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群生地と魔撃銃誕生秘話

群生地と魔撃銃誕生秘話


ウエルムの東門を出た俺たちは、薬草の群生地に向かった。

パンジーさんが言うには、街の周辺でも薬草の採取は、できるそうなのだが、そちらは、ハンターになりたてのウッドクラスの者に譲る慣習があるそうだ。

ロッククラスになると、魔物討伐の依頼が受けられるそうなので、森の近くの魔物が出没する可能性のある群生地に行くのが、お決まりのパターンだという。


道中、魔撃銃の誕生秘話を聞きながら、一時間近く歩くと、群生地に到着した。

ここから先は、森になるそうで、主にブロンズクラスの狩場になるらしい。

距離的に丁度良い森なので、狩りに慣れるには良さそうだな。

明日は、この森を朝から散策するのが良いかもしれない。


採取セットから、採取ナイフと採取袋を取り出し、パンジーさんの指示に従いながら、薬草を採取していく。

ここで採取できる薬草は何種類かあるが、一番採取できるのは、回復薬の基礎となる薬効を持った薬草で、採取場の半分ほどまでなら採取しても問題ないらしい。

数日もしたら、また元に戻るそうなので、採取に来た者が、常に、採取可能の薬草の半分を残していけば、問題にはならないと言われた。

常に半分だけ、採取していけば、乱獲でもしない限り、常に残っている状態になるので、そういうルールがあるのだろう。


作業をしながら、魔撃銃の開発秘話をさらに聞いていく。


初めは、短杖の先に、魔石を付けて、ミスリルの金属糸を手元まで伸ばし、それで、調整した同じ強さの炎魔法を打てるようにしていたそうだ。

まともに考えると、この方法なら、自分の魔力をそのまま注ぐことになり、一定の火力が常に出せるので、公立も良く、悪い方法ではないということになる。

だが、炎属性のみを使うパンジーさんとしては、多様性がないことに不満があったという。

それは、魔法学院在学中にハンター登録をして、魔物の素材を得るために魔物討伐を行った時、回収した素材が、火力の調整ができないことで、質の悪い物しか得ることができず、この事態を何とか改善するべきだと思ったからだった。

そこで、初めに手を付けたのは、炎属性以外の魔法を使うことだった。

他属性の魔法陣を使った短杖を用意して、実権をしたが、単純に魔物の素材を得るだけなら、これでも良いが、多様性という部分だけを取ると、一族性に一魔法という、炎魔法の時と、あまり変わらない状態だと感じてしまった。

そこで、注目したのが、火力を段階に分けて調整する方法だった。

初めは、大、中、小、の三つで短杖を作り、最低限の多様性を持たせることはできた。

だが、実戦となると魔物の種類や、攻撃方法で、火力を変える必要があり、三つの杖を使いこなすのは、思った以上に大変だった。

そこで三つの火力を切り替えられないかと試行錯誤した結果、シリンダーの発想が生まれ、それに合った魔法陣を作り、幾つもの試作品の末に、拳銃型の魔撃銃が完成したという。


何もヒントのない状態で、拳銃の形に近づけたパンジーさんの発想力は、天災的だと思う。

だが、初めは、直接魔力を注入していたのが、シリンダーを使うために、充填方式になってしまったのは、魔法士としては、辛いところなのだろう。

地球の技術で、応用が利きそうな物はないだろうか……。

こちらの技術で、金属糸は、作れるようなのだから、そのあたりをうまく使えば、何か突破口がありそうな気がする。

単純にオートマチック式の拳銃やサブマシンガンのような物を提案するよりも、この世界というよりも、パンジーさんの発想には、リボルバーが合っていそうだから、リボルバーで、素材や仕組みを考えなおしていくのが良さそうだな。


そんなことを考えていると、森の方から、東門を出て、ずっと展開しているサーチに反応があった。


「パンジーさん、森に何かがいるようだが、この場所だと、どんな魔物が出没する?」

道中の会話で、多少だが、着やすく話せるようになっていたので、言葉も崩している。

「一番多いのは、ホーンラビットですね。次に多いのは、それを狙うフォレストドッグでしょうか」

「私がちょっと間引いてきます」

「アイカさん、ホーンラビットの討伐部位は、角で、フォレストドッグの討伐部位は、犬歯なので、取れたらよろしくです」

「気を付けてな」

「はい、行ってきます!」

バリアフォームを纏ったアイカは、森に入って行き、俺のサーチの反応が、次々と消えて行った。

しばらくして戻ってきたアイカは、首のない兎を幾つか持ち帰って来た。

「犬は、おいしくなさそうなので、犬歯だけ、取ってきました。ウサギの角と犬歯は、これですね」

兎の角、四本、犬歯、六組を見せられた。

「ホーンラビットは、そのまま血抜きをして、ハンターギルドに持っていくと、そこそこのお金になりますね」

「それじゃあ、血抜きが終わったら、俺が預かる」

「はい、お願いします」

それからも、パンジーさんに、いくつかの薬草の見分け方と採取方法を教わりながら、うさぎの血抜きが終わったのを確認して、ウエルムに戻ることにした。


帰りの道中では、魔撃銃の改造に役立ちそうな、俺にとって未知の金属であるミスリルの特長について教えてもらった。

ミスリルは、魔力を受け流す性質があり、それを利用して、魔道具の基盤のように使うことが多いらしい。

用途に合った魔法陣を彫り込み、それと魔石を組み合わせて、複雑な魔道具を作れるそうだ。

杖に使う時は、内部にミスリル糸を仕込み、手元から先にある魔石に魔力を流し、魔法を発動させたりもできる。


魔力に対する抵抗力が高いから、受け流すことができるのかもしれない。それに比べて木材やらの方が抵抗力が低く、吸収するのかと思いきや、ミスリルに乗った魔力は、そのままミスリルの上を流れる性質もあるという。

中には流れないが、表面を流れるというのだろうか。

例えば、全ての部品をミスリルで魔撃銃を作ったなら、どうなるかを聞いてみると、魔力が、分散してしまい、望む機能どころか、全く動作しなくなるという。

うーん、よくわからない性質だな。

ミスリルの板を手に入れて、実権をしてみたくなる性質だ。


ミスリルについて、話を聞いているとウエルムの東門に到着した。

東門に入ると、ハンターギルドの納品専門の支部があり、そこで薬草と兎や犬歯を納品して換金できるそうだ。


ドアを開けると、いつものドアベルの音色が聞こえ、こちらでも強面のハンターたちが、一斉に俺たちを見た。

恐ろしいので、さっさとカウンターに行き、納品作業を行う。

カウンターにも、強面の人物がおり、一瞬だけ臆したが、さっさと作業を済ませることにした。

あれこれと話していると、どうやら怖いのは顔だけで、親切な人物で、状態が悪い物があれば、どう悪いかを一つずつ教えてくれた。

兎は、頭を残しておいた方が、価値が上がるそうなので、喉元を切り裂くなり、毛皮をなるべく傷つけずに倒せば、高値が付くそうだ。

明日は、俺がやってみるか。

薬草の方は、俺とアイカが採取したいくつかは、指導を受けたが、全て問題なく納品できた。

ついでなので、防具屋武具の買取をやっているのか聞いてみると、あまり高い物は買い取らないが、物によっては買い取ってくれるそうだ。

アイカのストレージにある防具をすべて出して、見てもらうと、状態の良い物は、防具屋で売るように言われ、痛みがひどい物や壊れている者を引き取ってくれた。

こういう物を少し修理して、初心者用に売り出すそうだ。

武具も一通り見てもらったが、全て武具屋で売るように言われてしまった。

次にこういう機会があれば、先に武具屋と防具屋に行ってから、こちらに来るべきだな。


そうして、納品と買取が終わり、広場に行き、ここで、パンジーさんと別れることになった。

「今日はありがとう。明日は森の中に朝から行ってみようと思うのだが、パンジーさんは、大丈夫か?」

「問題ないです。それじゃあ、明朝、ハンターギルドに集合ということで。また明日もよろしくです」

「それでは、また明日」

「また明日です」


そうして、パンジーさんと別れて、俺たちも木花館に戻った。


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