プロローグ
ノエマと申します。よろしくお願いします。
作者は、視覚障碍者一級ですので、どうしても、誤字脱字が多くなると思います。
ですので、誤字報告は歓迎しております。とはいえ、脳内変換できる方は、そちらもお勧めします。
それでは、とにかく書いていきましょう!
プロローグ
昼過ぎからの打ち合わせということで、昼食を早めにすまし、会社をでたのに、急なキャンセルとは、切なくなる。
とはいえ、あちらさんの現場で何か事故があったというのだから、こういう時は引くのも仕事の内だ。
すぐに会社に戻る気にもなれないので、適当に喫茶店やらで時間を潰そうと、周囲を見回していると、交差点で大学生くらいの娘が信号待ちをしていた。
なぜか、彼女から目が離せず、彼女とその向こうの交差点を眺めていると、トラックが暴走しながら交差点に入ってきた。
驚いていると、なぜか体が勝手に動きだし、信号待ちをしていた娘を交差点から離すように突き飛ばしたところで、俺の体が空を舞った。
強い衝撃で全身に痛みを感じ、来月の誕生日で三十路に突入する予定だった俺の人生は、二十代のまま終わりを迎えるのだと、革新しながら意識は沈んでいった。
意識が浮上する。
瞼を開けるとテレビで見るような宇宙が瞳に飛び込んできた。
どうなっているのかと、驚いて上半身を起こすと、宇宙空間に畳が数枚浮かんでいるという、よくわからない空間にいるようだ。
ちなみに俺は布団に寝かされていたようで、その少し先には、ちゃぶ台があり、親しみやすそうな顔をした老人が、こちらを眺めていた。
混乱しながらも、何とか声を出してみる。
「あの……、ここは?」
「ここは、わしが作った空間じゃのう。毛利隼人君じゃったかな。体に異変はないか?」
全身を触ってみたが、しっかり肉体がある。
と、いうことは、死んでいない?
「はい、毛利隼人です。俺の記憶の最後は、暴走したトラックに跳ね飛ばされたところなんですけど、体は大丈夫のようです。どういうことなのでしょうか?」
「うむ、詳しく話すから、よく聞いておってくれ」
そこから聞いた話は、夢だとしか思えないような内容だった。
この俺の目の前にいる人物は、高次元生命体という存在で、地球とその並行世界をいくつか管理しているのだという。
ちなみに、コウジさんと呼んでほしいとのことだ。まあ、名前は大切だよな。
あの交差点の娘は、大学を卒業した後、数年間、大手の会社に勤めて、そこで出会った男と結婚するそうだ。その間に産まれる男の子が、将来の地球世界を大きく進歩させる発明をするという。
だが、その因果は、完全に確定しておらず、あの瞬間を彼女が生き残ることで確定するそうで、どうにか彼女を生き残らせるために、様々な手を撃ってきたが、どれも上手くいかず、最終手段として、近くにいた俺の体を操作して、彼女を助けることに成功したということだった。
そうして、俺は、一度死亡して、体を再生してもらい、ここにいるという話だそうだ。
夢なら、そのうちに目が覚めるだろうから、今は、鵜呑みにしておこう。
「……、彼女は、助かったんですね。なんていうべきか迷いますが、俺の命が地球の将来の役に立ったというのなら、それはそれで喜ばしいと思います」
「万策尽きていたとはいえ、君の命を奪ってしまったことは本当に申し訳なく思っている。そこでだ、わしが管理している地球の並行世界のどこかで、特別な能力を与えるから新たな生活をしてみんかね?」
「俺のいた地球には、もう戻れないんですか?」
「一度死んだ者を、同じ世界に同じ状態で戻すことは、よほどの例外がなければ、無理なんじゃ。君の場合、記録上では、一般人が死んだだけということになっておる。すまぬのう。別の方法として、君の記憶を完全に消して、転生させることは、可能じゃ。だが、それでは、君の命を強制的に奪ったことの罪滅ぼしにならんだろう」
両親より早く死んでしまったことは、申しわけなく思うが、結婚もしていないし恋人もいないのだから、異世界に逝ってみるのも悪くないかもしれないか。
「そういうルールなのですね。わかりました。辛いですが、別の世界でお願いします」
「理解してくれて助かる。しっかり能力は付けさせてもらうからのう。それでじゃ、わしが管理をしておる世界に行ってもらうのじゃが、いくつか候補がある。地球と同じような文明を持っているが、少し進んでいる世界、地球と比べると多少文明は、遅れておるが魔法のある世界やらがある。多にもいろいろあるから、希望があるなら言ってくれ」
「魔法ですか。面白そうですね。魔法のある世界の中から選びたいと思います」
それから、魔法のある世界を幾つか提示され、結局選んだのは、中世から近世程度の文明で、剣と魔法のファンタジーな物語にありそうな世界とした。
同じような世界はいくつもあったが、最終的にこの世界を選んだ最大の理由は、世界の大陸やらの形が、地球と似ているからだった。
完全に知らない世界よりも、少しでも知っている感覚が残っている世界の方が、まだ過ごしやすいと考えた結果だ。
「世界が決まったし、次は、君の姿じゃが、どうしたい?」
「俺の日本人的な顔や姿って、珍しかったり、何か悪いことがあったりしますか?」
「いや、多くはないが、それなりにいる系統じゃから、そう目立ちはせんじゃろう」
「なら、病気やら怪我が怖いので、そのあたりをなんとかしてもらえると助かります」
「姿は、いじらんのか、なら、能力付与として生体強化をしておこう。それくらいならすぐにやれる。ついでじゃから、十歳ほど若返らせておくか」
「若返りもですか、ありがとうございます」
「それでは、少しの間、目をつぶっておいてくれ」
「はい」
目をつぶると、すぐに体が内側から熱くなり、しばらくすると収まった。
「目を開けてよいぞ。全体的に能力を上げておるから、筋力や体力はもちろん治癒力や免疫力やらも上がっておる。ついでに、魔力を多く蓄えられるようにもしておいたぞ。次はどんな能力がほしい?」
「あ、異世界に渡るんですから、言葉がわかるようにしてもらえると助かります」
「うむ、それは、必要不可欠じゃな。言語習得の能力を付与しよう。これは意味のある言葉なら、一度聞いてしまえば、その場で使いこなせるようになる。ついでに文字がある言語なら、文字も一瞬で覚えられる能力じゃな。まだまだ世界の進歩を進めるための犠牲になった命の対価としては足りん。他はどうじゃ?」
「うーん、なら、魔法がある世界に行くのですから、魔法をすぐに使えるような能力はどうでしょうか?」
「それなら、魔法創造という能力がある。世界の理を大きく変えるような魔法の創造はできぬが、君が思いついた魔法をすぐに使えるようになる能力じゃ」
「世界の理を変えるような魔法とは、どんなものがあるのでしょう?」
「細かくはいろいろあるが、もしそういう魔法を創造しようとしたら、何か警告でも出るようにしておこう」
ここで聞いてしまうと悪影響でも出るのかもしれないな、ありがたく貰っておくだけにしよう。
「それなら安心ですね。では、その魔法創造を、お願いします」
「これに亜空間倉庫の能力も付けておこう」
「至れり尽くせりで助かります」
「礼をしておるのはこっちじゃ。おまけといってはあれじゃが、ひつようになりそうなあれこれを亜空間倉庫の中に入れておくからの」
「異世界でも、なんとかやっていけそうな気がしてきました」
「最後に、どんな場所へ降りたい?」
「うーん、知らない世界の森の中に降ろされても、何の情報もなくて困り果ててしまいそうです。ですので、ほどほどの街の近くに降ろしてもらえると助かります」
「賢明な判断じゃな。良い雰囲気の街の近くに降ろすから、そこで、常識やらを学ぶと良い」
「助かります」
「うむ、上手くやると良い。それでは、また布団の中に入ってくれ、魔法創造やらを付与するには、起きていてもらうと無理なんじゃ」
「わかりました」
言われるままに布団に戻り、横になる。
「次に目覚める時は、希望通りの場所となるからのう。それでは、死ぬことはないじゃろうが、そのうちに様子を見に行くから、それまで元気でな」
「え、死ぬことがない?」
大きな疑問を残して、俺の意識は沈んでいった。
五話当たりから、勇者ちゃんが出てくる予定ですが、予定は未定ということで……。