよく見ると、数が少なかったり、達成期日がやたらと長く設定されていたり、そういう一癖がある依頼が混ざっているんです。そういう依頼をじっくり見て探して受けるハンターもいるわけです」

「なるほどな、単純な依頼ばかりじゃないんだな」

「もちろん単純に危険度や難易度が報酬金額と釣り合っていない依頼もありますから、注意が必要ですけどね」

 依頼の受け方も、色々ある物だと感心していると、パンジーさんが、ブロンズクラスの依頼を受けていてくれた。

 依頼の内容は、東の森の中での、植物採取で、これを今日の達成目標とした。


 昨日と同じように、ウエルムの東門から出発して、東の森に向かう。昨日も歩いた道程なので、ペース配分もわかっており、昨日よりも早く到着した。

 そうして、森の中に入ったが、魔物とは、頻繁に遭遇することはなく、ホーンラビット、フォレストドッグ、ハンマーボアなどに、数回遭遇する程度で、それらを倒しながら、植物採取を進めていった。


 植物採取の依頼は、昼過ぎに終わり、今日はここまでにする。


 狩りを引き上げたのには、理由がある。

 森の中で、ビッグラットというネズミの魔物に遭遇し、それを数匹捕獲した。

 この魔物は、森の中だけではなく、街の近くにもいるそうで、実験する動物としては、最適に感じた。

 以前から考えていたのだが、天属性のストレージと俺の亜空間倉庫の違いについて、時間が止まる以外にまだ違いがあるのなら、調べておきたかったのだ。

 アイカのストレージには、生きたままの生物は、入らないらしい。

 だが、そのあたりの事は、俺の亜空間倉庫では、制限がないように感じていた。

 昨日の、薬草の群生地の近くまで戻り、実権を始める。


 まずは、ビックラットを入れてみると、すんなりと入ってしまった。

 出してみると、中で時間が止まっていただけのようで、ビッグラットは、元気のようだ。

 なら、ビッグラットを地面に置き、その周辺の地面を含めて入るか試してみる。

 特に何の抵抗もなく入ってしまった。

 地面だけ戻すと、問題なく戻り、ビッグラットを戻すと、こちらも問題がなさそうだ。


「アイカ、試しに入ってみる気はないか?」

「……、興味はあります。すぐに出してくださいね」

「ああ、必ず出す」

 アイカに触れて、入れてみると、問題なく入り、十秒ほど数えて外に出してみた。

「どうだった?」

「入ったと思ったら、すぐに出ていました」

「アイカを入れてから十秒ほど、数えてみたのだが、そのあたりの感覚は?」

 全くないですね。中では、完全に時間が止まっているようです。もう一度、入ってみましょうか?」

「もう少し長めに、してみるぞ」

 アイカを再び亜空間倉庫に入れて、体感で一分ほど経ってから、外に出した。

「どうだった?」

「さっきと同じで、入ったと思ったら出ていました」

「体調に変化は?」

 アイカは、全身を動かしてみたが、問題はなさそうに見える。

「まったく問題無しです」

「わかった。次は、群生地が、入るか試してみる」

 群生地に手をつけて、亜空間倉庫に入れと念じると、間然に、収納してしまった。

「円柱状に穴が開いているようだな」

「そのようですね。もしかして、これをエストガルで使うつもりに?」

「あの帝都を隕石や大魔法で、破壊することを惜しく感じていたんだ。これなら、帝都をそのまま残せるし、必要な者だけ、捉えて残すことができる」

「確かに、エストコルダは、美しい帝都だと思います。それに、兄様は、内戦を起させるつもりだったようですが、街をいくつも潰していたら、内戦が起きませんよね」

「ああ、そのあたりは、何とか調整して、内戦が起こるようにしようと思っていたが、無駄に人が死ぬのも、良くないとも思い始めている。あの国ごと乗っ取る方がもしかしたら、良いかもしれない」

「正解なんてないのですからね。エストコルダの掌握だけを、まずはやってみて、その後は、様子見という手もありますから。私は、表向きは、あの国の勇者なのですよ。皇帝の悪政を正すために立ち上がったとか、一応大義を掲げることだってできるのです」

「そうか、アイカのあの国での表向きの扱われ方は、聞いていなかったな」

「裏ではひどい目に合っていましたが、表では、希望の勇者様でしたよ。なので、それなりに、支持は、得られると思います」

「まだまだ、話し合いが必要だな」

「ええ、すぐに決める事ではありません」


 ついうっかり、パンジーさんが、この場にいることを忘れてしまっていた……。

「あの……さっきからやっている物騒な実験と今の話、私が知っても良かったのでしょうか?」

「エストガル帝国と二人で戦争するっていう話は、ローランドさん経由で、この国にも話は投資てあるんだ。パンジーさんは、貴族令嬢だと聞いているし、そういう立場なら、そのうち俺たちのやることも知るだろうから、まあ、良いんじゃないかな」

「二人で、エストガル帝国と戦争ですか……、勝てるのでしょうか?」

「強引やるなら、ポルニア半島の形を少し変えてしまうかもしれないが、勝つというよりも帝国を消滅させることは、可能なんだ。だけど、他の方法がないか、考えている」

「賢者というのは、そこまでの存在だったのですか……」

「まあ、賢者って言っているのは、元々グランス王国側で、俺としては、便利にその名を使わせてもらっている程度なんだ。この件に、パンジーさんを、関わらせるつもりはないから、あまり気にしないでほしい。俺たちは、ローランドさんが言っていた通りにパンジーさんには、常識やハンターのあれこれを教えてもらいたいだけだから」

「強い力を持っていても、常識がないと暮らしにくいですものね」

「そういうことだから、気にしないで、色々教えてくれると助かる」

「わかりました。今からは、どうします?」

「うーん、実験もできたし、ウエルムに戻ろうか」

 群生地を元に戻し、ビックラットを三匹、生きたまま亜空間倉庫に入れて、時間経過でどうなるかを観察することにした。

 ついでに、亜空間倉庫の呼び出す時の名称を、変更できるようだったので、エクストレージと変更しておいた。


 そうして、ウエルムに戻、東門のハンターギルドの支部で、依頼の品や森の中で倒した魔物たちも引き取ってもらった。

 まだ、日は高く時間もあるので、町中の武具屋や古着屋などを周り、アイカがストレージに入れていた余分なものを処理していった。

「そういえば、パンジーさん、ウエルム周辺の地図って、どこで売っているんだ?」

「ハンターが使う物なら、ハンターギルドの売店にありますよ。それ以外の国や地方などの地図は、本屋ですね」

「兄様、エストガル帝国とグランス王国の絵地図なら、私が持っています」

 生体強化のおかげなのか、コウジさんのところで見た世界の地形を細部まで、しっかり記憶しているので、それで計画を考えていたが、頭の中の地図が正確だとしても、実際に使うのは、こちらの絵地図なのだから、もっと活用しないといけないな。


「では、ハヤトさん、売店でウエルム周辺の地図を購入しましょう」


 三人でハンターギルドに戻、売店でウエルム周辺の地図を購入し、受付前のテーブルエリアで眺めることにした。

 ウエルムを中心に西門は、セントール王国への街道となっており、南門は、ある程度言ったところで、エストガル帝国への街道と、王都への街道に分かれていた。

 東門は、最終的に森に辿り着くのだが、その手前にいくつか村があるようだ。

 村々は、東以外にも街道沿いにいくつもあるそうで、村からの依頼もハンターギルドには、良く届くとパンジーさんが教えてくれた。

 北側には、森があるが、魔物はほとんど住んでいないそうで、街の中で使う材木や山菜などが摂れる森になっているそうだ。

 こういう人によって管理されている森を、日本だと里山とか、言っていたな。


 それからもパンジーさんから、ウエルム周辺の情報を聞き、アイカが持っていた筆記具を使い、地図に書き込んでいった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ