File05 start of bloodshed
「この作戦のメインは、2ちゃんねるの破壊にあるんだよ」
マハールと呼ばれたその男性は、にやつきながら言った。
「さあ・・・、次のステージに進むとしようか」
マハールは、そう言いつつ、下を見下ろした。そこには、パトカー、消防隊が次第に集まり始めていた。それを見て、マハールは再びにやりとした。
利夫は、警察署で、警察官から事情を聞かれていた。
「ほ、本当です!本当に、銃を持った少女が入ってきたんです!」
「その部分はもう聞いていますから、落ち着いて続きを聞かせてください」
机の向かいに座っている警官は、冷静な顔をしてメモを書いていた。
「は、はい」
「で、その少女は何歳くらい?」
「顔もまどもに見ていなかったので・・・」
利夫はうつむきかちに答えた。
「あった」
利夫の家を調べていた警官が、郵便受けから一通の封筒を取り出した。
「何だ?」
別な警官が、寄ってくる。
「これは・・・別になんとも無いみたいだな、プライベートもありそうだし、本人に開けてもらうか」
「そうだな」
横の警官の同調も得て、その封筒はそのまま郵便受けに戻された。その時、封がしていなかったのか、ひらりと手紙が浮かび落ちてくる。
”デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー”
その文字をちらりと認識した警官は、その手紙を拾い上げる。横枠の入っている手紙の上のほうに「デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」とあるだけで、その下は真っ白だった。
「これは・・・誰かのいたずらか?」
「・・・・・・えっ!?」
取調べの警官は目を丸くする。
「あっ」
利夫は、顔を真っ青にする。
「君が、2ちゃんねるにいたずらをした・・・?」
しまった、口が滑った。利夫は、必死に首を横に振る。
「な、何でもありません!」
「・・・・・・本当のことを言いなさい」
警官はそう言い、利夫の顔を窺う。
「はい・・・、最初はちょっとしたいたずらのつもりでした・・・」
利夫は、うつむいて、薄々と話し始めた。
「つまらない日常が、嫌になったんです」
「手口は?」
「はい、2ちゃんねるのHTTPに攻撃をかけたんです・・・」
「具体的に?」
取調べは、延々と続いた。
して、秘書は郵便受けを確認する。
「うん?」
女性の秘書は、郵便受けから一通の封筒を取り出す。
「これは?」
秘書は、その封筒を持って、エレベーターに乗る。所定の階に止まると、秘書は目の前にあるドアへ行き、ノックする。
「失礼します」
秘書はそう言って、ドアを開ける。
「やあ、秘書、何だね」
大きなガラスの前の大きな机に座っていた防衛大臣は、言葉使いは優しいものの、険しい顔つきをして書類に目を通していた。
「最近いろいろ深刻だからな、この防衛省は・・・で、何?」
書類を机の上に置いた防衛大臣は、顔を上げる。
「はい、このような手紙が大臣宛に・・・」
「ん?」
大臣は、秘書から受け取った「防衛大臣宛」のみ書かれた封筒の封に手をかける、のりは貼っていないようで、封筒の中にある一通の手紙を取り出し、それを開ける。
”デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー”
「何だね、これは」
大臣は、その手紙をくちゃくちゃにする。
「一体何でしょう?」
秘書が問う。
「いや・・・、ただのいたずらだよ」
大臣は、にっこりとそう言う。
その時、後ろからガラスが割れる音がする。大臣は、それが何かを確認する暇も無く、銃弾は頭を貫通した。大臣の頭は、机の上に転がった。血しぶきが、そこいらに広がっていた。
「ぎ・・・・・・」
秘書は、目の前の死体を受け入れられず、顔を真っ青にしていた。やがて何か言えるくらいに落ち着くなり、断末魔の悲鳴を上げる。
「ぎゃあああああああああああああああああああ」
その窓ガラスの正面にあるビルの屋上に立っていた男は、数百メートル離れた大臣室を眺めながら、手に持っていたライフル銃を、スキーのカバーに入れる。
「さて・・・、さっさと退散しないとね」
男はそう言い、ポケットから携帯電話を取り出す。
「もしもし、マハール様、ご指示通りに防衛大臣を殺害しました」
「防衛くんを殺しちゃった?じゃ、次は文部科学大臣をお願いね、明日の昼くらい?ああ、手紙も忘れないて」
携帯電話で、マハールはくすくすしながらそう答えた。マハールは携帯電話を閉じると立ち上がり、目の前の集会所の舞台に、舞台脇から入ってきて真ん中近くに立つ。
「我々は・・・、ついに行動を起こす時に来た!」
舞台で、マハールは演説していた。観客たちは、いっせいに歓声を上げた。
「静粛に」
マハールは落ち着いた声でそう言い、観客たちの反応を見る。静まると、声をさらに強めて言った。
「日本国・・・・・・、この国に依っていただけでは、現在の不安定な世界情勢を打開できない・・・、今こそ日本政府を乗っ取る時だ!日本政府を、我々の手の下に掌握するのだ!」
〜To be continued