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紫霧転生 ――その身体は霧――  作者: ビーバーの尻尾
 第二章 梟敵の巣窟 研鑽する獣心編
16/40

第16話 そりゃないよって言いたい・・・ ――窮鼠 VS 窮猫――

 


 そこは阿鼻叫喚の地獄と化していた。

 主に、パンダにとっての。


 ズドンッッ!!


「た、たんmゲポォゥッ!!」


 ズガンッッ!!


「ネ、ネージュ、ネージュぎぶあっガポポポポポ!?」


 ――ズゴッッッッ!!!


 あ、やばい・・・こ・・れ・・・クリーン・・・ヒ・・ッ・・トォ――


 ガン!


 ゴン!


 ドッ!


 ズチャアアアア!!!


 この白い箱の空間、その壁に斜めにぶつかって(ガン!)角度を変えて隣の面の壁に更にぶつかり、(ゴン!)最後に地面にワンバウンド(ドッ!)してから顔面で床を掃除するように地面に投げ出されるパンダ(ズチャアアアア!!!)。最後の音がやけに湿っぽいのは全身ずぶ濡れだからだ。

 ボロボロでビチョビチョ、まさに濡れ雑巾状態である。


 しかし、残念ながら今の僕にはこの謎空間の地面との新しい出会いを祝し、親睦を深める時間がない。

 人間ならば一撃だけでも即死であろう衝撃三回、プラスでどう見ても首の骨が逝ってしまう角度でゴミのように地面に突っ伏したパンダは次の瞬間、目にも留まらない速度で起き上がって走り出すと同時にまた横合いから吹っ飛ばされる。


『アハハハハハハハハ!!!シムッ!どうしたんだい!?手も足も出てないよーー??』


 またもや壁際まで飛ばされ、今度は壁に対して垂直に叩きつけらたパンダに対してネージュが笑う。

 完全にハイになってらっしゃる。

 今まではあんなに可愛かった笑みに今は恐怖しか感じられない。


「ぶはっ!ゲホゲホ・・・。あは、あははは・・・ネージュは強いなぁ。僕じゃ敵わないよ。ギブアップしていい?」


 僕の顔は引きつり、今の表情は心底疲れた苦笑いといったところだろうか。

 地べたに這い蹲るパンダにルンルン気分な足取りで近づいてくるネージュ。

 少し濡れたワンピースと白銀の髪、薄らと透ける服に水の滴る毛先、淡いエロスがなんともいえない。

 僕に向けるその笑顔は、大好きなスイーツを食べた時の少女のように純粋なもの。


『ダーーメッ!』


 そしてその純粋な表情から下されるは無慈悲の鉄槌、いや水槌。


 パンダはまた宙を舞った。



 ★★★



 勝負が始まった瞬間、即行で僕が攻撃したらその攻撃ごと唐突に現れた濁流に全身パンダを持ってかれて凄まじい勢いで後方の壁に叩きつけられたでござる。


 あれよあれよという間に2発め3発目、4、5、6789――

 それ以降、パンダに反撃を許さないワンサイドゲームが展開されている。


 最初の方こそ「なにそれ!?聞いてないよそんなの!!」とか「ネージュ!隠してたな!!」とか「へえ、なかなかやるじゃん!」とか、リアクションとろうとしていた僕だが、「なにs――」ザパァァアン!「ネー――」ドパァァアン!「h――」ズッパァァアアン!!となり、ネージュの攻撃に全然遊びがないことが分かってからはもう避けることに必死だった。


 身体パンダが頑丈だから今だ一回も致命傷はおろか骨折さえしていないが、お手玉のようにポイポイと弄ばれてしまう。

 なんとか反撃しようにも隙がない、後半はギブアップを呼びかけてみたが先程のようにすげなく断られるばかり。


 今の彼女はいかにパンダに水分補給をさせればいいか、その一点だけに全力をかけていらっしゃる。

 いや、もう十分です、もう無理ですと言ってもひたすらに水、水、水。


 その所業、まさに鬼畜。

 動物愛護団体に正面からケンカ売っている。

 まさか、まさか、・・・まさかネージュがあんなにドSだったとは・・・。

 いや別にドSじゃないかもしれないけど、なんかこう、子供が笑ってアリンコを踏みつぶすような残酷さというか・・・。


 光り輝く大河の如き水流がまたパンダを吹き飛ばす。



 ★★★



 数時間後、そこにはまだ宙を舞うパンダがいた。

 その姿にもはや力はない。


 今まで吹き飛ばされ続けたパンダはもうしばらくピクリとも動いてない。

 ただただ無抵抗に飛ばされるだけだ。

 吹き飛ばされ続けて僕の心が折れてしまったのだ。


 ・・・まあ、もう別にいいか。と、思ってしまったのである。


 地面に打ち捨てられたパンダに向かって正面からノシノシと近づいてくるネージュを、うつ伏せに倒れたまま顔だけ上げて眺めつつ、僕は観念しきっていた。


 僕はいたってノーマルなのでドSの人のことは分からないが、これくらいなら気が済むまでやらせてあげようと思ったのだ。


 確かに身体は吹っ飛ばされてやられたい放題だが、これぐらいではパンダに明確なダメージを与えることはできない。

 水の中で溺れるような感覚も最初は怖かったけど、もう慣れた。

 そもそも僕もこの身体パンダも呼吸しなくても死なないし、身体パンダは死んでも再生するし。

 どうせしばらくしたらネージュも満足するだろうし、好きにするがいい。


 これからまだしばらくどつきまわされるのだろうが、僕が不埒なことを考えていた罰と思えばちょうどいい。

 あーあ、魔法も意外と凄いじゃないか。いや、ネージュが隠してたのか。

 これ終わったら今度こそ詳しく聞こう。


『・・・シム、諦めたのかい?』


 いつの間にかネージュが横たわる僕のすぐ前にいた。

 どうやら満足したらしい、声が落ち着いている。やれやれ、やっと終わりか。

 力なく答える。


「・・・ああ、気が済んだ? 終わり?」


 やっと開放されるね!


『うん、結構楽しかったけど・・・シムが思った以上にヘナチョコで飽きちゃったよ』


 まあそうだね、正直あんなふうに攻撃されると手も足も出ないね。

 こっちもダメージはないけども、結局一回も攻撃は通らなかった。


『シムは自信があったっぽいけど、完全にやられっぱなしだったね』


 まあね。


『あーあ、ホントに弱かったな。シムって実は雑魚の分類だったのか』


 ・・・。


『こんなんだから、その大熊にも一カ月の間も手こずったんじゃないかい?私だったら一瞬で倒せるね、この程度』


 ・・・・・・。


『えーと、そういえばシムの性別って一応男の子なんだっけ?そんなに弱々しいとカッコ悪いよ?ちょっと失望しちゃったかも』


 ・・・・・・・・・。


『まあでも安心してくれていいよ。私は別に君が弱っちくて、根性なしで、カッコ悪くても、全然気にしないからね』


 軽い微笑み。



 ・・・・・・・・・・・・いいでしょう。


 僕を見下して心底がっかりしたような口調で僕を蔑み、嘲り、気にしないといいながら明らかに此方を小馬鹿にしているネージュ。

 わかっている、見え透いた挑発だ。


 しかし、ここまでボロクソに言われておとなしく引き下がるのも癪に障る。

 いいでしょう、お望み通りぶちのめしてやりますよ。

 こっちが下手に出れば調子に乗りやがって。

 見た目が女の子?関係ないね。殺す気でかかれと向こうも言ってたじゃないか。


 パンダの前にいるネージュが大きなため息をつくとともに僕に言う。


『じゃ、可哀そうだからそろそろ終わりに――』


「ネージュ」


 自分で思っていたよりも低い、唸るような声をかける僕。


『――んふふ。なんだい?』


 コロコロと笑うように、鈴の音色で答えるネージュ。

 思いどうり、とでもいうように微笑む。しかし構うものか。


「死ね」


 その綺麗な顔めがけて、完全にうつ伏せになっている状態から一動作で蹴りを叩き込んだ。


 バキィッ!!と硬質な音を立ててやや斜め下方向に吹っ飛ぶネージュ。


 馬鹿が、パンダ相手に近づき過ぎだ。

 パンダは蹴った勢いとその反動を使って一瞬宙に浮いた身体を滑らかに着地させ、立ち上がる。


 同時、盛大に地面に体を擦り付けながら飛ばされたネージュも遠くで起き上がるのが見えた。

 どうやら大して効いてないよう、丈夫な奴だ。

 まあ僕もこれぐらいで済ませる気もないので問題ない。

 絶対に僕をあそこまで馬鹿にしたことを後悔させてやろう。


 パンダは自分の右腕を左手でゆっくりと掴み・・・。



 ★★★



 ――なっ!?


 私の足元で這いつくばっていたシムの身体、大熊の足がもの凄い勢いで私の目の前に迫っていた。

 危機感に自分の感覚が何倍にも引き伸ばされていくのがわかる。

 蹴り、だと!?どう考えても関節的に無理だろう!


 いきなり起き上がって攻撃してくる、くらいは予想していたがまさか寝そべったままいきなり!?


 とっさに魔力で防御するが、重い、受けきれない。


『ガハッッ!!』


 顔に強い衝撃を受け、蹴り飛ばされる。

 まるでボールのように飛ばされた私は何回か地面を弾み、転がり、ようやく止まった。

 寝そべったまま身体に《回復ヒール》をかける。


 身体に残る痛みの残滓に顔をしかめながら立ち上がる私。


『・・・アハ、なかなかやるじゃないか、シム。今のは効いたよ』


 本当に効いた。まだ鼻のあたりがジンジンするようだ。


「そういいながら血の一滴も流していないとは、さすがだね」


 それは《回復ヒール》を使ったからだけど、わざわざ言う必要もないか。


 それにしても一撃もらってしまったのは不覚だった。

 向こうは近距離攻撃が得意だったのだ。


 事前に話を聞いていてそれを知っていたからこそひたすら遠距離攻撃に徹していたというのに、少し油断してしまった。

 まさかあの体勢からあんな攻撃を繰り出してくるとは。


 まだ距離が開いているが、シムが霧で攻撃をしてきた。


 バキ、バキンッ!


 シムが使う霧の爪みたいな攻撃を、魔力を纏った手で払って粉砕する。

 彼が使う遠距離攻撃はこれだけで、これでは私には届かないし、たとえ届いても大してダメージは通らない。

 次は油断しないように近づかなければいい、そして再び遠距離に徹すれば私に負けはない。


『ふ、ふふん!確かに一撃もらってしまったが、もうくらわないぞ!』


 そうだ。もう私が不覚を取ることはない!


「やはり、霧爪じゃダメ・・・やるしかないか」


 シムは何事か呟いているが、よく聞こえない。徐々に身体に力を入れているように見える。

 そういえばさっきから左手で右腕を掴んでるけど、どうし――


「ふんっ!」


 ブチブチブチッ!


『え』


「――ぁあがぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


『え、ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!??』


 なんと、シムは自分で自分の右腕を二の腕から千切り取った。


『ななななっ!?な、何をして!?』


「ううう、ふうぅうううう・・・」


 シムの腕の傷口から赤に紫が混じった血が滴るのが見える。というか、ドバドバ出ている。

 血を見ること自体は慣れているが、自分で自分の身体を傷つけて大量の血を流すなんて所業、初めて見た。

 あまりの異常な光景に戦慄してしまう。


 何がしたいのかわからず、混乱する私。

 自傷行為?何故いきなり?

 ポカンとシムを見続ける。

 今だ流れる血。


 片腕が無くなるなんてとんでもない重傷だ。

 しかしシムは乗り移った生物の身体を修復できる。

 何しろ毛皮から全身を再生したのだ、あれぐらいならすぐに直る・・は・・・ず・・・?


 確かに直っていた。

 白い地面に零れた血も巻き戻しのようにシムの傷口に吸い上げられ、傷口ももうない。

 しかし右腕が身体にくっついていない、繋がっていない。


 身体のほうの断面はまるで腕を切り落としてから傷を治癒したかのように先端が少し丸まった状態で直り、右腕のほうも同じように傷口が丸まってもともとそうだったかのようになっている。まるで人形の腕のパーツのように・・・。


「・・・これ、で。やっと、届くぅウウウ!!」


 シムが振りかぶったかと思うと左手で右腕をこっちに向かってぶん投げてきた!?


『ちょっ!?そ、そこまでするぅぅぅぅっ!?』


 とんでもない速度だ。当たったら先程蹴飛ばされた時以上の衝撃をくらうのは間違いない。

 しかし今回はある程度距離が離れているおかげでギリギリ避けられるっ!


 すぐ近くを掠めてくシムの右腕。避けざまにもう一度《白水ノ凶砲タイダル・カノン》を放つ。


「がふぅううううう!」


 吹っ飛ぶシム。スピードはそれほどでもないかもしれないけど、何しろ範囲が広い。

 点ではなく面の攻撃。引っかかっただけで大熊も軽々と吹き飛ばす荒れ狂う川の激流だ。

 それに片腕失っているのだ、身体もうまく動かせないと見た。


 地面に落ちたシムに続けて攻撃しようとしたら、シムが口で左腕の、右腕と同じく二の腕辺りを咥えている姿が目に映る。

 思わず攻撃の手が止まる。ま、まさか・・・。


「――ぅうううううううう、ングッ!!」


 ブチブチブチッ!


 千切れる左腕。

 自分の左腕を咥えて器用に立ち上がるシム。もはやその眼は狂気に染まっていた。


『うわあぁ・・・そ、そんなにしなくてもいいんじゃ・・・』


「ぁあああ、うガアアアアアアアアアア!!」


 シムが左腕を蹴り飛ばした。

 まだ再生していないうちに蹴り飛ばされた左腕は空中に赤紫の軌跡を描きながらビックリするほどの精度で私に向かってくる。


『う、うわぁっ!?』


 しかしこれもギリギリで避けた。

 慌ててしゃがみこんだ私の頭上を回転しながら飛んでいく左腕。赤紫の血が私の顔に僅かに付着する。

 ふ、ふう、危なかった。蹴ってあの精度か、しかもちょっと右腕より速かった。

 

 しかしもうこれでシムの手は、文字通り尽きたはずだ。

 再生も体力使うと言っていたし、実際見たところ新しく生えてきてないし。


 さすがに足や頭を千切って投げるわけにもいくまい。

 此方から攻撃し放題である。

 

 しかし、私はもう戦う気がしなかった。というより、戦いたくない。

 シムが落ち着くまで待って、そしたら謝ろう。

 保険がかけてあるとはいえ、やりすぎると後々面倒だ。

 ・・・それにまさかここまで怒るとは思わなかった。ちょっと怖い。


『よ、よくやったじゃないか、シム。最後のはなかなか驚いたよ。まあ私には敵わないとしても他じゃいいせn――』


 ガシッ


『ん?』


 足に軽い衝撃を感じて下を向くと・・・




 血まみれの左腕が私の片足を掴んでいた。




『~~~ッッ!?!?』


 背筋が粟立つ。

 おぞましい光景に思わず上がる声にならない悲鳴。

 反射的にもう片方の足を魔力で強化し、蹴り飛ばそうと後ろに振り上げた瞬間。


 ガシィ!


 何かが後ろから、振り上げた足に勢いよくぶつかって私を前のめりに地面に押し倒す。


 もはや見るまでもない、簡単に予測できてしまう。

 しかし恐怖心故、見ないままでも耐えられない。

 恐る恐る倒れたまま足元を見ると・・・。


 案の定、もう片方の足に今度は右腕が掴まっていた。


『う、うわあああああああああああ!?』


 足をバタつかせても離れない。

 両手で押してもビクともしない。

 まるで獲物を掴んで離さない、死に際の動物のごとき執念でギチギチと華奢な少女の両足を締め付けるシムの両腕。


 魔法を使えば離せるかもしれないのに、ネージュは混乱して魔法を使うところまで頭が回らなかった。

 ネージュの意識は完全に、己が足を掴むシムの手によって囚われていたのだ。


 しかし次の瞬間、親に駄々をこねる子供のごとく足に纏わりつく両腕の恐怖は、より強い恐怖によって無理やりネージュの意識から外される。


 そう、


「ネ゛ェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエジュウ゛ゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!」


 地獄から響くの怨嗟えんさの声のような、生きとし生けるもの全てを呪う亡者もうじゃの嘆きのような、絶望と恨みと憎しみがごちゃ混ぜになって実体を持ち襲ってきたと錯覚するような恐ろしい声を轟かせながら自分に迫る本体シムによって。


『い、いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』


 とうとう外見の歳相応の少女のような悲鳴を上げてしまうネージュ。もう半泣きである。


 ちょっと前のシムのように前のめりに地面に這いつくばっていた体勢から体を起こし、必死に地面を手で押して少しでも恐怖から遠ざかろうとするネージュ。


 その姿は『白の竜の系譜に~(ドヤァ)』とか言っていた時からは想像もつかないほど不様かつ哀れ。

 どう見ても高き空における絶対強者、誇り高き竜の一員とは思えないだろう。


 しかし誰が彼女を責められようか。

 両腕が千切れて無い、上半身達磨のパンダが口の周りを血に染めたまま、獰猛な表情で狂気を振りまき自分の名前を絶叫しながら二本足で爆走してくるのだ。

 しかも自分の足はその相手の千切れた手でガッチリ拘束されている。

 これは怖い、怖すぎる。


 既にギャン泣きの少女に容赦なく迫るシム。

 その瞳は興奮と怒りで爛々と輝き、その中に僅かな嗜虐心が顔を覗かせている。


 魔法を行使する際に飛び散った水に濡れたワンピースと白銀の髪、恐怖で青ざめた白すぎる肌、潤んだ白金の瞳、そのどれもがシムの中の嗜虐心を呼び起こしているのだ。

 涎まで垂らしながら獲物ネージュに迫る様はまさしく獣。


 誰が見ても一瞬でネージュが被害者で、魔物シムが加害者だと断定するだろう。

 たとえ今まで数時間にわたりボコボコにされてきたのがシムの方だと言っても誰も信じまい。


 泣き叫んで命乞いする少女にいよいよ迫る恐怖シム。惨劇が幕を開けるまで既にあと数瞬。


 ・・・しかし、窮鼠猫を噛むという。

 ましてや相手は本来シムよりも格上の竜。


 最後の最後、追い詰められたネージュがどうするかは明白だった。


 ――ピカッ


「・・・え」


 精神的限界を迎えてしまったネージュは本能的に竜の姿に戻ると、




『ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』




 思いっきり咆哮した。


 白い空間に轟音が轟く中、ゆっくりと崩れ落ちるシム。「ひどいや・・・、使わないって言ったじゃん・・・」という悲しい声も小さく響いたが、轟音に掻き消されてネージュには聞こえなかった。


 聞こえなかったことにした。





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