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私はあの覗き窓から見ていたから知っているのである。その文学青年にはこの犯行は成しえないということを、十全に理解してしまったのだ。
刑事にそのことを言うのは躊躇われた。それもこれも、目の前で「この男に出されたと思われるコーヒーカップやこの男が吸ったものと思われる煙草が出てるから指紋を取ればすぐに分かるだろう」だとか「被害者は浮気していたようだからさっき言ったとおりの動機も十分ありえるだろう」などと言ったことが発せられていたからである。私が召喚されるまでに、すでに手がかりは揃っている、とこの眼前の男は言っているのである。私はただその裏づけに呼ばれたに過ぎない、ということだ。
翌日になって、被疑者として文学青年は任意同行し、そしてそこで自供。犯人となり捕まった。彼がそこでどのように言ったのか、あるいは言わされたのかは分からない。しかしそれが真実ではないことを私は疑ってしかるべき立場にあるのである。
この隠匿こそが、私の罪の全てである。そして八年の刑期を終えた彼に今から、会いに行こうという決意を持って、告白を終えた私はこれにて筆を置くこととする。




