03・今日のお宿は素敵なお宿
言わずもがなの説明回3
(えっと、ここ右行きーの、大きい十字路で左だっけね。わかりやすくてよかったー。4回以上曲がれの指示出されてたら覚えらんなかったわ)
かなり儲かるとは聞いてたけども、高級なお宿でも6回はフルコースでお泊りできる金額を手に入れられたと聞きかなりかなり心に余裕ができた。
しかも諦めていたMSの臨時収入でだ。
明日の素材はいったいいかほどになるやら、ぐへへ。
まぁ、とにかくお宿だお宿。まだ暗くはなってないが、夕焼けキレイって感じだ。時間の問題だろう。
紹介されたお宿はなかなかお高いらしいし、そうそう満員になることもないと思うが、急いで悪いこともないだろう。
(この世界時間の進み方おなじなのかなー。時計が欲しい)
アニ様に取り急ぎ説明された程度の知識しかないので、わからないことはさっぱりわからない状態だ。
一般常識の収集は急務だろう。
(と、おお、なんかあそこだけおしゃれの格がちがう。多分あそこだな)
言われた通りの道を歩くと、確かにわかりやすい建物があった。
【ユメミヅキヨの宿】間違いなさそうだ。
近づいていくと、入り口に門番がいるのが見える。しかも2人も。
(え、ちょ、嘘だろ。町の入り口にもいなかったくせに。え、ど、どうしよ、こ、こわ…い)
こちとら仕事以外は家にいるタイプの人間だ。
悪いことしてなくても警察も門番もこわい、こわいの。
オロオロと少しずつ近づいていくと門番の人に声をかけられた。
「ご宿泊ですか?」
(怪しかったんだろうか、怪しかったんだろうかっ)
「は、はい。ぎ、ギルドの方に私ならここがいいだろうと言われまして」
(お、落ち着けー、落ち着けー。どもるな、きょどるな、余計怪しく見えちゃうから。奮い立て私)
「ギルドの方からナキ様という方がこちらにご宿泊なさるだろうというお話をいただいております。お客様がナキ様でよろしいでしょうか?ギルドカードをお見せいただけますか?」
「は、はい。ナキです。ナキと申します。カードはえっと、お願いします」
「はい、結構です。では、わたくしがご案内いたします」
両手に持って名刺のように差し出すと、門番さんは受け取ることなくチラリと確認するだけで、中へ案内してくれるようだ。
頼みますよ。ともう1人の門番の人に声をかけると、扉を開いて中に招き入れてくれる。
(お嬢様気分ー。なんて恐れ多い)
「そう固くならなくても大丈夫ですよ。ランガルド様よりこの町にいらしたばかりのようですので、ご不便無いようサポートするように。と仰せつかっております。何か不自由がありましたら、私に限らずスタッフに何なりとお申し付け下さいませ」
「はい、ありがとうございます」
そうこうしているうちにカウンターに到着する。
「ランガルド様のご紹介でこちらにいらして下さったナキ様です。お願いしますね」
「かしこまりました、ノーマン様。ようこそいらっしゃいました、ナキ様。本日はシングルルームにご宿泊でよろしいでしょうか?」
「はい、それでお願いします。あの、お風呂もいただだけると聞いたのですが、どうすれば入れるのでしょう」
「かしこまりました。お風呂の方は入る前にカウンターの方でお申込みいただいております。料金をお支払いいただいた後、片方の手の親指の爪に魔力スタンプを押させていただいております。スタンプは3刻で消えますが、消えるまでなら何度でもご入浴いただけます。ですが、入る前に消えてしまった場合でも払い戻し、再スタンプ等は承っておりませんのでご了承くださいませ」
「はい、わかりました。ありがとうございます。では、失礼します」
一通りの説明を受けカードをもらう。鍵らしい。
部屋に向かうことを伝えると
「「ごゆっくりおくつろぎくださいませ」」
声をそろえて頭を下げられる。
(とりあえず部屋に行って服を買おう。このキラキラVIP対応に村人的布の服は浮いて浮いてしょうがない)
********
部屋は22号室
完全にちょっといいホテルだ。テレビとかは無いけど。
トイレは…、いえす!水洗っぽい!
窓側に小さめの椅子と机があるので早速そこに座りショッピングを開く。
とりあえずまず携帯ゲーム機買い戻したのは言うまでもない。メモカ、充電器、収納ポーチなど生前使ってた一式、やりこんだデータ含め1万5000MC也っ!
「パジャマ、子供で…。ぴぃやーーー、かわええー。あ、ミミックぐらしだ。はじめちゃんに着せたーい」
画面の右端にある、マウスの真ん中のボタンみたいなコロコロをコロコロすると、画面が下に移動していく。
よく見るとコロコロの下にボタンがある。
ぽちっと押してみるとウィーンと漆黒のボディを伴ってコロコロがせり出てくる。
引っ張り出すと、これは、マウスっ!
同じようなボタンが画面の下にもある。
押して出てきたのはキーボードっ!
おいおい、便利だな。
あ、これもう、まんまPCですわ。つかいやすーい。
コロコロコロとネットショッピングを楽しんでいるといつの間にか2時間ぐらい過ぎてた。
あ、懐中時計買いました。黒い本体に青で数字が書いてあり、中心の歯車が少し透けてるシンプルだが地味ではない可愛い時計だ。蓋にはツタがおしゃれな感じに彫られてる。いや、飛び出てる?
異世界に来たならやっぱり懐中時計はいるよな。とりあえずプッシュオープンを30回ほど楽しんでからしまった。
時間の進み方が同じかはまだ調べてないけど、どのくらい時間がたったのか自分で確認できないのは結構不便だった。
後は戦闘服としてカーゴパンツと口元まで隠れるハイネックパーカーとやら、チャックも付いた編み上げブーツ。
ガンベルトはつけられるものがなかった、サイズ的に。
仕方ないので帆布のウエストポーチを買った。レッグバックみたいになった、これはこれでテンション上がる。漫画みたいで。
その中にポイポイっと収納。
あ、今日ゲットしたジュエルは2丁めの銃になりました。
ちなみに形はベレッタ92Centurion縮小版だ。んあああああ、いいっ。
手数は多いほうがいいから仕方ないね。MPが少ないので別で貯めておける魔力ストッカーのアドバンテージはでかいのだ。
発電はまた今度や。
後はパジャマとお風呂グッズ。
もう割と風呂入って寝たいので、結構最初に買った。
なのにネットショッピングって気づくと時間たってる。不思議だなぁ。
そしてお金も無くなってる。不思議だなぁ。
残金5000MCきったぜマジかよ。
カセットコンロ買うのはやまったかなー。
さてさて、ひと段落したしお風呂に行こう!
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冷蔵の魔道具で冷えたコーヒー牛乳を飲み、至福の吐息をもらす。
はぁ、いい生活してるわー。
どうでもいいけどコーヒー牛乳って割と好み分かれるよね。私は森〇派。
お風呂、すごかった。
古き良き銭湯のレベルじゃないハイなセンスで作りこんだシンプルで落ち着きがありながらも品のある、一言でいえばおシャレセンス迸るお風呂であった。
ほんと、このホテルだけ異世界感あんまないなー。
まぁ、お風呂に関しては半分の原因は私が持ち込んだお風呂グッズだがね。
ガーゼ生地のマシュマロのように柔らかなパジャマもいい感じだ。
晩御飯代わりのひえひえみたらし団子をかじりながら、明日の服だけ机に準備していく。
いつもは晩御飯ガッツリ派だがなんだがあまり空腹を感じなかったので今日はモチっとみたらしで終了だ。
準備も終わり就寝の準備が整った。
あ、洗面所にコップと布が置いてあって、なんじゃろ?と思ったら布の袋にはみがきって書いてあった。
布で拭くんだーー、すげーーー。と思いながら、ショッピングで歯磨きセット買った。
ベットに上がって早速買い戻した携帯ゲーム機の充電を開始する。
流石にゲームする気力までは無いけど、ムービーだけ鑑賞しよう。
世界一いい男に元気だったかをいただき、元気を頂戴した。
キャラ武器使いたかったけど手甲ムズ過ぎやんな。
攻撃あたんないしガードもできない、できないよ。すーぐ銃or薙刀に戻した。
さあて、ムービー見てもやっぱ気力戻らないし寝るかなー。
あ、でも、禊だけ行きたいし1回だけ回ろ。1回だけ。
そのあとすぐ寝たかはお察しの通りだ。
朝ゲームを持ったまま起きた私はとりあえずゲームをしまい準備していた服とお風呂セットひっつかんでカウンターにGOした。
朝はシャワー浴びないと目覚めないタイプだ。洗面台で顔洗えないタイプともいう。
皆器用過ぎない?どうやって水こぼさないであの狭い範囲で顔洗うの?
「あの、お風呂をいただきたいのですが」
「…っ、かしこまりました。スタンプを押させていただきます。手をお貸しいただいてもよろしいでしょうか」
ほんの一瞬、え?って感じの顔をされたが、すぐにきれいな笑顔で対応してくれる。
会話はできても手をカウンターの上に乗せることができない私のために、お姉さんが出てきてスタンプしてくれた。
(やっぱ、朝もお風呂入るのって珍しいのかなー)
きっとあの間はそういうことだと思う。
予想通り誰もいない貸し切り状態のお風呂を満喫した。
冷やしたコーヒー牛乳の旨さを再度実感しながら、朝ごはんの準備を始める。
昨晩軽めにすましたからか、朝からモーレツに腹減りである。
1階にあるレストランで食べるには最早予算が心もとないのと、無性にエビマヨが食べたくなったのでショッピングでお買い物だ。
電子レンジほしいなーと思いながら昨日買ったカセットコンロと鍋使って湯せんでご飯とエビマヨとハンバーグを温める。
や、買ってもまだ使えないんだけれども。ワット数がたらないから…。急務だなー。
お手軽なのに驚きの旨さなおかずに戦慄しながらぺろりと平らげ、魔物を狩りに行くための準備を始める。
歯磨きよーし、仮面よーし、銃は2丁ー、チャージもよーし。
あ、銃のスペックは両方攻撃力+1、ストック1だよ。
確認している間によく通る鐘の音がする。サーラが言っていた8刻に鳴る朝の鐘だ。
同じだったらラッキーくらいの気持ちで懐中時計を8時に合わせる。これでお昼の鐘が12時に鳴れば時間の進み方は同じということになるはず。
よし、準備万端である。ギルドに行こう。
「おはようございます」
「おはようございます。ようこそおいで下さいました、ナキ様。解体は終わっております。ギルドカードの提出をお願いいたします」
「はい、お願いします」
「お預かりいたします。お引き取りになりたい素材はございますか?解体所に行ってお選びいただくことも可能です」
「あ、お肉なんですが、ジャイアントフロッグとハングリードッグってどちらが美味しいですか?」
「どちらが美味しいか、でございますか。そうですね、好みによるところが大きいかと思いますが、私はジャイアントフロッグの方が好きですね。癖がないので調理もしやすく、扱いやすいお肉かと思います」
「なるほど、ではジャイアントフロッグ20匹分のお肉と、ハングリードッグ5匹分のお肉を引き取って、後は換金でお願いいたします」
「承知いたしました。ではジャイアントフロッグの料金は食肉20匹分を引きまして83万6800C、ハングリードッグの料金は食肉5匹分を引きまして84万5200C、スライムの料金は3600C、合計で168万5600Cになります。換金は硬貨になさいますか?MCになさいますか?」
(思ったより高いーーー。え、どうしよ。クリスタル間に合わない、もう1個買えるかな)
「す、すみません。クリスタル容量が足りないのですが、クリスタルの購入はできますか?」
「もちろんでございます。1万MCまでの物が100C、10万MCまでの物が800C、100万MCまでの物が5000C、500万MCまでのものが1万2000C、1000MCまでの物が1万8000C、5000万MCが10万Cで購入できますがどれになさいますか?」
(昨日より増えてる…?もしかして確保しといてくれた…とか?)
「5000万MCのものは最近発売されたばかりでして、まだ価格が安定しておりません。ですが、もし不具合が見つかり、それを報告していただけた場合、謝礼金として100万Cが支払われます。もちろん入っていたMSの保証もあります」
「では、5000万MCの物をお願いします」
「謝礼金、保証はありますが過去あまり不具合が見つかったという報告はありません。それでもよろしいですか?」
「はい、まだまだ少しの間レベル上げのためにたくさん狩るので、多いほうが都合がいいと思いますから」
「かしこまりました。ではこちら5000万MCのクリスタルでございます。換金はすべてMCでよろしいですか?」
「はい」
「今使っているクリスタルに残っているMCの移動も可能です、また販売額の半額とはなりますがクリスタルの買取も承っております」
「あ、先に100万MCの方を満タンにしていただいて、あまりを新しいものに入れてもらうとのかってできますか?」
「もちろんでございます。では、クリスタルをお預かりしてもよろしいでしょうか」
「はい、お願いします」
(よかった、いざというときのお金は作っておきたいからな)
100万の方は絶対安全地帯アイテムボックスに突っ込んでおこう。
スリの心配もないし。
「では、クリスタル料10万Cを引きまして、158万と5600MCになります。ご確認くださいませ」
【かんきんがく 158・5600】
「はい、間違いありません。あ、ガルマスさんにお会いしたいのですが、何時に来ればお会いできますか?」
「ガルマスはただいま解体所におります。食肉の引取りもございますので、今からご案内できますがよろしいですか?」
「はい、お願いします」
(そうだった、金額に驚きすぎてお肉忘れてたよ)
昨日と同じく、案内してくれるサーラさんについていく。
するとまだ遠くにいるのにすぐガルマスさんを見つけることができた。
相変わらず大きいなー。
「ガルマスさん、食肉の引取りに来ました。あと、ナキ様が御用があるそうです。…てめぇ、何かしたのか?」
「してねぇよ!…、してねぇよな?」
「も、もちろんです。あの、パスのお店をお聞きできたらと思いまして」
「ああ、なるほどね。それなら控え目そうなナキちゃんがわざわざ会いたいって言ったのにも納得。狩りの前に欲しいもんねー。でも、それなら私も知ってたのにー」
「あ、そうなんですね。す、すみません」
「おい、サーラ、化けの皮ずれてんぞ」
「おっと、まだお仕事中だったって、誰が化けの皮かぶっとんじゃ!殴るぞクソガキ」
「ガキじゃねぇ!たった50年早く生まれただけで姉貴ぶりやがって」
「お姉ちゃんお姉ちゃんって私の後ろ可愛くついてきてたくせに、とんだクソガキになりやがって」
「ガキじゃねぇって言ってんだろ、40年も前の話いつまでもしてんじゃねぇよ」
「40年もじゃありませんー。たった40年前の話ですー」
「こんのっ」
「はぁ、この2人は相変わらず成長しませんね。すみませんね、お嬢さん。ええと、ジャイアントフロッグの肉が20に、ハングリードッグが5でしたっけ。どうぞ、お納め下さい」
私が2人の年齢を概算して戦慄していると、どこからともなくランガルドさんが現れた。
「あ、ありがとうございます」
「いえいえ、むしろ2日も連続で子供の喧嘩に巻き込んでしまってすみませんね。後はクランクの店でしたね。店の名前はライナー魔道具店といいます。武器の数はいくつですか?不都合が無ければ教えていただけるとアドバイスできるかと」
「あ、2つです。遠距離武器なんですけど」
「遠距離が2つですか、なかなか珍しいですね。と、すると少々お高くなってしまうかもしれませんね。武器ライン2つとなると最低でも30万、遠距離に対応できるタゲ線は割増かかりますし、うーん。タゲ最低何本は欲しいとかあります?」
「え、えっと、パスの事そんなに詳しくなくて、タゲ?多いほうがいいんですか?」
(こちとらゲーム好きだし、単語の意味は察せるけどタゲ、たぶんパス繋ぐターゲットの数増やす利点てなんだ?)
「ああ、すみません。タゲとはターゲットラインの略ですね。ターゲットラインは一度繋ぐと一定距離離れるまで変更できないんです。タゲが1つしか取れないと、タゲとった敵が隠れて、違う敵が襲ってきた場合、新しく来た敵のタゲ取りはできないってことですね。この辺の魔物ならソウルも低いですし順番に倒せますが、後半になってくると戦闘時間も…、いや。」
分かりやすい説明になるほどなるほどと自分の運用を考えていると急に話が途切れた。
どうしたのかとランガルドさんを伺うと困った顔をしている。
「申し訳ありません。老兵はどうしても、効率ばかり重視してしまいますね。この辺でしばらく戦うなら武器2、タゲ1で十分でしょう。先に使う武器を決めて武器1にしてもいいですね。あそこなら一番安いものでもそうそう不具合は起きませんし、ロストはまぁ、素材が安い分少しはありますが」
(ああ、なるほど。わかる、わかるよランガルドさん。すぐ変えるのにとりあえずで買うの勿体ない気がするよね)
ゲームでよくある心理だ。
皮の胸当て(防御力+5) ¥400と
皮の鎧(防御力+10) ¥800なら
胸当て飛ばして鎧にいきたくなるあの気持ち。
+5でも全然余裕出来るのに、今のまま無理をし、モンスターから手厳しい攻撃にさらされながらお金集めるあれ。
誰しも一度は通る道ではなかろうか。
「ありがとうございます。では、最初はお安いものでお金を貯めようと思います」
「ええ、頑張ってください。といってもあなたならすぐに貯めてしましそうですね。ああ、お店の場所を伝えていませんでした。といっても流石にあそこは説明だけでたどり着けるか…。本日のお宿はそのまま夢見月夜の宿ですか?」
「え、あ、そうですね。特に考えてなかったんですが、お風呂にまた入りたいのでそのまま泊まりたいですね」
「では、宿の者に案内していただけばいいですよ。チップは必要になりますが、少々奥まったところにあるので、安全的にも大人が一緒の方がいいでしょう。本日も宿泊することを伝え、案内を頼めばすぐに案内してくださるでしょう」
「すみません、あまり相場に詳しくなくて。チップはいかほどが理想ですか?昨日全く払ってないのですが、他にも渡したほうがいいタイミングとかあったんでしょうか?」
「いえ、荷物を運ばせたとか、自分のために何かさせて時以外いりませんよ。お手伝いのお駄賃みたいなものですね、相場は、そうですねぇ、今回はちょっと面倒な依頼なので四角金貨がいいですかね。普段は四角銀貨渡しとけばいいお客さんですね、舐められることは無いでしょう」
「硬貨も持ってたほうがいいのですね。便利だからって全部MCにしてしまいました。ギルドで両替とかってできるのでしょうか?」
「ええ、もちろんです。ただ、両替金額の1%を手数料でいただいております。ですがギルドより手数料の両替所を私は知らないので、ギルドでの両替がおすすめです。まぁ、素材の換金時に変えるのが一番損は無いですが。サーラは…、まだ忙しいようなので、他の子にお願いしましょう」
今度はランガルドさんについてカウンターに戻ることになった。
「ノルン、Cへの両替をお願いできるかい」
「はいなー、ランガルド様めずらしいですねー。両替ってことはMCですかー?」
「MCだよ。…いや、すみません。出しゃばってしまいましたね。換金するのはこのお嬢さんだ」
「お願いします」
背伸びをしてクリスタルを置こうとするとランガルドさんが置いてくれた。
すみません、チビで。
「おやおやー、昨日の新人さんですかー。はいなはいなー、いかほど両替いたしますかー?」
「銭貨から金貨まで各10枚ずつお願いします」
「ああー、なるほどなるほど。MCの方が便利だし、全がえしちゃいますよねー。私も先輩に教わりましたよー。では、各10枚、16万6110Mです。手数料と合わせまして16万7771MCいただきますー」
【せいきゅうがく 16・7771】
「では、Cとクリスタルのご返却ですー」
またまたランガルドさんがとってくれた。
ほんとすみません、チビで。
Cをポンとアイテムボックスに入れる。思った以上に重い。
「お嬢さん、これはお節介なのですがね、アイテムボックスは便利な能力ですから、あまり人に見せないほうがいいかもしれません。鞄の中で繋げるとかしてマジックバッグだとごまかす、とかした方が安全を確保できると思います」
まぁ、マジックバッグも高価なのでどれほど予防になるかわかりませんがと苦笑するランガルドさんにありがたいなぁと思う。
グラナーダに転移したのは、この世界での最初の幸運だろう。
「ありがとうございます。気を付けます」
「いえいえ、年を取るとどうしても口うるさくなりますね。ああ、ノルンをあわせて合計4人がこのギルドの全職員です。お困りのことがあれば、いつでもご相談ください」
「はい、ありがとうございます。では、行ってきます」
困ったとき助けてくれる人がいるということは、なんて安心できるものであろうか。
浮かれた私はそのまま町の外に出そうになって、慌てて宿に戻った。