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第三者  作者: 枕木きのこ
手記
9/21

9

 この「隣室の覗き窓」を発見して以降、私が毎日のようにそこからの景色を観察したことはもはや書くまでもなく想像されることであろう。私は起きるとまず姿見を開放し、隣室を覗く。ここから見て右手の窓のほうに置かれたベッドの上ですやすやと眠る彼女の顔をひと目見てから小声で「おはよう」と呟き、それから一日が始まるのである。学校へ出る前には「いってきます」を。帰ったらもちろん「ただいま」を言うことも欠かさない。

 彼女の生活についてもそれによって判明したことが多々ある。言葉を交わすようになって、彼女が大学三年生であることは承知していたが、朝一番の講義に遅刻することはまずなかった。私が隣室を覗いたときにはすでにその姿がないこともしばしばであるのだ。なおかつ、帰りは早い。途中買い物を済ませてくるらしく毎日小ぶりなスーパーのビニール袋を引っさげて帰宅する。テレビはほとんど見ず、小説を好むようだった。夜はきっちり日付の変わる前には布団に入り、三十分もするとうっすらと寝息が聞こえてくる。もしやこの覗き窓は隣室ではなく理想でも見せているのではないかと疑いたくなるほど、彼女は完璧だった。

 この行為自体、犯罪であることは今更書くべくもない。これが老婆の遊び心により設置されたものかはさておいて、それをどこへも申告せずに隣人、それも好意を抱いている相手の生活を覗き見るなど、もはや変態でしかない。だが、この状況、そしてこの習慣が、私の語るべく本当の罪への布石なのだ。

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