元服
今世も早十三年。気が付くと赤ん坊に成っていたときは驚いたが、いやはや時の流れとは早いものだ。前世では戦場で銃弾に倒れたが、今世でも銃弾で倒れそうな時代だ。
軍隊に忌避感のあった前世の日本に満足な軍備など無く、不足する物資の中で自国防衛の為に戦ったが、あっちはその後どうなったのだろうか。今世では物量戦を仕掛けられるのでその点では安心だな。
私が転生したのは尾張下四郡の守護代である織田大和守家の三奉行の一つ、織田弾正忠家の当主の三男だ。現当主は陪臣でありながら尾張全土を差配する人物であり尾張の虎と呼ばれる織田信秀である。
長男は庶子であるため次兄の信長が嫡子だ。そして私は言うなれば継承順位第二位である。正室の子は信長と私を含め三人、その中でも私と信長は年が近い為に少し面倒な事態が発生する。
活発で破天荒な兄の信長に対して、大人しく真面目な弟。嫡子は信長と宣言されているにも関わらず、家臣の間で後継者争いが起きているのだ。正史では家臣の言葉に踊らされたのか弟が挙兵するも信長に鎮圧されて最終的には殺されてしまう。
私は教科書に毛が生えた程度の知識しか持ち合わせていないが今世では天寿を全うしたいものだ。しかし時は戦国、戦場の露と消えていったとしてもまたそれも仕方無し。
我が名は織田勘十郎信勝。本日元服を果たして織田弾正忠家の一門としての働きを期待されている。取りあえずは後継者争いを生き延びる事を目標にしよう。