本当の魔法 2
「それで自分たちの命どころか、他人のものまで危険に晒すことになるのよ?」
「わかってるって。感慨に浸るっていうの? それだけ。凛子は違うの?」
「私は……そうね、そういう気持ちがないって言ったら嘘になるわね……」
少し思案してから凛子は答えた。凛子もそう思ってくれたんだとわかったら、ほっとした。私だけじゃなかったんだ。
「私も思ってました。それに二人に会えないのも寂しいなって……」
自分だけ気持ちを黙っているのも変な気がして、正直な思いを口にした。
「結衣は一人だけクラスも学年も違うしね」
「だったら……誘ってくれればいいのよ」
ぼそりと凛子が呟く。
「いいんですか?」
「ま、まあ……暇な時なら、付き合ってあげても……いいわ」
私の勢いに押されたのか、どんどん声が小さくなっていく凛子。
「じゃあ、時々でいいので……付き合ってください!」
「もう……そんな大声出さなくても、大丈夫よ」
「ご、ごめんなさい」
興奮のあまり自分でも思わぬ大声を出してしまったようだ。それでも嬉しい! これで声をかけやすくなったのだから。
凛子の後ろで、にやにやと霞が私を見て、親指を立てた。もしかして、こうなるようにあんな話題を出してくれたのだろうか。お調子者で、考えるより先に話しているような彼女だけど、時々どこまでが計算なんだろうって、わからなくなる時がある。
「さてさてほんとお腹すいたし、早く行こうよ」
「霞が発端でしょう……」
凛子がそう呆れながら言うのも、今では見慣れた光景だった。
また三人で並んで、歩きだした時だ。どこからか音楽が聞こえてきたのは。
「あ、ごめん、これあたしだ」
霞が鞄に手を入れ、がさごそと中を漁る。それに凛子が首を振った。
「――あなただけじゃない」
「はい……」
音楽は一種類ではなかった。私の鞄の中でも、凛子の鞄の中でも、同じようにメロディーが奏でられている。
携帯を取り出して、画面を覗き込む。そこには想像通り、どこかの住所と、そこまでの道のりが示されていた。
「なんだ、やっぱり嘘だったんじゃん」
頭に両手を回して、霞はつまらなそうに言った。
「そうみたい。気を抜くわけにはいかないみたいね」
報せが来たことで、お気楽な空気は一掃されてしまっていた。それでも疲れや、嫌な空気ばかりではない。宙ぶらりんで、どこに置いておけばいいのかわからなかった気持ちが、すとんと自分で場所を見つけて収まってしまった感じ。
「魔法器は持ってる?」
私と霞にそれぞれ目を合わせてから、凛子は確認した。
「もち!」
「はい」
返事を返し、うなずき、三日ぶりの戦いの場へ向かう。
*