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ようやくにして老婆の言葉の意味を解したのは、入居して一ヶ月も過ぎたころだった。大学にも慣れ、隣人とも気安く言葉を交わせるようになって来た頃だ。
私はそれまでにもそうしていたように前述の姿見に重きを置いて部屋の中を捜索していた。それがある日、何の拍子であったのかは今となってはもう判然としないのだが、姿見の左下の一角を強く押したところ、ぐっと姿見全体が奥に引っ込んだのだ。そしてその反動で、今度はこちら側に跳ね返り、なんとその奥に一畳ほどの空間が現れたのである。今まで姿見を手で軽く撫ぜるようなことはあったものの、押してみたのは奇しくもこれが初めてのことであった。考えてみれば単純なことであったのだが、こうして「秘密の扉」とでも言おうか、その姿見は開かれたのである。




