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生贄の羊

 炸裂音を聞くと同時、熱さが肌を焼いた。


 ―――ば、爆裂、だと?


 ラビシュの困惑をよそに、背後から雷撃が一直線に伸びてくる。先には、ヴォルの姿だ。にんまりと酷薄な笑みを浮かべている。


 「言ったろう? 地獄を見るってよ」

 「ぐあっ」

 「ラビシュッ」


 腕を焼く火の粉を感じながら、ラビシュはすぐさま剣を振った。

死角に何かが近づいているのを感じたのだ。それは計算されたものではない。見えないことに起因する恐怖から来る当然の反射だった。


 ―――し、しまっ……。


 思うよりはやく、爆裂が連続する。



 「あらら、あんな簡単な手に引っかかりやがって……。ラビシュのやつ、まだまだ甘いなぁ」


 言って、シャーリ・エストーは眼下の光景を覗き見る。ラビシュの周囲で斬られた分裂体が次々と破裂している。巧く致命傷を避けてはいるが、結構な被害をこうむっているようだ。


 「ふふーふ。ま、仕様がないさ。ラビシュの甘さは、ウリでもあるからね」


 ―――なぜ、こいつらはそんな顔をする?


 思ったのは、ヴォル・グリアだ。ボスであるジゼットの指示通り、ラーズたちの後を着いてきたグリアには分からない。

 グリアと同じ姓を持つヴォル・ボールとラビシュが争っていることが、ではない。それはあらかじめ決まっていたことだ。

 赤獅子を手に入れるために、いさかいを起す。それは決まっていたことだ。

 だから、グリアが驚いたのはそのことではない。


 「さて、賭けるかい?」


 部下が襲われているというのに。


 「ハ、冗談きついぜ。賭けにゃならねぇだろう?」


 こちらの思惑に乗っているとわかっているのに。


 「ふふーふ。さあ、わからないぜ? そこの彼は、仲間にかけるかもしれないだろう?」


 ―――なぜ、こいつらは平然と笑っている?


 「へぇ? 賭けるのか、あんた? 男だな」

 「……。それは、主に命令されていない」


 気味の悪さを覚えながら、グリアはそれだけ口にした。


 「なんだ、硬い女だな」


 それだけ言ってシャーリたちは眼下へと視界を移した。すでに、いや元々グリアに関心があるわけではないのだ。

 その態度がグリアの感情を逆立てた。

 フィッタ・フィーロの一員として、幹部に与えられるヴォルの名を持つ人間として、彼女は思った。


 ―――当初の予定とは異なるが……。


 「……勝て。ヴォル・ボール」

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