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夢なんてない

私、木原栞、男。高校2年。春休みだから実質3年。

毎日グダグダ自堕落に過ごしてる。何もやる気がかおきない。母と教師が進路どうするんだってせっついてくるからだ。母子家庭だから父に言われないだけましなんだろうが。


なりたい職業もないし勉強する気も起きない。したいことがないんだ。未来に夢がない。


夢っていうか願望ならあった。それは英雄になること。でも現代だぜ?なれたってプロゲーマーとか、ユーチューバーとかが関の山。私がなりたいのは剣を振って敵を殺す、そんな生々しいまでの英雄。


だから自堕落にゴロゴロしてるんだ、だって頑張ったって楽しいことはおこりえない。あー異世界転生がしたい。そこだったらがんばるんだがなぁ。 なんなら戦国時代、いや、やっぱ魔法うちてー。


やるせないと言えばいいのか、わからないがとにかく無気力で何もやる気がおきない。お腹が空いてきたような気がする、カップ麺があったはず。あーいや。眠いし寝てからでいいやぁ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


何の変哲もない十字路。人通りが多く混雑している。信号が変わり青になる。人が流れた。黄色になり赤になる。

間に合わなかった。車が横切っていく。買い物袋を持って手持ち無沙汰にまっていると、向かいの男と目があった、薄ら寒い笑みを浮かべて、手をポケットに突っ込んでいる。


青になる。私は歩き出した。男は動かない。私が男のよこを通ろうとしたとき、男は手をポケットから。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


変な夢だった。よくわからない。そういえば、母さんが買い物に行ってたはずだ。あんな夢の後だ、何もなければいいが。

ブルルル!ブルルル!

スマホがなっている。まさか、な?少し不安になり、慌てて画面をみる、090-xxxx-2219、知らない番号だ。電話に出る。

「はい、木原です」「木原美里さんの息子さんですか?」

知らない声に不安が大きくなる。

ゴクリ、と唾をのみ答える。

「はい、そうです」

絞り出した言葉は震えていた。

まさか。まさか。

「落ち着いて、聞いてください、木原美里さんは、なくなりました」「....はい。」「宮園町の鹿通り交差点で通り魔に心臓をひとつき、即死だと思われます。それで...」


そこからはあまり覚えていない。覚えていることは犯人はカメラから特定できたが捕まっていないことくらいだ。


4日経って葬式をあげた、作法とかわからなかったがお坊さんが教えくれた。焼香くらいはしたかったからありがたい。お経の間感謝とか後悔とか親孝行してないなとか、心がざわついた。

葬式は親戚が仕切ってくれたから滞りなくおわった。葬式の帰り、親戚のおじさんに家の近くまでおくってもらった。少し歩きたいから、早めにおろしてもらった。

ぼーっと、歩く。ほんとに、生きる理由がなくなったなぁって思いながら。少しすると人がみえた。母を刺した男がみえた。男は手にナイフをもっていた。


男が襲いかかってくる!

男がナイフを腰の横で両手に持ち心臓を狙う突きをはなった!私はとっさに手でナイフを受け止めた!

燃えるような焼けるような激痛がはしる!

男はナイフを離し、腰をひねり頭を狙った蹴りを放つ!私はナイフを掴んだ両手を上げ防ごうとするが受け止めきれず転んだ!

男は倒れた私に馬乗りにまたがり、頭を執拗に殴る!痛みと恐怖で私は目を閉じ夢中でナイフを突き出した!

手になにかを裂いたようなえもいえぬ手応え。拳はこない。


目をあけると、男の心臓にナイフが刺さっている。私は男を殺した。


私は人を殺した、その事実に震えた。恐怖に、ではない、愉悦に、だ。いや、人を殺したことそのものには何の感慨も抱いていない、そればかりか気持ち悪いと思う。

だが、勝った。そう、襲ってくる敵を倒し、勝ったという事実に喜びを感じた。現代ではできないと思っていた戦闘に勝つ、ということに。



男をどけナイフをぬいた。意識が朦朧としている。頭から血が出ていた。アァ、これで死んでは引き分けではないか、そんなことは許せない。そうだ。自殺すれば良い。ああ、次があるなら英雄に。


私はナイフを自分の心臓に突き刺した

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