ひとりよがり 14
「私にとっても、結衣は特別よ」
「霞より?」
「どうかしら?」
意地悪な顔で凛子は答えた。でもそれでよかった。霞に負けないように、私がもっと特別になるように頑張ればいいんだから。
「プレゼント、開けていい?」
「はい!」
凛子は丁寧に封を切り、中から細長いケースを取り出すと、ぱかりと蓋を開けた。
「……きれい」
中に入っていた物を目にして、凛子はほっと息をつく。持ち上げて、それをまじまじと見つめる。
「どう……ですか?」
贈ったのは、簪だった。頂の部分に青いガラス玉があしらえてあって、それがすごく凛子に似合いそうだなって、思った。でも普段使いするには向いていないし、髪をまとめているところも見たことがないからどうだろうとは思ったんだけど、でも結局これにした。着けているところを見てみたいなって欲があったことは――言わずもがなだ。
「きれいで、とっても素敵だと思うわ」
「ほ、本当ですか!」
「ええ。ただ……使い方はわからないけど」
申し訳なさそうに凛子は言った。髪留めのように留め具があるわけじゃないから、知らないと簪を着けることはできないとは、私が買う時に店員さんに言われたことだった。
「あの……もしよければ、私がやっても?」
ただしそういうこともあろうかと、ちゃんと方法は聞いておいた。
「それじゃあ、お願いしてもいいかしら?」
「じゃあ、失礼します!」
凛子の後ろに回って、長い後ろ髪をまとめて手に取る。さらさら――私の髪質とは明らかに違って、指の間から零れるよう。艷やかで、まるで宝石のように街灯の光を反射していた。
いけないいけない。髪に見惚れている場合じゃなかった。撫で回したい気持ちを抑えて、店員さんに教えられたように髪を纏めていく。
「痛くないですか?」
捻ったり回したりと、けっこう色々するから、もしかしたら我慢しているかもと思って声をかけた。
「大丈夫だから、続きをお願い」
「はい、じゃあ……」
よかった……私は安心して作業を続ける。さらさらの髪を少し苦労しながら纏め、持ち上げお団子にする。最後に簪を挿して出来上がり、初めてやったけどかなりうまくできたような気がした。
前に回って、出来上がりを確かめる。
「わあっ! 似合ってます!」
髪をアップにしているところを初めて見たけど、想像していたよりよっぽど似合っていた。より大人っぽくて、色気みたいなものが匂い立つようだ。それに青い簪が主張することなく黒い髪を飾っていて、我ながらいいものを贈ったって、自画自賛してしまう。
「そうかしら?」
凛子は手鏡を取り出して、いろいろな角度を確かめる。
「初めて挿したけど、悪くないわね……ありがとう、大切にするわ」
満更でもなさそうに、凛子は言った。
「はい!」
そんな反応や言葉が、何よりのご褒美だった。凛子の誕生日を祝うためだったけど、もしかしたら私の方が喜んでいるかもしれない。




