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一畳の空間は、隣室との壁をくりぬいた形で存在していた。人間が出入りする為にあるのだということを証明するように周囲は自室と同じように整備されている。私は驚嘆たる思いでこの中に踏み入ったのだが、空間の正面、つまりあの美しき隣人の部屋の側の壁と思われたほうから、なんということであろうか、まさしくその隣人の部屋が覗き見えるのである。まさかこれはこの二つの部屋が実は繋がっていたということなのか、という混乱を抑えることができなかったのだが、手を伸ばしてみると、こつんと何かに触れるのである。
結論からして述べると、つまりそれは、マジックミラーの類であるようだった。つまり隣室には、私の部屋の姿見と背中合わせになるように姿見が存在し、それは、こちらのほうからはただの硝子でしかない、ということである。そんな馬鹿なと思ったものである。脳裏には江戸川乱歩の散歩者や綾辻行人の館が想起されたものだ。
恐る恐る、罪悪感より勝る好奇心によって私は隣室を覗いた。かの美しき隣人は不在のようで、それに私は安堵したような、落胆したような、不思議な心地になった。




