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紫霧転生 ――その身体は霧――  作者: ビーバーの尻尾
第三章 深淵の霧蝕 傀儡の傀儡師編
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第39話 交流 ――ダイダラボッチ VS 被害者5名―― 

 



 シム(スライム)が上空から複数同時に打ち下ろした《白水ノ凶砲(タイダル・カノン)》は強烈なインパクトを伴って妖精たちに襲い掛かった。

 運よく木々の陰や岩陰に身を隠した妖精はそのまま逃げ去ったが、哀れ内5匹は流水に叩き落され濡れネズミのようになって地面に横たわる。


 シム(スライム)は屈むと少しばかり弱々しくなった光を一個ずつ先を細めた右手で拾い上げ、左掌に乗せる。

 そして再び立ち上がり月明りの下で顔を寄せジックリと観察。


「羽以外はまるで小人みたいだな・・・いやちょっと耳が尖がってるのはエルフっぽいか?」


 シムは残念ながら未だ小人にもエルフに会っていないが、目の前の妖精達は想像上の小人とエルフ像に近かった。なおネージュから存在するとは聞いているので、いつかの会合を夢見てる。


「起きろ~ 朝だぞ~」


 全員気絶したままピクリとも動かないのでダイダラボッチ(スライム)の指先で上からつつく。

 指先を柔らかくして妖精達をタポタポ圧迫するシム。


 果たして効果があったのか、一匹の少女がゆっくりと光を強めながら、小さなうめき声と共に頭を振りつつ身を起こした。


 そして目と鼻の先にいるダイダラボッチ(化物の顔面)とコンバンワ。


「~~~~ッ!」


 あまりのショックに悲鳴もでない様子。

 口をパクパクさせながら、夜でもはっきりと分かるほどに顔を蒼白に染めていく妖精。心なしか纏う光も白くか細く変化している。


 小さな身体は彼女の心境を表すように激しく明滅を繰り返した。

 その姿は月明りの下で非常に映え、幻想的ですらある。

 まるで、そう線香花見のよう。


「こんばんは、シム=ミストっていうものです。あなたの名前は?」


 のっぺらとしたダイダラボッチの顔にス―ッと横線が浮かんで開くとそこから口が形成され、シムの呼びかけが夜空に聞こえた。


 妖精はそれを聞いて身体を固める。


「・・・うーん、ワンチャン通じるかと思ったけどやはり駄目か」


 少し間をおいて応答を待つも反応なし。

 どころか妖精の少女はいよいよ顔を白くして、今にも気絶しそうである。


 言葉が通じていないのか、それとも己(スライム巨人)を見て恐怖で言葉が出ないのか、もしくは両方か。


 おそらく前者と仮定。

 シムは妖精の言葉を調べることにした。

 後者だと対策が思いつかなかったので手っ取り早い方を選択したともいえる。


「適当に・・・この子でいいか」


 ダイダラボッチの右手、その指先がシュルシュルと音を立てて先端を細らせる。

 植物のツタのように伸びる指先。

 それが、硬直している少女の真横で横たわる、未だ絶賛気絶中の別妖精を摘まみ上げた。


 シムの知る所ではないが妖精少女の弟くんである。


「――――ッ!? ――、――――ッ!! ――――――、――――ッ!! ッ――――!!!」


 すると弾かれたように何事か叫びだす妖精少女(姉)。


「んんん? なんだなんだ、何言ってんだ?」


 シムは動きを止め、ダイダラボッチの頭を近づけて耳部分で聞き取ろうとする。

 当たり前だがスライムの巨人に耳はない。

 現状音は霧の五感で聞いているので意味のない行為。

 しかしシムは記憶のせいか、時々無意識に人間臭い動作をする癖があった。


 ところで、この動作は妖精視点では獲物の悲鳴に耳を傾け愉悦に浸る捕食者が如く映っており、妖精(姉)の目から絶望と怒りと恐怖が綯い交ぜになった涙が止め処もなく流れ落ちる。


「・・・・・・なんか言っているけどやっぱり理解できないな。やはり言語が違うのか」


 一方シムは妖精の声にひとしきり耳を傾けるも、まるで言う事が分からぬ。


 なら仕方なしと決める。

 ダイダラボッチの口をパックリと開け、摘まんだ妖精を放り込んだ。

 手元の妖精が甲高い声を上げる。


 口腔に消える弟の代わりに断末魔の悲鳴を上げる姉の眼前でダイダラボッチの口は閉じ、継ぎ目も消えその形跡すら残さなかった。


「途中で起きて暴れられても面倒だし、身体スライムの中なら加減もしやすいし。先にこうしてれば――っとと、はーい君はそこで待機待機」


 何事か叫んでいた妖精(姉)が妖精の羽を震わせ飛び立とうとしたので、シムはダイダラボッチ(スライム)の掌から細い触手を伸ばすと妖精の足を掴んで引っ張り下半身までスライムに埋めた。ついでに少女の声で起きそうだった他の妖精も先に埋めておく。


 おっ、間近で見るとこれ男の子か、中性的で分かりにくいな。と脳内で口内妖精に関する感想を述べつつも作業続行。


「あー、 うー、 これは調整が難しいですね~。精神体を殺さないように、記憶を開く。言語関係のものだけ・・・」


 口内の妖精君を飴のように転がしながら霧で憑依して記憶を参照。

 妖精の言葉の理解に努める。


 この間にも声を張り上げ続ける妖精少女により気絶していた他3匹の妖精達も次々と目を覚まし始めた。


「――――――~~ッッ!?」


「――~~ッ!? ―――、 ッ!!?」


「~~~~ッ!!!? ッッ!!!」


 竜の言語はネージュにより精神体に直接魔法で注入してもらった故、瞬時にペラペラになったシム。

 しかし憑依対象の記憶から知識や経験を漁るのはそれなりに時間がかかるのだ。


 イメージは求める情報やキーワードを絞ってパソコンのフォルダ階層をどんどん下がっていくようなもの。


 ―――よし、まだ拙いけどだいたい分かった。


 半時間程かけて最低限の妖精言語を習得したと確信したシムは、左手を顔に寄せて、全員起床済み&顔面蒼白で何事か言葉を交わし合っていた妖精達を覗き込む。同時に口を形成。


 すると皆が一斉に目を剥き息をのみ激しく明滅しながらガクガクと震えだした。

 埒が明かないので無視して話しかける。


「コンバンワ。 ワタシ、 ナマエ、 シム=ミスト。 アナタタチ、 ダレ?」


「!?」


「!?」


「!?」


「!?」


 するとこれまた一斉に驚愕の表情を露わにする妖精達。


 しばらく待っていると、その内の一人、先に目覚めた少女とは違う青年のような見た目の妖精が恐る恐るといった風に話しかけてくる。


「―――森の池、―――――に、―――、―――住む。―――手――。―――は――、―――――――? ―――――・・・――私―――願い―――子―――命――――逃―――・・・・・・――」


 だが残念。難しい言葉が多くて聞き取りずらい。

 どうやら最低基準を余裕で下回っている程度しか習得できていない模様。

 それだけでなく声が震えているプラス早口過ぎて断片的にしかリスニング成功できず。


 何となく、「こっちはどこどこの水辺に住んでいるなんかの一族だけどオメェ誰よ? あとお願いですから命だけは勘弁な!」的なことを言っているニュアンスは身振り手振りとさっきからペコリと下がっている頭で分かるんだが・・・。


「コトバ、 ムリ、 ワカラナイ、 ユックリ、 ・・・えーと、 ユックリ、 クチ、 ウゴク」


 拙いながらに喋る速度を落とすように要求。


 すると何故か早口がより加速してもっと聞き取りずらくなった。なんでさ!


 しょうがない、もう少し口内の妖精君から知識を絞らせてもらうとするか。

 なにもう結構慣れたもんよ痛くはないし傷もつけねぇぜゲヘヘへ・・・。あっ。


 ―――不運にもこのタイミングでシム(スライム)内の妖精君がグッモーニンッ!


 流れるようにパニック状態に陥って暴れだした妖精君にシム(ダイダラボッチ)は思わず顔をしかめる。


 意識アリでシムを拒絶している状態では繊細な取り扱いは難しいのだ。強行突破? しかしここで強引に行って妖精少年を乗っ取る(コロコロする)と掌の妖精達と角が立つ・・・。

 少し考え、青年妖精に助けてもらえないか考えたシム。


 危害は加えないから少し身体を貸してくれないかという旨を話す。ついでに妖精君は大丈夫だ、問題ないとも伝える。


 すると今度は意外なほど交渉が上手くいった。

 青年の代わりに最初に起きた少女が身体を貸してくれる段取りに。


 シムは彼女が最初大分暴れていたので心配したものの、時間を経て落ち着いてくれたのか、少女が緊張を隠せずとも大人しくしているのでありがたく身体を貸してもらうことにした。


「アナタ、 ハイル、 ココ」


 協力を得られたので指でつまむ必要もないし彼女もそっちの方がいいだろうと思い、自分で飛んで来てもらうことにする。


 入りやすいよう、なるべく大きめに口を作ると、てのひらから飛び上がってきた少女が入るのを見計らい、一呑みにした。






次回は妖精視点ですかね(´∀`)


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