表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/82

ひとりよがり 20

「なに今の!?」

「雷?」

 私と同じように雷の魔法だろうか。でもそれにしてはその軌跡は直線で、さらに速かった気がする。それに、着弾したあとの衝撃もなく、魔法自体に音を感じない。ただ表面を焦がした芝生だけが、そこに魔法が当たったことを教えている。


「光?」

 凛子が焦げた芝生を横目にしながら呟く。

 その間にも金髪は棒を構えなおして、さらにもう一度同じ魔法を放とうとする。


「とにかく先端に注意しよう。雷と違って曲がらないみたいだから、避けるのはそんなに難しくないはず」

「わかりました!」

 どこに来るのかわかっていれば、そこにいなければいいだけ。


 金髪が棒を突き出す。ぱっと先端が光って、暗い夜の空間を切り裂いた。先端の向いている通りなら、誰もいない場所に当たるはず。

「うそ! うわっ――」


 霞が悲鳴を上げて、身体を捻った。その脇を光が掠め、そのまま外周部へと消えていく。

「あつっ」

 焦げた匂いが漂ってきて、霞の脇腹の部分に黒い跡が浮かんだ。


「なんなんだよ……」

 痛そうに顔を顰めながら霞は悪態をついた。

「大丈夫ですか?」

 霞に近寄る。ワイシャツの端が焦げているけど、大きな外傷は見えなかった。


「うん、平気。でも今、曲がったよね?」

「はい……」 

 光は霞には当たらないはずだった。確実に棒の向いている方向を避けていたのに、途中でぐにゃりと歪むように曲がり、それから襲ったのだ。


「あれのせいね」

 凛子が指差す。相手の魔法使いと私たちの中間ぐらいの位置に、鍋の蓋のような魔法器を持ったショートヘアがいた。


「いつの間に――」

「どんな魔法かわからないけど、光を屈折することができるようね……」

 魔法と魔法の組み合わせ。イーレッセが乗っ取っているはずなのに、連携がとれている。


「気をつけて! 次来るよ!」

 霞の警告。金髪に目を戻すと、まさに魔法器を突き出すところだった。しかもその先は、間違いなく私の方を向いている。                                

 ――どうすればいい!?


 魔法の光を意図的に曲げることができるのだとしたら、射線から逃げるだけじゃだめかもしれない。だからって、霞みたいに咄嗟に避けるなんて芸当、できるわけなかった。

 私が悩んでいるうちにも、金髪が棒を引く。

 どのみち正面にいたらおとなしくやられるようなもの。そう思って、とにかく右に走った。


 金髪の魔法器の先端が煌めき、眩しい光は狙った通りの位置に真っ直ぐに飛んでいく。でもそこにはもう誰もいない。

 そう思う私をあざ笑うかのように、光がかくんと曲がる。その奥に、ショートヘアの姿がちらりと見えた。狙いを変えた光の先にいるのは――私だ。魔法の雷よりも速く鋭い光、避けようとしても身体が追いつかない――

 当たると思った瞬間、伸びた光は唐突に、折れ曲がり来た方へと方向転換して飛んでいった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ