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子兎は波乱万丈な人生を  作者: フィアナ
第一章・悠久なる森で
14/17

閑話・一石三鳥?いやでも弊害も起きたからやっぱり二鳥?

時間軸的には、転生してから四週間ほど経ってます。




二週間。かれこれ二週間もたったのだ。ここまで続くと、いい加減うんざりもする。


初めて外に出た頃から毎日、毎日、毎日……ず~っと同じ雑草しか食べていない!!


見た目はイネ科の様なスラリとした形で瑞々しい黄緑色だし、味も良いのだが流石に飽きてきた。

という事で、本日は行動範囲を広げて森の中を探検してみようと思う。今まではあの蛇に襲われた事が怖くて巣の近くに生えている同じ雑草しか食べてこなかった。でも、これでは体によくない気がするので、新たな食材を見つけようという魂胆だ。


「ぷきゅきゅ?(探検しに行かない?)」

「「「「ぷきゅ~~~」」」」


「ぷぷっ!」

「ぷぎっ!」


始めから寝ていた『灰まる』はいいとして、どうやら毎晩のように蹴りをかましてくる暴れん坊の『黒色』とお兄ちゃん気質の『(まだら)』が付いてきてくれるようだ。

居残り組は、魔力のスペック高いのに動きたがらない『端茶(はしちゃ)』と臆病で寂しがり屋の『垂れ耳』、それと母ウサギである。

(ちなみに名前は勝手に命名させてもらった。)


心配だ。『黒色』ははた迷惑な事に、好奇心旺盛、短気、体力馬鹿と問題ごと三拍子なのだ。大丈夫だろうか。魔力でクレーターを作った私が言えることではないが、こいつも普通に純粋な力技のみでクレーターを作れるのだ。……この小さな身体にどれだけ可能性が秘められているというのだろうか。

いざとなったら恐らく、しっかり者の『斑』が何とかしてくれるだろう。


私は意気揚々と森の中心へと進んでいった。






ガサゴソと私にとってはとても大きい藪を掻きわけて進んでは、美味しそうな雑草を探す。


途中螺旋を描いた青い雑草や、ヌメヌメとした大きめな木葉型の雑草などヘンテコなものもついでに試していく。いや、分かってはいるんだよ?怖いもの知らずだって。でも折角異世界にいるんだから新たな珍味も食べてみたいじゃないか。


ちなみに螺旋のやつは意外と瑞々しく甘かった。だけどあれは痛い!!

螺旋を描いた葉は小さなバネの様になっているため、食べようとする度に跳ね返り地味に反撃を仕掛けてくるのだ。おかげで歯やら鼻やらがとてもヒリヒリする。美味しいだけあってとても悔しい。いつか安全な食べ方を見つけてやる!


ヌメヌメの葉の方はとても良い香りがした。が、やはり侮るなかれ。食べてから10分後ぐらいに前足・後ろ足(手足)が震え出した。これ絶対毒だよね!? 致死量じゃなくて本当に良かったよ。


その間、優しい『斑』はおろおろした様子で、赤くなった私の鼻(バネ草にやられた)を舐めてくれたり、痙攣した身体(ヌメヌメ草による毒)に額をこすりつけたりして甲斐甲斐しく面倒を見てくれた。

ありがとう。例え、傷ついた鼻を舐められてピリピリしたり、体格差があり過ぎて転がったとしても。そんな弊害に『斑』が気付いてないとしても。

その上時々、くぅんくぅん鳴いて心配してくれてるのは分かってるんだけどやっぱり珍味が気になるんだよ~。ごめんね!






そんなこんなでいつの間にか視界が赤く染まっていた。夕日である。


えっ! もう!?


雑草から視線を外し、渋々顔を上げた。残念なから本日はここで終わりなようである。

戦利品である多種多様な雑草たちはどうしようか。せめてくるまり草だけは持って帰りたい。だけど私の小さな口じゃ収まりきれないし、前足で掴んだとしても後ろ足のみでは歩けない。う~む、どうしたものか。

そうだ! 三匹で分担すれば運べるのでは?これはいい考えかも。よし、そうと決まったら『斑』と『黒色』に頼んでみよう。


「ぷきゅ……ぷきっ。……ぷぎぁぁぁああ~~」


振り返るんじゃなかった。振り返るんじゃなかった。振り返るんじゃなかった。あれはいかんっ!


『斑』はあのまますぐ後ろに居たようで、どうしたの?と言わんばかりに首をかしげていた。


居なかったのは『黒色』。思い返せば採取中とても静かだった。こいつもスッキリした様子でどうしたの?と言わんばかりに首をかしげていた。

だが、私は騙されない。お前何処行ってたんだよ! 通りで静かだと思った。


『黒色』は泥と草葉を付けたまま、口周りを血だらけにして、悪夢の根源――――あの日見た蛇の双頭バージョンを口にくわえていた。

何で草食動物がそんなに強いんだよう。『斑』は見慣れたのか慌てる様子がない。意外と肝が太かったらしい。こんな調子でウサギ生こなせるだろうか……。




結局『黒色』に渡すと血塗れにするのは目に見えていたので、『斑』と分担して飛んで帰ることにした。翼を出したり戻したり、飛ぶのが苦手で手こずっているうちに、いざ帰る時には夜になっていた。


帰る道は何となく下を見ながら飛んだ。

途中、地面に血の跡がポツポツと落ちていたり、肉付きの骨の一部が視界に入ったりしたが私は知らない。巨大な木が折れていたとしても、決して折った奴は知り合いでは無いと思いたい。

まさか夜目が使えて後悔する日が来るとは思わなかった。



そっと惨状から目を逸らしつつ進む。すると次はキラリと何かが川の上で光ったのが見えた。興味本位で近付き――――理解した。そこにあるのは金色(・・)に輝く自分の瞳以外のなにものでも無かった。


何これ!?


驚いてそこから離れ、また高い場所を飛ぶと今度は黒色に戻った。


え? え?


もう一度近付く。金色になる。離れる。黒くなる。を三回ぐらい繰り返した後、どうやら森の林冠から出ると黒くなることが分かった。

おおう…。本日の一番の成果は珍味よりも、この瞳の方かも知れない。




後日、瞳が“金色”になる条件を探しているうちに、翼が筋肉痛になる事をこの時の私は知るよしもなかった。






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