誰も知らない昔の話
遥か昔、人間や恐竜よりも前に地球上には生命体がいた。その生命体は二つの対立する種族に分けられていた。なぜ対立しているのかは、誰にも分からなかった。本能的にそう仕組まれていたとしか言えない。どちらかが絶滅するまで争うようになっていた。
一方は神と呼ばれ、想像により創造をする能力をもっていた。刀を想像すれば、それが出現し、楯を想像すれば、それが出現した。そして、もう一方は亜神と呼ばれた。亜神は、頑丈な肉体と戦闘能力、眷属を作り出す能力さらに一部は再生能力まで獲得していた。
長い間この二つの種族は、互いに小競り合いを続けていた。もはや小競り合いは日常の習慣と化していた。その習慣に変化が起こったのは、いつだったか、何故だったか、どこだったかは誰も覚えていない。ただ小さな出来事がどんどん拡大していき、ある時、大きな戦争が勃発した。大地を揺るがし、森林をなぎ倒し、至る所で爆音が聞こえる。そのような戦いが続き、神、亜新ともに数は減っていった。
この戦争が終わりを見せず、泥沼化していく頃、神と亜新のどちらをも驚愕させる事態が発生した。隕石の落下である。これによる衝撃や気候変動などは、地球上にいた多くの生命体に影響をもたらした。これにより、ただでさえ減少傾向にあった両種族は、さらに減少した。
ここに至って初めて、戦うことのみを生きる目的にしていた思考に変化が起こった。その変化とは、「どのようにして種を生き永らえさせる」かである。
神も亜神も、繁殖能力を有していなかった。大人や子供のような概念が存在せず、生まれた瞬間から、変わらない姿で生き続けていた。増えることはなかったが、寿命により死ぬということもなかった。それ故に、繁栄の方法について考えたこともなかった。
種の絶滅という危機に直面することで、神の能力を大きく飛躍させる者が現れ始めた。その者は自身の肉体と魂を分離させ、魂だけを別の生命体に移し替えた。最初は魂を移し替えても、肉体が変わっただけで意識を保てていた。しかし、やがて深い眠りへとつき、魂の移し替えをするのみとなった。
亜神には、神のような能力がないために、そのほとんどが死滅していた。残った数少ない者たちは、苦肉の策として自身の骨を地中深くに埋めた。いずれ安定した地球で埋めた骨から再生することを狙ったのである。
こうして、両種族の戦争は終わった。しかし、それは根本的な終結ではなく、地球は大きな爆弾を抱えたまま未来へ進むことになった。