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File04 run away

”デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー”

 この荒らしは、2ちゃんねるを蔓延していた。全てのカテゴリにおいてそれは荒らされ、デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以外の投稿は全く見えなくなった。

 2ちゃんねるの全てのスレの全てのレスは、全て同じ語句で、スレが立ってからわずか3秒程度で過去ログに収められるようになった。

 そのことは、その日の夕刊にも掲載され、テレビの生放送番組でも放送された―――・・。


「では、これで野球部の活動を終わります。気を付けて帰ってください」

 夕暮れを迎えた運動場野球部の顧問が言うと、土に汚れた白のユニフォームを着た生徒達は、一気にかけ声をかける。

「はい!」

「解散」

 顧問の先生はそれだけ言い、生徒達が更衣室に行ってしまうと、ばっと、ポケットの携帯電話を取り出し開いて、かちかちと操作をする。

「・・・・・・やはり、か」

 その先生、澤村先生は、2ちゃんねるのスレ一覧を眺めていた。そこにあるのは、デューばかりである。一体何が起こったのか。澤村先生は、そうつぶやいて、西を眺める。日はすでに暮れていたが、残光が地平線を照らしている。雲は殆どなく、いい天気だった。


 その次の朝、利夫は、玄関で靴を履いていた。

「今週も練習?」

 後ろから母が尋ねてくる。

「うん」

 利夫はそううなずいて、かばんを持って立ち上がる。

「せっかくの土曜日なのにゆっくりできないの?」

「今日は午後もあるから」

 利夫は、無愛想そうにそう返す。そして、土のこびりついたそのユニフォームのベルトを、ぎゅっとしめた。

 その時、家のチャイムが鳴る。

「あら、お客様」

 母はそう言って、サンダルを履いて家のドアを開ける。

「もしもし、どちらさま・・・・・・」

 ドン

 銃声が響いて、利夫はいきなり顔を真っ青にする。母は、母の頭は、血は、血は出ていた。頭の前後に、一本の棒を描くように、出た。母は、そのまま、うつぶせに、横になった。

「ああ・・・・・・」

 利夫は、震えていた。

「あ・・・・・・!!」

「おはよう」

 突然、聞きなれない女の子の声がしたので、利夫はびくっとして外を見る。そのまま玄関に入ってきたその少女は、拳銃を利夫に向けていた。

「あ・・・・・・ああああああああああああっ!!!」

 利夫は、夢中で、土足で玄関に上がり、わめき走りだした。しかし、利夫の周辺、そこ、そこ、上、左、そこ、ほれそこと、弾は、次々と、壁、床、耳をかすって前のドアへ、次々と強くぶつかる。利夫は、夢中で階段を上がって行くが、ドン、ドンと、少女も階段を上がってきたようで、弾が再び利夫の頭の両方の壁へぶつかってゆく。

 利夫は、顔を真っ青にしていた。そうして、夢中で自分の部屋のドアを開け、慌てて押入れを開ける。そして、慌てて隠れる。次に部屋に入ってきた少女は、部屋に入って最初に見えるのがドアの向かいの開いた窓だったため、それを睨んでいた。初夏の下がりで、風を入れるために窓は最初から開いていたのだが、少女はため息をつく。

「ん?」

 左に、開いている押入れがあったので、少女は、今度はその押入れに銃を向ける。そうして、一歩、一歩、押入れに近付いてゆく。

 近付くな!離れろおおおおお!!利夫は懸命に、そう念じた。しかし無残にも、少女はしゃがんで、その押入れの中に入って、箱をとけ始める。

 近付くな!来るな!そう念じる利夫の思いも虚しく、押入れにたくさん入っているダンボールの箱は、二つ、三つ、乱暴にとけられていった。

 近付くな!来るな!あああああああああ!ね!どっか行け!利夫は、心臓をバクバクさせながら、心でそう念じた。しかし、少女は、利夫の思い虚しく、箱を次々ととけていった。

 そうして・・・・・・。

「いない」

 押入れの箱がほぼ全てとけられた後、少女は、押入れの奥の薄暗いところをも確認するが、そこには誰もいない。

「はぁ、逃げられたわ」

 少女はそう言って、拳銃を持って立ち上がると、そこの窓の方へ行き、窓から下を見る。少女が背を向けている隙に、開いたドアの陰に隠れていた利夫は、そーっと、ゆっくり部屋から出て行く。

「これじゃ、マハール様に申し開きも・・・ん?」

 少女は、足音に気付き、後ろを見る。

「ひっ!」

 利夫は、一目散に逃げ出した。少女は、一つ弾を、利夫の頭に向かって撃ったが、利夫がすばやくよけて走り出したので、それは壁に当たった。少女は、走り出す。

「待て!」

 利夫は懸命に階段を走り降りたが、少女は顔に笑みを浮かべて、次々と撃ってゆく。その一つが、利夫の耳に再度かずれる。耳からは血が出たが、利夫はその血を気にするようなこともなく、一目散に、もともと土足だったので、夢中で母の背中を踏み、玄関からかけて家を出る。

「ああああああああああああああああ〜〜〜〜〜っ!!!!!」

 ドン ドン ドン。


「そっかぁー、逃げられたんだ」

 ヘリコプターから下を見下ろしながら、その男は、無線に答えた。

「はい、申し訳ございません、マハール様」

 先ほど利夫の家を襲った少女は、服に隠していた拳銃をそこで買った手提げかばんに入れて、街中で無線で話していた。マハールと呼ばれたヘリコプターのその男は、気楽そうに言った。

「大丈夫、そこはメインじゃないから」

「えっ?」

 少女は一気に、びくっとする。

「メインは、こっち」

 マハールは、そう言って、隣に座っている男に軽くウィングする。その男が、持っているボタンを押す。

 バーン

 ヘリコプターのほぼ真下にあったビルは、大きく爆発して粉々に砕け散った。

「い・・・・・・今の爆発音は?」

「ははは、2ちゃんねるのサーバーがあるところだよ」

 マハールは、笑いながら答え、そうして、顔に不気味な笑みを浮かべ、下の廃墟を、にやにやしながら眺めていた。


 2ちゃんねるサーバー、爆発。2ちゃんねる、アクセス不能。

 〜To be continued

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