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紫霧転生 ――その身体は霧――  作者: ビーバーの尻尾
 第一章 氷獄沼 蠢く大気編
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第1話 目覚め ――無力な気体 VS 異世界の夜霧――

真剣バトルは――カエル VS パンダ――からですかね


 

 気がつくとは漂っていた。暗闇の中をゆっくりと漂い、軽い飢餓感に襲われつつ何かを求めるように暗闇の中を移動していく。

 

 意識はあるのだが寝ぼけている時のようにはっきりしない。何だこれ?夢を見ているのか?


 まあ夢なら何でもいいや、このままボーっとしていよう。

 

 僕はしばらく暗闇の中をあてもなく漂っていた。すると近くに何かが居るような気配を感じた。

 なんとなしに近くに行ってみる。


 歩いている感覚がないが夢ならそんなものだろう。進んでいると、だんだんと気配がする方から喧騒のような音が聞こえてくる。

 

 さらに進むと、聞こえていた喧噪がだんだんとはっきりしてきた。

 どうも猛獣が争っているようだ。


 ギャースギャースとか、グルロアアァァみたいな爆音が聞こえてきている。

 

 正直、マズイかな、近寄らない方がいいかな、とか思ったけどまあ夢なら何でもいいか。

 

 

 

  ★★★

 

 


 ワニがカラスを食べようと口を開けて噛み付く。

 口の中にはズラリと並んだ鋭い歯・・・とゆうか牙。


 カラスは翼を広げて飛ぼうとするが片方の翼が中ほどから引き裂かれているようだ。

 必死にワニの牙から逃れようと嘴で突いたり、爪で引っ掻いたりして暴れている。まだ必死の抵抗でパックリいかれてないが、時間の問題だろう。

 

 僕は少し前から夢らしく空中から見下ろす視点で上空三メートルくらいからその成り行きを見ていた。と、やがて業を煮やしたのかワニが苛立たしそうに唸り声をあげるとその前足をカラスに叩きつけた。


 そしてその前足の鋭い爪に引き裂かれて息も絶え絶えになっている獲物を満足そうに血塗れの前足で引き寄せると、胴身体をガブリ。そして足から味わうように少しづつ、ゆっくりと食事を始めた。

 

 哀れカラスは断末魔の鳴き声を上げ、力なくダラリとワニの口からぶら下がった。光景をみて弱肉強食という自然の掟を感じつつフワフワと両者のいる場所へ近づいていく僕。


 夢らしく、動物たちには僕のことが見えないようだ。すぐ近く、というかもう目と鼻の先にいるのに何の反応もない。あっても食べられそうなだけだから困るけど。

 

 ふと、おかしなことに気づいた。

 

 いや自分が変な場所でフワフワ浮いていることだけでも十分におかしいな夢なのだが、この生き物たちについて奇妙なことに気づいた。

 

 遠くからではなぜか妙に視界が霞んでわからなかったが・・・動物たちの身体が大きいのだ。端的に言うとデカい。


 とゆうかこいつらホントデカい!?

 

 こいつらデカすぎだろう!!

 

 カラスの片翼の大きさがぱっと見て、僕の見知っているゴミ捨て場ガラスに比べて十倍以上はありそうだ。仕留められて、ぼろ雑巾のようになってもまだでかい。

 

 現在進行形で食べられているので少し分かりづらいが足の爪から頭まで成人男性よりちょっと低いぐらい(170cmくらいだろうか?)の身長はありそうだ。現在進行形で足元から身長が減っているが。

 

 まだ食べられていない、片翼二m以上の長さの翼は絶対ノーマルサイズではない。

 

 あとワニ・・・・、これはワニって言っていいのか・・・。ムシャムシャとカラスを食べる口から覗く歯(牙?)は一本一本が大型のアーミーナイフのような大きさを持ち、鋭そうにギラついている。

 

 眼は皿のような大きさで金色の瞳がその中で爛々と鋭い輝きを放っている。頭の部分だけでも縦に二m、口を目一杯開いている今の状態では三m近い。横幅も三mぐらいはありそうだ。

 

 他にも挙げると、ワニの鱗がなんか青い(というか真っ青)なのはまだいい方で、カラスの足が四本あるとかワニの手足が見える限りで六本あるとかカラスの眼が三つあったとか・・・(過去形)。

 

 あとワニの胴体が地面から生えていて、たった今カラスを食い終わったヤツが穴に隠れるチンアナゴの様に、その胴体が生えていた場所にズブズブと沈んでいったこととかが挙げられる。そして穴はだんだんと埋まっていく。

 

 本当に変な夢だと思ったが、やはり夢ならどうでもいいやと思うのでまだボ~っとしていると、赤い色で彩られた凄惨な殺人現場みたいな風景になっているカラスの死に場所に何かがあるのに気づいた。


 よくよく見てみると、カラスが食い殺された所ジャストに薄く輝くモノを発見する。

 丸くて小さな靄(もや

)の塊、輝く球状の気体。なんだこれ。

 

 その光の塊はゆっくりと僕の方へ漂ってきて(僕はそれをぼんやりと見ていた。)、僕の真ん前まできて・・、僕とぶつかって、・・そして・・・

 

「・・ッ!?」

 

 反射的にそれを身体から引き離した。光の塊は僕の目の前(上空三m程)でふよふよと漂っている。

 

 近くでみると和やかで柔らかな光を発していてとても綺麗である。和むわ~・・いや、そうじゃなく。僕は今起きたこと、もとい起きそうになったことを頭の中で整理する・・・。

 この目の前でふよふよ浮いている靄ボールが……僕の身体に入りそうになった?何だ今の感触は。

 

 驚いたからか、寝ぼけていた意識が徐々に覚醒していく。

 そして最初に気づいたこと。


 僕は全身を失っていた。

 



  ★★★

 



 意識がハッキリと覚醒してからまず自分の身体がない、というか見えないことに気付いた。その次に自分が空中に浮いていることに気づいた。地面に足が(足もないのだが)着いていないのだ。


 辺りを素早く伺う。

 

 周りは暗くて濃い霧がかかっている状態。霧が濃すぎて十メートル先も見えない。あたりは何もなく、むき出しの地面は平坦で草木は一本もない。

 

 見渡す限り(といってもたいして見えないが)そんな光景が続いている。そしてそんな場所で空中に僕。

 

 と言っても、空を飛んでいるというような感じではない。


 なんというか、幽霊?みたいにふわふわ浮いている。幽体離脱というような感じだろうか。


 更に身体がないと言ったが具体的に言うと普通の身体がない、ということだ。


 血と肉でできた身体がない。

 その代りになんというか気体……もや?みたいな?感じのが…?


 この時点ですでに物事が理解の範疇を超越した。

 

 意味がわからない。

 

 ・・・、


 ・・・・・・、


 ・・・・・・・・・。

 

 数分後に再起動。

 初めは、唖然としたまま頭の中で漠然と変な夢だな〜と思っていた。こんな夢は始めてだなーと思いながら、夢の中をフラフラしていただけだった。

 

 でも・・・これは夢にしてはなんか違う、意識がはっきりしすぎている。

 

 とりあえず、現状を確認した方がいいだろう。現状認識だ。とりあえず自分の幽霊じみた身体を見回してみる。

 

 

 

 自分の身体をじっくりと見た結果、確かに幽霊とも似ているが相違点がいくつかあることに気づいた。

 

 僕の中の一般的な幽霊は白くて、透けていて、足がモヤモヤ、ぼんやり光る人型発光体である。

 それに対して僕は薄く紫で、ぼんやり透けていて、足どころか全身モヤモヤ、全然光らない人型の気体・・・・・・霧みたいなものである。


 ついでに言うと光る靄ボールを先程引き離したのも輪郭のはっきりしない僕の手だ。

 現在進行形で靄の塊を握っている。あと今更だけどあたりは暗いはずなのに何故か見える。一寸先は闇状態と認識しているのに見える。何故だ。


 しかし今はわかりようがなさそうなので置いておく。

 

 そんなもの(自分)が空中浮遊をしている。フワフワと。イメージとしてはまんま紫色の霧の塊(人型)が三メートル程上空に浮かんでいる感じ。

 そしてその隣に浮かんでいる光る靄の塊。


 ・・・やはり意味がわからない。

 

 何が起こっているんだ?

 

 夢にしてはリアルすぎる。意識がハッキリしすぎている。

 

 でも状況は非現実的すぎる。なんで身体が気体になってるんだふざけんな。

 

 何なんだ…

 

 何なんだよこれ。

 

 何が起ったんだよ!

 

 おもわず頭を抱える僕(霧)。はたから見たらシュールだったかもしれない。ここで、致命的なミスをしてしまった。

 

 

 スルッ・・・

 

 

 頭を抱えてしまった。

 つまり、光の塊から手を離してしまった。

 

 光の塊は手(手なのか?)で掴んでからもずっと僕に引き寄せられるようにくっついて来ようとする。おもわず手を離したことで押さえつけるものがなくなり、


 僕の中に・・・入った!?

 

 どういうことだきもいマジでなんだこれは何故身体にいやそれよりも早く取り出す事が先決・・・ッ!

 

 慌てて手で光の塊を引き離そうとしたけど、なくなっていた。

 

 感覚的に身体の中に入りきってしまったのだなと納得・・・。


 ――出来るわけないだろっ!?

 

 その瞬間に何かが自分の頭の中に流れ込んでくる。


 これは・・・―――記憶!?





 混乱の中、頭の中に流れ込んできた記憶が段々と鮮明化する。


 それは空を飛んでいた記憶だったり、獲物を見つけてそれを食らう記憶だったり、仲間と共に遊んだ記憶だったり、この辺りを冒険した記憶だったり、そして沼に近づき・・・


 傷つけられ殺されて食われた恐怖 痛み 苦しみ 嘆き 後悔 怨み 悲しみ 恐怖 恐怖 恐怖 恐怖恐怖恐怖痛み痛み痛み痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイいたいいたいいたいいたいいたい、痛い!!!!!!!!!!

 

 振り下ろされる爪、切り裂かれる自分の身体。逃げようとする、片方の翼が動かない。怪物が口が大きく広げて噛みついてくる。恐怖しながらも必死にその牙を避け続ける。相手を思いっきり嘴でつつき、爪で引っ掻く、全力で相手の噛みつきを避ける、避け続ける。

 生き延びようとする。

 

 身体がまた切り裂かれる、今度は全身が動かなくなった。翼が切り裂かれた時よりもひどい痛み、全身が悲鳴を上げているようだ。食われる。


  激痛、段々と端から食べられている。一口でも食べられるのだろうに怪物はそうしない、いちいち味わうように咀嚼してゆく。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイ、イタ、イ、イタ・・・・・・。

 

 自分の身体が切り裂かれて食べられる記憶を最後に記憶の流れが止まった。

 

 最後の記憶がやたらと鮮明に思い出され、本気で怖かったので悲鳴を上げ・・・たはずなのに音がしない。しばらく悲鳴を上げ続けて、ふとその違和感に気づいた僕は悲鳴を中断。

 

 違和感の正体を探るべく気を落ち着けようと、深呼吸をしようとして自分の身体がなかったことを思い出した。


 おそらく間抜け面をさらしていたことだろう、顔ないけども。




 ★★★

 



 一時間後(体感)ようやくパニック寸前だった頭の中を整理して心を落ち着けることができた。パニック寸前までいったがパニックにはならなかったな!


 自分を褒めてやりたい。

 カラスの記憶が流れ込んだ時には多少ビックリしたが。まあ、ギリギリセーフっしょ、すぐに冷静になって状況を分析できたし?

 

 たとえ身体が気体になって、上空三メートルに宙ぶらりんで、自分が食べられた記憶が頭の中に入ってきても冷静でいられたオレ、Tueeeeee! あははははは!! ははは・・・は・・・はは・・・・・・。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 ・・・・・ッ、ダメだ。現実逃避している場合じゃない。

 パニックになるな。

 いやパニックになるのは仕方がない、せめてそれを自覚して、状況を整理しなくては。


 まず、なんでこんな所(闇の中、周囲はささくれた地面しか見えない平原?)にいるのかを考えよう。


 僕は気がついたら闇の中を漂っていた。それ以前、つまりこの場所に来る前の記憶を思い出そう。

 そう、確かここにくる前僕は・・・・・・、えっと、・・・・・・・・・え~と・・・・・・・・・・・・なにしてたっけ?

 



 ・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・わからなかった。





  「(チクショウ、いったい、何なんだッ!)」


 思わず口をついた悪態も、音になることはない。




 ★★★




 僕は、確かに人間のはずだ。

 しかし、今は生物かさえも疑わしい。

 身体が気体で構成されるなぞ、そんな事があり得るのか。



 顔を覆う両手、気体ゆえに透ける向こう側。

 その向こう側には見通せない闇が朧げに―――紫色に、霞んで見えた。















未熟ながらも書いたからには完結させるという覚悟、大事。(╹◡╹)

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