君に会いたくて②
高速道路に入って一気に加速すると、暴力的な風圧によってジャケットが弾けるようにバチバチと音を立て始めた。
車の流れに乗り始めると、面白い事に車の流れは止まって見える。
時速110キロを維持しながら、彼は最初のパーキングエリアに入った。
ガソリンの残量も少なくなっていた為、最初にスタンドに入って愛車に食事を摂らせた後、歩いて駐車スペースまで押していった。
『隼』を駐車スペースに止めると、熱を帯びた金属が冷える、カン、カン、という音が微かに聞こえる。
バイクに乗るのは、意外と風圧そのものとそれに飛ばされないように踏ん張る力によって体力を使う。
ジャケットに包まれた体の中は既に汗だくで、メットを脱いだ彼はハンディタオルで顔と頭、そしてメットに染み込んだ汗を丁寧に拭った。
食事は、いつも大体決まり切ったもので、その地の特産物を使ったものだ。
デカデカとチケット販売機の横に表示されていた地元ラーメンとチャーハンで手早く食事を済ませた彼は、土産物屋に向かった。
こういう時に、嵩張るものや好みの激しいものは選ばない。
ほんの小さな小物を一つ。今回はキーホルダーを手に取った。
今食事をしたばかりなので、水分は次の休憩で良い。
今購入しても、冷蔵でも常温でも後で飲むのなら変わらないからだ。
冷凍されたものがあれば購入したが、冷蔵ではすぐに温くなる。
そこでふと、塩分を含む飴が目に付いて、彼は舌打ちした。
家に置いてあったのに忘れてきたのだ。
長時間運転していて気分が悪くなり、休憩を挟まなければいけなくなった事が、以前にあった。
熱中症だ。
それ以来常備して意識的に塩分と水分を取るようにしていた。
仕方がないので飴も手に取り、レジで購入した。
トイレに向かい、用を足した後に手を拭ったハンディタオルを濡らして絞った。
日向で待っていた愛車の、熱を持ったシートに被せてメットを被ると、マシな程度には冷えた。
再び『隼』に火を入れて濡らしたタオルは首に巻き、チャックを限界まで引き上げた。
次の休憩くらいまでは、多少涼しい思いをする事が出来る。
そこから、目的のインターまで休憩なしで『隼』を走らせた。
高速は快適で気分が良いが、景色が変わりばえしないと退屈でもある。
左右を流れる木々の緑に目を向けるにはこちらが速すぎるし、何より危ない。
まずは海へ。
そう思ってインターを降りると、コンビニを見つけて入ると、塩分飴を舐めながら冷えた茶をゆっくり飲む。
甘いものやスポーツドリンクに比べて飲みにくい感じがするが、実際に体を冷やす目的なら水分なんか何でも良いのだ。
そして糖分は摂取しすぎると、疲れる。
彼は別に若い訳でもないので、ヘトヘトに疲れたい訳ではない。
仕事に差し障りが出るからだ。
半分ほど飲んだペットボトルをホルダーに刺して、彼は目的地から少し外れた海岸通りに寄り道した。
以上執筆者peco様




