File03 dew remaked
その3週間後、全ては始まった。
”デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー”
この文字列が、2ちゃんねるを再び席巻し始めたのは。
”デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー”
”デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー”
”デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー”
それは、利夫の仕掛けた速さを、はるかに越えていた。
「これって、合法よね?」
一人の女が、パソコンを見ながら言った。そこは、どこかの地下室かのように、そして照明は控えめであるのか、薄暗かったが明るいことには変わりなかった。
「それは、君の頭に任せるよ」
椅子に座っている女のかたわらに立っている男は、そう言った。
「そうですか」
女の人は、それだけ返すと、エンターキーを押す。
”デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー”
”デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー”
”デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー”
「しばらくの間、パソコンはフリーズ状態になるのですが」
女が言うと、男は笑い出した。
「そういったループならフリーズくらいするさ、ループを終わらす条件は?」
「はい、カテゴリの半分程度です」
女はそう言うと、席から立つ。周りには、たくさんの男女が混ざって、女と同じように、席に座ってパソコンを触っていた。
「マハール様」
マハールと呼ばれたその男は、にっこりと女を見る。
「さて、あと2、3日もすれば、警察も動くからね〜、その前にちょっとした準備をしておかないと」
「そうですね」
マハールの気楽そうな顔と対比的に、女の顔は暗かった。いや、まじめだった。
「とりあえず、君に殺してもらおうかな?」
「はい・・・・・・」
女は、しばらく深呼吸する。
「私は殺すのはあまり好きではありませんが、マハール様のご命令とあらば」
女はそう礼をすると、歩き出した。ドアを開け、部屋を出るのを見て、マハールは、先ほど女の座っていた椅子に座る。
「すばらしい・・・・・・!全ては、3週間前の荒らしから起草した・・・。すばらしい芸術・・・、むしろ感謝したい、あの少年には」
マハールはそう言って、笑い出した。
「明日の朝ころには、あの少年は死んでいるだろうね」
そうつぶやき、立ち上がる。
その少年、霧間利夫は、学校の授業中に、窓の外を眺めていた。
パソコンを禁止されてからかれこれ3週間。疲れた。利夫は、窓の外で、運動場、他のクラスの生徒達が思いっきり走っているのが見えた。そうして、利夫はもう一度ため息をつく。
「霧間」
数学の先生の声がしたので、利夫はあわてて前を向く。
「せっかくだからこの問題に答えてもらおうか」
先生にそう言われ、利夫は、ゆっくりと立ち上がって教壇へ歩いて行く。そうして、白いチョークをつかみ取ると、黒板に書かれている問題に、すらすらと解を書き始める。
そうして書き終わった時、数学の先生は不満そうな顔をして、利夫に声をかける。
「いくら簡単だからって、授業はちゃんと聞いておくものだぞ、義務教育である以上」
「はい」
利夫はいつもの生返事をして、席に戻る。先生は、利夫のそのなれた手つきを見て、はあっとため息をつく。
授業が終わると、利夫の席に孝が寄る。
「やあ」
孝はそう言って、持ってきた弁当を、利夫の机の上に置く。
「今日もかよ」
利夫は、にこっとしてそう言い、自分もかばんから弁当を取り出し、孝に追従して開ける。
パソコンをしない生活にも、すいぶん慣れた。利夫は、再三、窓の外を眺める。
「こんな生活も、悪くはないな」
利夫がつぶやくと、すぐさま孝が尋ねる。
「え?」
「あ、いや、何でもない」
利夫はそう言って、弁当を食べはじめる。
”デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー”
”デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー”
”デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー”
着々と、その書き込みは、増えていった。
そうして、それは、利夫の荒らしの時とは違い、レスだけではなく、新しいスレも立てるのである。しかも、利夫の時と比べて高速であり、必然的に、そのカテゴリの掲示板は、503エラー万歳となった。
しかし、利夫とは違うやり方で、直接サーバーのコンピューターをハッキングして「デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」と書き込むプログラムをサーバーのコンピューターから起動させているため、妨害するほうは503エラーを心配する必要はなかった。もちろん、ディレクトリパスやログの保存形式は、前もってハッキングして掌握しているため、それは用意周到かつ高度な荒らしとなった。
”デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー”
”デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー”
”デューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー”
パソコンというものは、非情にも、言われたことをやる、ただそれだけの機械である。したがって、それの善悪は、感情がない限り区別ができないのである。
〜To be continued
この小説には専門用語がいくつか(いくつかというレベルではないのですがとにかくたくさん)出ていますが、お手数ですが僕は説明が苦手なので、その都度調べていただければ幸いです。