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「臨時ニュースです!防衛大臣、岡本魁氏が銃殺されました!繰り返します!防衛大臣、岡本魁氏が銃殺されました!」
ニュースで、テーブルに座っているキャスターは、興奮気味に原稿を読んでいた。
「そ、それでは、政治に詳しい浜崎さんを、お、お呼びしております」
キャスターが言うと、隣に座っている、浜崎と呼ばれた白髪でしわがれた顔をしている男は、静かに言った。
「落ち着いてください」
「は、はい、すみません、失礼いたしました」
キャスターは、何度も何度も首を横に振る。
「すみません、代わりましょうか?」
別なキャスターが、横に立っていた。
「は、はい、すみません」
キャスターは交代した。新しいキャスターが、カメラに向かって言う。
「申し訳ございません、先ほどの方は少々リラックスされていまして、えー・・・それでは浜崎さん、改めてよろしくお願いします」
「こちらこそお願いします」
「では、今回の銃殺の背景には、何が考えられますか?」
キャスターが尋ねると、浜崎は落ち着いた顔をして語る。
「亡くなった岡本氏は先月末に才能を買われ内閣改造により初めて防衛大臣に就任したばかりで、この就任に対する批判は全く無く、むしろこれを喜ぶ声が多く上がっておりました。この事態になった理由は、わたしにもわかりませんが、おそらく自分の批判が民衆の喜びの声にかき消された人々が企んだものと思われます」
「何でこった・・・」
先ほど利夫の家の捜索から戻ってこのニュースを署のテレビで見た警察署員は、歯軋りをする。
「秘書によると、大臣は暗殺直前に、デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーと書かれた手紙を読んでいたということです」
キャスターがこう続けると、その署員、そしてもう一人の署員は、目を丸くする。
「な・・・・・・」
「どうしたんだ?」
同僚の署員が尋ねるが、二人にとってはそういうことは眼中には無かった。二人の口からは、同時に同一の単語が出てきた。
「報告だ」
「一歩間違えれば犯罪ですよ?」
警察官にそう言われ、背中を軽くたたかれた利夫は、「すみません」と、ぺこりと頭を下げて、取調室から出る。
廊下を、付き添いの警察官と一緒に歩いている途中、どたばたして走っている二人の警察官とすれ違う。
あれは何だろう・・・、と、利夫は、軽い気持ちで振り向いていた。まさかそれがあの、国家転覆すれすれの恐ろしい計画の始まりだったとは気付かずに―――・・。
「防衛大臣が僕の手はず通りに殺されたのね」
マハールは、舞台で、友と話しているかのような口調で、そこにいた聴衆に語りかける。
「僕らは次に、しなければいけないことがある。国家の大臣が殺された以上、賽は投げられたのだ!今回の事件の裏に潜む果てしなく大きな闇を示すために、警察署にあるこの事件の捜査本部に配属された署員を・・・・・・・・・・・・鏖殺する・・・・・・!」
聴衆たちは、いずれも武装をしていた。ライフル銃に、硬い黒い服に、黒いヘルメットに。マハールの語っていることの重大さを前もって知っているかのように、そこは一転して、重い空気が漂う。
マハールは、一呼吸をして、続ける。
「さあ・・・、行こう、我等が同士たち!」
”デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー”
防衛大臣が暗殺された49分後の午後4時58分、突如、銃声。文部科学大臣の崇徳忠敬氏、頭に弾を受け即死。
テレビ局は、テレビ東京系を除き全てが、この連続大臣殺人事件の臨時ニュースでもちきりになっていた。
「桐生さんは今日も熱心なのね」
机に向かって書類を懸命に処理している、黒いスーツをしたその背中に、女性は語りかける。
「あ・・・ああ、何だ、水鶏か」
桐生と呼ばれたその男は、後ろを振り向く。水鶏と呼ばれた女性が、立っていた。
「お茶持ってきてくれたの?」
桐生が尋ねると、水鶏は首を横に振ってから、一枚の書類を桐生に渡す。
「・・・・・・これは」
桐生は、その書類を一瞥すると、立ち上がる。
「私も配属されましたの」
水鶏が言うと、桐生は「そうか」とだけ言うと、歩いてその部屋を出る。水鶏も、その後をついて行く。
「警察署はこの事態を受けて捜査本部を設置、事件を早急に解決すべく努めています」
キャスターがこう言うのと同時に、その音声をイヤホンで聞いていたマハールは、イヤホンを外すと同志たちに号令をかける。
「行くぞ!」
「これからこの作戦のリーダーを務める桐生です、よろしくお願いします」
桐生が、一礼をする。そこは、最新の機械が配備されている部屋であった。
「私はその補佐の水鶏です、よろしくお願いします」
その隣の水鶏も、一礼をする。最新の機械は、入口のドアのあるほうを除く三方に配置されており、壁として取り付けられた机が三方の壁にくっついており、その上に無数のボタンやマイクなどが置いてあった。入口から左と正面の壁にはモニター、右の机には最新のパソコンが並んでいた。
「私は元プログラマーの下田朝霜です、よろしくお願いします」
桐生と水鶏の周りに、円を描くように立っている一人が頭を下げる。
「私は主に暗号解析を担当させていただく紅氷見人です、よろしくお願いします」
同様に、隣の人も頭を下げた。
「私は行動班のリーダー桂蛇平素です、よろしくお願いします。要請の結果、自衛隊を20人程度派遣していただくことになりました、偵察などに使わせてください」
こつい男が、ぎこちなく頭を下げた。
「私はここの手伝いをさせていただく雨森黒です、よろしくお願いします」
「同じくここの手伝いをさせていただく縁緑徹です、よろしくお願いします」
「同じく廿田八朔です、よろしくお願いします」
「同じく金銀濱地です、よろしくお願いします」
「予備として配属された樋渡有人ですが、暗号化に自信があります。よろしくお願いします」
「同じく予備ですが、甲子園春夫です、よろしくお願いします。爆弾について詳しいです」
「予備の水村璋です、よろしくお願いします」
「あわせて12人ですか・・・」
桐生はそう言い、水鶏を一瞥すると、皆に、声を強めて言う。
「では、これから私たちのやることについて説明いたします―――・・」
〜To be continued