mob.a(Ⅰ)
警告は特にありませんが、気分次第で何でもありになります。
あと、
ネタバレになるので多くは書けませんが、相方的女性はかなり「危険な属性」を持っているので、ひとつの形として受け止めることが出来ない――というかたは、避けた方がいいかもしれません。
@プロローグ
人間――それなりに生きていると、
『答えの出ない問題』
というものにぶつかることがある……。
「……何故だ?」
試しに、その答えを天の誰かへと求めてみた。
が、仰ぎ見た空はどこまでも鈍色のまま。
……どうやら、答えが返ってくるよりもさきに雪が降ってきそうだった。
冷えきった手の中には、たった一枚の紙切れ。
届いた封書の薄さから結果は見えていたのだが、しかし、事実を目にするその時までは、一縷の希みにかけてもいたのだ。
「…………」
もう一度、その一文に目を移す。
『不 合 格』
最初に見たときは、あまりの衝撃に言葉すらなくしてしまった。
……だが、『物語』を先に進めるためには――この現実を認めねばなるまい。
今日、この時をもって――「佐佐木 一」は、「社会」のレールから外れてしまったのだ。
〔M.O.B〕
〜0から始める主人公への道〜
「――落ち着け」
いや、まだだ。
まだ、終わったわけではない。
きっとこれからだ。
サクセスだ。
シンデレラだ。
多分……おそらく……なんとなく……そんな…………だったらいいなぁ……。
「…………はぁ〜」
ため息と共にうなだれる。
正直に言うと、この過程は既に一度、自宅で行っているのだ。
それを冬の寒空の下――わざわざ近くの公園までやって来て、さらにはよく冷やされた古くて硬いベンチに座り――見事なぞりきってみせたにすぎない。
……何故、そんなおかしな行動をとっているのか。
それはけして『現実から目をそらしてみたくなった』というわけではない……と思う。
真実はこうだ。
『新たな物語に出会うため――』
……他に誰もいないので自分で言ってしまうが――実にいいフレーズだと思う。
例えば、こんな言葉を耳にしたことはないだろうか?
『自分の人生の主人公は、自分自身である』と。
つまり、『佐佐木 一』という人間の物語――その主人公は、俺をおいて他にいないという意味である。
それはもっともで、その通りであるべきだ……が、世の中はそうでない。
……いや、そうではないと言うと語弊がある。
単純に、
『主人公』=『ヒーロー』
という公式は成り立たないということだ。
つまり、物語の主人公がたとえ自分自身だったとしても、その物語自体が、主人公の活躍する物語とは限らない――というなんとも憐れな話なのである。
では、どうすれば「自身の活躍できる『物語』」に出会えるのか?
『物語』を構成する要素は、大まかに分けると三つ。『邂逅』と『混濁』、そして『結末』である。
自身の力で変えることができるのは『結末』くらいなもので、前の二つ――特に『邂逅』は、ほぼ全てが『運命』と同じ要素で満たされている。
世の中に数ある創作物がそうであるように、全ては『運命』に出会うところから始まるのだ。
故に、
『新たな物語に出会うため』
俺は、こうして自らプロローグを演出し――
「――そんなことをしても無駄です」
と、決定的に足を踏み外す出会いを引き寄せてしまった。